(086)そうだいなともだち(壮大な友達)

 あるところに、おひめさまがいました。


 おひめさまは、もりへさんぽにでかけておりました。


 はじめてみるもりに、おひめさまはおおよろこびでした。


 しかし、あまりによろこびすぎたため、ひがくれるのをわすれておりました。


 おひめさまは、ひとりもりにとりのこされておりました。


 へいたいたちがひっしにさがしましたが、みつかりません。


 おひめさまは、さみしさのあまり、なみだをながしておりました。


     *


 あくるひのあさ。


 おひめさまのくにとはちがったくにの、おうじさまがとおりかかりました。


 おうじさまは、なみだをながしていたおひめさまのもとへかけよりました。


「どうされたのです?」

「みちに、まよってしまって……」

「とりのこされたのですか?」

「はい……」

「それはさびしかったでしょう。つらかったでしょう。

 ですが、もうあんしんです。ぼくたちが、もといたばしょへおかえししましょう」


 こうして、おひめさまはもといたおしろへもどることができたのでした。


     *


 それがきっかけだったのでしょう。


 おひめさまとおうじさまは、たびたび、あうことになりました。


 やがてふたりは、こいをしました。


 ふたりのくにもなかよしだったため、ふたりのこいは、みのりました。


 やがてふたりは、こどもたちをもうけました。


 そのこどもたちは、それぞれのくにのおうじさまやおひめさまにこいをし、そしてむすばれました。


 こうしてせかいは、ともだちになったのでした。


     ***


 所変わって、ある国の王城。


「まさか、今日も続いている平和は、僕達のひいお爺様とひいお婆様の恋が始まりだったなんてね」

「ええ、あなた」


 物語の「おうじさま」と「おひめさま」の子孫である王様と、その妻である女王様は、仲睦まじそうに微笑みあっていたのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

匿名短編コンテスト作品集 有原ハリアー @BlackKnight

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ