友情でも世界が滅ぶ 2

 尊い犠牲に感謝。

「ま、あいつも神遺物持ちだから大丈夫だろ」

 あれに認められたっていうことは人間やめたのと同義だからな。

「つか、さらっと流してたけどあいつ携帯の逆探知とか言ってやがったな。いつの間に警察並みの技術手に入れやがったんだ。つうか違法なんじゃね?」

 怖いわ~、金持ちって怖いわ~。お金でできることは大概できるって豪語してただけはあるわ~。

「違法じゃない。限りなく法の穴をついた合法だ」

「うわっ!?びっくりした!?」

 いつの間に俺の部屋に……ヘリかなにかで来ると思ってたが……。

「とうとう湧いて出る能力まで獲得したってのかよ……」

 嫌われ昆虫一位のミスターGが使う能力を持っているってなっちゃあこれはいよいよ人間じゃねえな。

「人を夏場の虫みたいに言うものじゃないぞ。まあ確かに水を媒介とした移動術ではあるが」

「オーケー、どちらかと言えばボウフラってことだな?」

「ふんっ!!」

「おがっ!?」

 やろう……なんの躊躇いもなく蹴ってきやがった。俺を見たら蹴らなきゃいけない法律でもあるの?

「何しやがんだこら!!」

「今のでボウフラと言ったことと今まで顔を見せなかったことを許してやる」

 うーわー、やっぱずるいわこいつ。

「ちっ……そんな風に言われたら何も言えねえの分かってんだろうが」

「そうだろうさ。俺はお前のことをよく知っている、そう思っていたんだがな……」

 んん?なんだろう?あいつの手に水が集まってきてるような……。

「それは俺の勘違いだったかもしれん。お前は俺に何も言わずに姿をくらませたからな」

 水のサーベルとはまた。得意武器なんて取り出したいったいどうするおつもりですか。なんて言えねえよなあ。

「今まで何をしていた……返答次第では俺はお前に折檻しなければならない」

「折檻てお前……いつの時代の人だよ」

 喉元に当てられた切っ先には殺意なんて微塵も感じられない。なんなら自分で少しくらい刺してみようか。

「っ!?何をしている!!」

「いや、折檻て言うからどのくらい痛いのか体験してみようと思ってな」

 ははは、赤くなってら。

「おまえ……は……ほんとうに……!!」

「無駄だって分かってんだろ。お前は俺を刺したりなんてできない」

 俺もお前を攻撃するなんて考えたくもない。

「そういうところだ……バカなのに……途方もなくバカなのに……そういうところだけ鋭い……だから俺は……」

「もういいだろ……本題に入ろうぜ」

「しかし……お前のその有様はなんだ。お前の相棒はどこに置いてきたんだ」

 嫌なこと聞きやがるぜ、お前に分からなくできるほど俺が器用じゃないって知ってるはずなのによ。

「消えたよ。跡形もなくな」

「そうか……だからお前は……ん?待てよ。それじゃあ俺の攻撃はどうやって……」

「通りすがりのもみじがぶっ飛ばした、ついでに水蒸気であいつもぶっ飛んでいた」

「ああ、あいつはお前と同じくらいバカだからな。そうか、贈り物をした甲斐があったというものだ」

 んん?何か聞き捨てならないことが聞こえた気がするな?

「あのですね、ランスさん。つかぬことをお伺いしますが焔神かぐつちをもみじに送りつけたのはあなたですか?」

「なんだ敬語なんて気持ち悪い……そうだよ。出土したものを管理していたのだがもしやと思ってな。俺の攻撃を消せるくらいになったのなら十分使いこなしているじゃないか」

 ほっほーん、つまりはあれだ。この前の世界焼却の原因はこいつだ。

「てめえこらぁ!!余計なことしやがって!!お前のせいで世界滅びかけてんだぞ!!一回死んどけ!!」

 さっきこいつを攻撃するなんて考えたくもないと言ったな?あれは嘘だ。俺の全力の右ストレートでこいつを沈めてやらあ!!

「はあ?何を言っている。感謝されこそすれ恨まれる筋合いなどない。あいつが世界を焼けるような奴じゃないことぐらいお前も知ってるだろう」

「うるせえ!!焼かれそうになったこっちの身にもなりやがれ!!」

 知らねえから言えるんだそんなこと。

「……もしかしてお前が届けたのか?」

「おうよ、何の因果か知らねえが俺のバイトの届け先だったんだよ」

「それで……何か話したのか?」

「ああ?大したことは話してねえよ。一発蹴られてそっからすこし話したくらいで面倒な気配を感じてトンズラしたら大炎上待ったなしだよ」

「はぁ……」

 片手で目を押さえて天を仰ぎつつくっそ重いため息つきやがったこいつ。なんだお前すかしやがって身ぐるみ剥いで質屋にぶん投げんぞ。

「そんなことしたら大炎上もするだろうよ、お前が消えたときに一番血眼で探してたのあいつだからな」

「は?なんで?」

 俺は嫌われこそしても好かれることなんて一個もした覚えがないんだけど。

「なんでと来たか……つくづくお前は……いや、そういうお前だからか」

「何言ってんのこいつ……やだ、中二病?」

「ふんっ!!」

「ぎゃあっ!?」

 今度はボディブローかよ、ずいぶん容赦ねえなあ。

「教えてやろうかと思ったが止めた。自分でなんとかしろ」

「そう言うなよ~親友だろ~」

「やだね、こんな時だけ親友扱いする奴なんか俺は知らん」

「くそっ……日頃の行いが身にしみる」

 さてと、バカ話もこれくらいにして。

「頼みがある」

「なんだ、国家予算の半分までなら用立ててやろう」

 あら、急な借金で貸してくれる金額で信頼度が分かるっていうが。こいつの俺に対する信頼感国家レベルかよ。全く素直じゃないやつだ。

「ただし利息は1日10割だ」

「バカかお前!!闇金どころじゃねえぞ暴利にも程があるだろうが!!」

 ただの悪魔だった。

「ふん、金の無心なんかで俺に連絡してこないだろ。で、頼みって言うのはなんだ?」

「絶対王権エクスカリバーを盗むの手伝ってくんね?」

「は?」







 



 

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