(084)朝焼けで

 その日も、いつものように早朝のランニングへと出かけたなあ。


 それで、いつもの河原沿いを走ってたの。


 すると、後ろから誰かが追い越す気配。


 それがあなたなんだけど、あたしを追い越して、振り向いた。


 白い歯を、にっと見せてね。


 残念ながらその時は、朝焼けで顔が見えなかったかな。


 あたしはね、思ったんだ。


「あ、これが一目惚れだ」ってね。


 それからね、あたしはあなたの顔を見たくて、ランニングしてたところがあるかな。


 けれど、なかなか現れてくれなくて。


 出る時間を早くしたり、遅くしたりもしてみたけど、やっぱりダメ。


 あなたと会えなかった時のあたしは、少しダウナーな気分で走ってたの。


 そしたら、派手にスッ転んで、膝すりむいちゃった。


 そこにあなたが、駆けつけてきてくれたの。


 そして、すりむいた傷を手当てしてくれた。


 そこであたしの心はノックアウト。


 自分でもわからない間に、あなたと結婚してた。




 ……え、あなたはあたしの擦り傷を手当てした時が、始めてだと思った、って?


 あはは! あたしの勝ちだ~。


 あたしが先に、あなたの事を意識してたんだからね~。


 ね、旦那様!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る