(083)騎士としての人生の始まり

 5歳の時に、私は変わった。


 当時の私は、夢も希望もある子供……そう言えば聞こえはいいが、実態はただ幼いだけの人間だった。


 そう、姫様のお姿を見るまでは。


 恥ずかしい話……一目惚れ、した。


 陳腐な比喩ではあるが、姫様は“太陽”であった。


 それは「輝いていた」意味であり、「遠い存在」という意味でもあった。


 けれど、だからこそ私は、手を伸ばしたくなった。


 あらゆる思考を、「姫様を振り向かせる手段」を探す事に費やした。


 もちろん頭だけではない。


 体も、徹底的に鍛え上げた。


 それはもう、周りから止められる程に。


 しかし、私は止まらなかった。


「例え今は及ばずとも、必ず貴女の眼前へ参ります」という意思をむき出しにして。


 挫折しそうな時はあったが、それでも、貴女の眩しい笑顔で立ち直った。


 いつか貴女の下でお仕えする為に。


 いつか貴女の笑顔を輝かせる為に。


 そう決意してから数日後、決定的な出来事は起こった。


 貴女は街で、狼藉者達に囲まれていた。


 その狼藉者達を私は、追い払った。


 今まで培った力を使って。


 この時、二度目の始まりを迎えた。




 ……そうでしょう、我が妻よ?

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