匿名短編コンテスト作品集

有原ハリアー

(082)始まりの出会い

 あれは忘れもしない、俺が6歳の頃の出来事だ。


 君は母親に連れられて、俺達の家の隣に引っ越してきた。


 あの時の君は恥ずかしがり屋だったな。


 それもそれで可愛かったけれど。


 俺達の姿を見るなり、顔を赤くして君のお母さんの後ろに隠れた。


 けれど、覚えてるよ。


 何度もちらちらと、俺を見てたこと。


 そして、びくびくしながら俺に話しかけてくれた。


 今思えば、その時から恋は始まってたんだね。


     *


 やがて、月日は流れた。


 今もそうだけど、君はずっと俺のそばにいてくれたね。


 だからかな、あの時の俺は気付かなかった。


 けれど、君が嫌がらせに遭っていた時。


 そして、それを助け出した時。


 俺は気づいたんだ。


 俺は君を好きだってことにね。


 それからは、いっそう一緒になる時間が増えたね。


 けれど、その幸せは長くは続かなかった。


     *


 小学六年になった頃。


 突然君は、帰る事になった。


 君は電話越しに、必死に訴えていたね。


 それでも、君の願いは通じなかった。


 結局、小学校卒業と同時にさようなら。


 俺は空港まで君を見送った。


 あの時は必死だったなあ。


 そして、また会う約束をしたね。


 けど、恥ずかしい話、会えるのはあの日で最後だと思ってた。


     *


 あれから三年経って、俺達は再会した。


 君は見違えるくらい、美人になってたなあ。


 君から見た俺は、どう映ってたんだろうね。


 それは今でも気になるよ。


 そして俺達は、失われた三年間を必死に埋め合わせるように、同じ時を過ごした。


 君のお父さんから反対されたけれど、それでも俺は戦い続け、許しを得た。


 だからこうして、今、君の夫として、君と一緒にいる。


 ありがとう。


 そしてこれから、ずっと、よろしくね。

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