異世界で育った未来の子スーパースーツで無双する

第30話 王様との謁見

　ダンが山を下っている頃、エルフの郷ではアニカが精霊術の修業に精を出していた。

「アニカよ。複数の仙人相手によく頑張ったのう。しかし、二人は大丈夫じゃが、四人五人と増えると慌てすぎじゃ。落ち着かんと押されて身動き取れずにやられてしまうぞ」

「はい。素早い詠唱がなかなか出来なくて・・・ダンのように無詠唱で出来ればもう少し落ち着けるのですが・・・時間を空けられるように対策したいと思います」

「セイメイよ。何か方法はないかのう。詠唱を省略する方法は」

『有ります。ですが精霊界に来て頂かないと体験出来ません。少なくとも二年は掛かるでしょう。その間は戦闘に参加は出来ません』

「しょうが無いじゃろう。こちらの守りはスザクとダンと妾も含めた四聖仙人で守る以外なさそうじゃ。セイメイも此処だけでも守ってくれたらこの世界の再生の時間が早くなる。兎に角ここ、エルフの郷。此処だけは何があっても守らねば。それと後は遺跡じゃな」

『此処よりもあの遺跡を守る方がある意味大事だと思います。この世界と、ダンが生まれた世界を繋いでいるユグドラシルから伸びた枝からの世界への扉だと言い伝えられており、あの遺跡が無くなるとダンが元の世界へ帰れなくなります』

「それよりユグドラシルへ進入を許したらどうなるのじゃ？」

『魔の物は入れないと、浄化されると聞いておりますが、それは中を通るときの話。外側を通って根元まで侵略されると、無垢な生まれたての生物、この場合は精霊も含まれますが、魔族の言いなりになってしまうでしょう。果ては別の世界へも侵略出来てしまうかも知れません』

「精霊とエルフの長老達が交代で眠りながらユグドラシルの番人を務めているのは侵略を防ぐ為であろう？」

『はい。ですが、彼らが戦えるとは思えません。スザクのような万能戦士がいれば別ですが、彼らは何千年もユグドラシルだけを守っており、他の世界のことは体験しておらず、知識だけを詰め込んで育ってきました。他に超能力的な何者かが居れば・・・』

「それは妾もそう思う。ユグドラシルを護る者。その者がただ弱い者とは考えられん。それ相応に腕の立つ奴が居なければ守れまい。或いは相当に能力の有る者で有ろう。それがどの程度なのか。見て見ないと判らんが」

『何れ逢うことになるでしょう。スザクとアニカ、ダンがあちらへ行くときに。出来ればビャッコも助けてあげて』

「あいわかった。まあアニカが育ってダンが魔族を殲滅するのが先であろう。それまでは修行に励んでおるよ。それでアニカじゃが・・」

『魔族との戦闘においてアニカは十分戦えるでしょう。しかしアニカには別の使命を与えようと思います。精霊の世界でこれまでの命の歴史を見て決めて貰いたいと思います』

「私はもはや精霊様とスザク叔父様、師匠方にお任せした身。修業に必要ならやってみたいと思います。それが世界の為になるなら」

「うむ、よう言った。セイメイよ、こっちの戦況は気にせんで良い。アニカを連れて精霊界へ行ってきてはくれんか。後のことは妾に任せておけば良い」

『ではビャッコ、そのようにお願いいたします。アニカ、食事が済んだら出発しますよ』

「はい。出発の準備をいたします」

　アニカは精霊界がどんな所かも解らないまま、しかし断るつもりなど最初から無かった。

「暫く会えないけど、頑張ってね。ダン、ライカ・・・」

　心の中でそう呟いた。

　精霊セイメイは何も言わず微笑んでいた。

　時間は少し遡り、ダンが龍の背骨で魔族と戦ってスーツを試していた頃、ルコイの村から一台の竜車が走り出していた。

　ガトーと愛龍ロン。後ろの客室にはマサと村長、それと精霊セイメイ。

　実体化して初めて人間の姿で現れた時は村長は腰を抜かして立てなかった。今日は三度目。村長はやっと慣れたのか腰を抜かすことは無かった。だが今回は代わりにガトーが気絶し、出発が一時間遅くなった。

　やっとのことで起き上がり、何とか挨拶を交わすまでに回復した。

　ちなみに村長は実態の無い精霊にはやっと話が出来るようになったが、人間の姿をしたセイメイには、未だに話がまともに出来ない。怖い先生の前に立つ小学一年生のようである。

「久々に王都に行きますが、セイメイ様は王様とは？」

「私もこの姿で逢うのは初めてですね」

「私と村長はもう何度か会ってますが。今回ガトーさんがこの話を持ち込まなかったら、東の防衛だけで後ろから攻められたかも判りませんし」

「そうですね。ですが海の向こうに手を回すとか、魔族も悪知恵が働きますね」

「海の向こうは大陸があると聞きましたが？」

「はい。まだ人が入っていない陸地が大森林に包まれています。今は精霊の国。大小さまざまな精霊の国が出来ています。精霊達は国の取り合いはいたしませんので争いは起きません」

「やっぱ争うのは人間、もしくは魔族か？争うことしか考えない奴はどうにかして懲らしめられないかね」

「何時の時代も人は争う生き物。争う者とそうではない者を分ける方法を人間が見つける以外無いでしょう」

「ガトーさんところや他の国が今回魔族の脅威さらされ、早いとこ恐怖を取ってやらないと。王様には南の報告をガトーさんがするとして、精霊様は王様に何をお話しするんです？」

「私はこの国の守備の仕方をマサに任せたいと思って居ます。ですからその話をしようと思っています」

「あそう・・・？・・ええええええええ！わっ私に？こここッ国防ですよ？」

　突然のセイメイの発言に驚く一同。特にマサは少しめまいを覚えるほどの衝撃を感じていた。

「魔族とのその手先も含めてですが、スザクと連絡が取れ、その方法も熟知しているマサなら勤まると思っています」

　御者台から手綱をボギーに譲り客室に移ってきたガトーはセイメイを見て背筋を伸ばし額に汗を滲ませながら、緊張した声で、それでもマサに対して、ややうわずった声で挙手しながらみんなの顔を見た。

「皆さん、私に一言言わせていただけませんか？」

「いいぜ。何でも言ってくれ」

「構いませんよ。緊張なさらずに。遠慮無く」

「私も構いませんよ。精霊様に失礼なことさえ無ければ」

「村長。そんなこと言ったら余計緊張するだろ。すいませんガトーさん。精霊様は滅多にこのお姿でお見えにならないので私も村長も慣れて無くて。特に村長は初対面から・・・」

「えっと初対面からなんです？」

「気絶するとこまではガトーさんと同じなんですが・・・」

「これマサ、しっ。黙って居れ」

「いやいや。だめですよこんな面白いこと。みんなで楽しまなきゃ」

「楽しいこと？人の恥ずかしい、黒歴史とも言える出来事を、面白い？」

「村長。私は若返ったので精霊様を嫁に貰うって、気絶して目が覚めた直後、寝ぼけながら言ったんだぜ。大きな声で」

「だから、それはそのー・・・」

　顔面を梅干しのごとく真っ赤にしながら、セイメイを直視できず俯いてしまった。

「良いのですよ。マッコイ。好意を寄せて貰ったり心配して頂くのは光栄の極み。結婚は出来ませんが嬉しく思います」

「ほれー！ちゃんと精霊様は受け止めてくださってるんだから。感謝しな！」

「いやいやいや。それは良いんだ。精霊様にも好みとお考えがおありのこと。問題はそこから先じゃよ・・・」

「へ？何問題？ええ？いい年こいて寝ぼけて告白してしまったことか？」

「またお前は直ぐそう言って茶化す」

「おもしれーじゃねーか。格も威厳もそっちのけで、順番すっ飛ばして、ねえガトーさん。どう思います？」

「どうと言われても・・まあ勇気があって良いんじゃ無いですか。お相手が精霊様で無ければ問題解決なんじゃ？」

「そうよ、そこなんだよ。若返った・・（しまった言っちゃいけなかった）かも知れない気持ちで、口説くのも悪くはないと俺も思うよ。お相手が精霊様で無ければ」

「私は精霊様には、ルコイの村に呼んで頂いたような気がするんです。お姿を拝見するのは初めてですが、最初に王都に向かうときに急に目の前がチカチカして、そんで力が抜け出して・・・」

「ミサが言ってた。大事なお客が家に来るからと、精霊様に聞いたって」

「ガトー。貴方の国の、身の回りで不思議なことは無かったですか？他の者がやってもだめなことが其方がやると旨くいったとか？」

「いっぱい有ります。海の魚が魔物で取れないときに、湾内で。それも私のところの網にだけ大量に入ったとか」

「それは貴方が南の微精霊達に気に入られたからです。子供の頃に微精霊を助けた記憶はありませんか？」

「ええっとーっ・・・何となくですが、坪朝顔（つぼあさがお）って言う、虫を臭いで誘って蓋をする、壺を持った花なんですが、子供の頃その中に蛍みたいな虫が捕まっているのが珍しくて、花を揺らしていると蓋が開いて中から光りが飛び出して・・・もしかしたらそれが微精霊？」

「おそらく。それから彼女らは貴方の行動を見ていたそうです。それで気に入ったので助けて矢って欲しいと。南の精霊達から連絡が来ました」

「それは！・・・いやー、ありがたいやら。そんなこととは夢にも思っていなかったです」

　セイメイの言葉に今までの自分の人生で、どれだけの偶然と奇跡が起きていたことか。不可思議きわまりないことも、自分におこるのが当たり前のように思って居た節があり、身震いするほど寒気が背中を駆け抜けたガトーだった。

「世の中沢山人間や獣人、生き物が居る中で精霊様に好かれるなんてそうは居ないと思うぜ」

「ルコイの村の人たちはもっと特殊ですね。村ごと精霊様と付き合っているんですから」

「そうなんだよな。家の息子が精霊様と縁会って、みんな纏めて精霊様に守って貰ってるんですよ」

「マサ。それは私たち精霊も神樹も同じです。あなたたちにすくわれているのです。お互い様ですとも」

「精霊様にそう言われっとこそばゆいやら、穴があったら入りたいです」

　照れながらマサは頭の後ろを手でぽんぽん叩いて誤魔化していた。

「私も「村長は何時も自分で掘った穴に落ちてるじゃねーか」です・・・へ？」

　村長の精霊への感謝をマサの言葉が横取りした。

「村長いじりもこのくらいで。もうすぐ王都に着きますよ」

　ちょっといじけ気味の村長マッコイを窘めること無く、一行は王都の門を潜った。

　朝早いことも有り人影も疎らであった。

「竜車はここに。手続きは無効の窓口が開いたらそこで済まして。終わったら此処でも一回確認するので持ってくるように」

　衛兵らしき甲冑を着込んだ兵隊に言われるがまま竜車から降りた一行。

「よう。訓練は進んでるかい？隊長さん」

「んん？おお！誰かと思えば、確かルコイ村のマサさん！」

「久しぶりじゃ無いですか」

「本当に。何ヶ月ぶりだろうな。あんたの御陰で我が軍も大分鍛えることが出来たよ。いや参考になった。勉強させて貰ったよ。その節はありがとう。遅まきながら礼を言わせて貰うよ」

「いやいや。礼なんて。それより、今日は王様に謁見に来たんだ。遅れると大変なんだよ。大事な客人も一緒だし。何とかなりませんか」

「王に謁見とは。それは急がねば。良し判った。マサさんの顔も見れたことだし・・・よし、通って良し」

「おお！ありがたい。隊長、時間あったら一杯飲もう」

「ああ。謁見が終わったら、詰め所に居るから良かったら声かけてくれるかい？」

「あいよ」

　マサの気さくな物言いに合わせて軍隊を束ねる隊長も顔を綻ばせた。

　王様との謁見には少し待たされたが、セイメイが一緒と伝えると慌てて大臣が飛んできた。

「いま、王が用意をいたしておりますので、今暫くお待ちください」

「精霊様がお待ちです。それと南の国の事についてお話申し上げたいことがございます。宜しくお願いします」

　村長が大臣に丁寧に今日の謁見の趣旨を説明した。

「暫く！今暫く！誰か、この方々をお持てなしして。粗相の無いようにな！」

　大臣がまた慌てて走って行った。後ろ姿をマサが落ち着けと声を掛けようとしたが、慌てている大臣の耳には届かなかった。

「あ～あっ、あんなに慌てて。足もついて行ってないじゃん。あっ転んだ！飛んだ！おー！柱に抱きついた！って、ええええ！会談の手すり滑っていたよ？」

「私でもあそこまではしないよ？ありゃ曲芸師だね」

「いや村長と良い勝負じゃねえか？」

　マッコイの言葉にマサが何時もの突っ込みを入れていた。

「何処の大臣も慌てると同じですね。日頃鍛えていないから慌てると足がもつれてああなる」

　ジェノーヴィアの大臣も魔族が宣戦布告したときは、慌てて王様の部屋の絨毯に躓き、部屋から庭の池に飛び込んだ。

　お茶を運ぶ給仕の仕草に見とれていたマサは、徐に入り口を見た。

　そこには王が立っていた。

「王様？お、王様！」

「良い良い。お待たせしました。謁見の間へお越し頂くと私が高いところへ立つことになります故、此処へ馳せ参じました。どうぞおくつろぎください。本日は精霊様もお越しと聞きましたが？」

　王様がキョロキョロ探していると、マサが両掌を上に向けセイメイの方へ指して、

「こちらでございます。この方が人型に成られたセイメイ様でございます」

「へ？・・おっおおっ・・えええ～っ！」

「王様。判りますその気持ち。俺たちも同じでしたから」

「お、おおう、そうか。失礼いたしました。以前の光る精霊様がお越し頂いたと思って居りました。して、今日はどのようなご用で？」

「この姿での謁見は初めてでしたね。この姿で失礼したのはお願いしたいことがあるからです。それとこちらのガトーが報告したい事があり、どちらも王に素早く動いて頂きたいと思いこうして伺いました」

「精霊様のご進言、私に否はございません。何なりと申し付けて頂きとうございます」

「そうですか。先にガトーからの報告から聞いてください」

「ははっ。して、ガトーと申したか？報告を聞こう」

「はい。お初にお目に掛かります。私は西の国ジェノーヴィア公国に居を構えておりまして、縁あって国王様の特別な計らいにより、南の国ポルゴダの海産物を運ばせて頂き、国の輸入品を任せて頂いております」

「ほう。海産物を輸入していると・・・続けて」

　王は顎に手を当てガトーの人となりを見て関心していた。精霊と居ることも含め、他国の王の前で自分の出自を臆すること無く話せることに関心していた。

「はい。先日のバーレンシアへのムーラシアからの宣戦布告の折、南の国の港がワイバーンや飛龍の群れに襲われまして大変な被害を被っております。つきましては、ベレーゼ国王様のお知恵と中央連合国の会合を開いて頂きたくお願いに上がった次第でございます。この通り書状も預かっております」

「ベレーゼ王。私セイメイが後見いたします」

「えええっ精霊様がこの者の後見？なんと！あいわかった。それで、他の国は？ポルゴダは？ルカリアは？まあ道すがら聞くとしよう。大臣！大臣！！」

「あのうー、大臣さんさっき慌てて階段の手すりを頭で滑って行かれたので多分医務室かと・・」

「へ？あの慌て者が・・判りました。早速ジェノーヴィアへ移動するとしよう。それはそれとして、マサ。今日は精霊様の付き添いか？」

「それは私がお話しましょう」

「ははっ」

「前にスザクと訪れたときに魔族が責めてくる話をいたしましたね。それが現実の物となり、これから争いが始まるであろう時に兵を今のままでは死なせてしまいます。ルコイ村は、マサとスザクが作り上げ、私が強固な結界を施してあり魔族は入ることはおろか手を出すことも出来ないでしょう。王に問います。あなた方だけで、ルコイを手本にマサに教えを請うているとしても、国を守り他国を救済できますか？」

「はっ。恐れ多きことにございます。この国を憂えて頂きご心配おかけいたしまして、申し訳なきことにございます。日々努力を重ねておる次第でございますれば、必ずや魔族並びに飛龍の撃退をと思って居ります」

「王は魔族の数を聞いていますか？」

　冷や汗が流れ出る額を袖で拭いながら、セイメイの言葉に恐れおののいていた。

「未だ正確には把握いたしておりません」

「私の友人の木々たちがムーラシアから１０万、東の国からムーラシアに応援が１０万東から南の国へ、つまりベレーゼ王国ジェノーヴィア公国に向けて３０万の軍が動き出していると教えてくれました」

　セイメイの言葉に頷きながらも、内心事の大きさに頭を悩ませていた。

「３０万ですか。こちらの連合全部合わせて２０万に届くかどうか・・・」

「そうですか。そこで相談なのですが、スザクの作戦でこの大陸の指揮を執ることを承認して頂けますか？」

「はい。連合各国に伝えましょう」

「そしてこの国を鍛え直したいので、マサを特別に王直属の将軍として迎えて頂けますか？」

「ええええ～っ。俺を将軍に～い？」

「そうです。今日はそのために来ました。未来のこの国とジェノーヴィア、ポルゴダ、ルカリアのために。この大地のために」

「俺が将軍になることが、この大地の為なんですか？」

　竜車の中で少しは聞いて覚悟はしていたが、戦い方を教えるくらいにしか思って居なかった。

「ガトーも協力して頂きますが、よろしいですか？」

　セイメイがガトーにも協力を促した。

「それは私で良ければ、どんな事でも」

「村長の私は何をすれば良いでしょう？」

　久々の役目を貰えると張り切って村長はセイメイに聞いてみた。

「そうですねえ～」

　少し考えるセイメイ。村長はショックを受け膝を着きそうになった。

「冗談です。マッコイ。貴方には四カ国の女子供をルコイ村に入れられるだけ入れてください。それとルコイ村のようなところを私の指定したところへ作ってください。それも貴方の管轄として、この大地の女子供、戦争で死なないように隠せるだけかくして、守って頂けますか？」

「はい。了解いたしました」

　村長は胸をなで下ろし、役目を与えられたことに喜びを感じていた。

「ベレーゼ王、如何ですか？」

　今のセイメイの役割の分け方に、王に異存はない。

「魔族に対抗する術を教えていただき、国の弱者、女子供まで国境を越えて守ることお考えいただき、恐れ入りましてございます。ルコイ村の複数の拡張、承知いたしました。スザク仙人様の総指揮、各国に通達いたしましょう。将軍の件は現在の将軍にマサとの話をして、私が必ず納得させましょう。何せ気位が高くて扱いにくい者でして。が、しかしそんなことは言ってはおれません。必ず特別将軍を実現してご覧に入れます」

「ではすべてベレーゼ王にお任せいたしましょう。南の国は一端は収まっているようですが、何時また襲われるかも判りません。早急に対策をお願いします」

「ははっ」

　セイメイは王に軽く会釈をし、それを見て王が床にひれ伏した。

　王が元の席にもどるのを待っていたマサ。

「王様、俺もガトーさんも王様について行ってよろしいですか？港も何か対策出来るかも知れない。それとスザク仙人様のお弟子さん四人が南の守りに来てくれると思います。めちゃくちゃ強いですから。この四人で２万の兵に相当しますよ」

「二万？そんなに強いのか？」

　心配げな眼をしていた王の目に輝きが戻ってきた。

「一人ずつ対戦形式でやれば、魔族二万五千。四人で十万は蹴散らせますよ。ただ一対一は考えにくいので・・・」

　王は破顔した。

「しかし！そんなに強ければ希望がわいてくるでは無いか。でかしたぞ特別将軍！」

「いやまだ、就任していませんが・・・」

「何を言っておる。今のを聞いて誰も否は言うまい。精霊様先程の件、お約束いたします」

「そうですか。約束。お願いいたします。ではガトー。これからのことを話し合いましょう」

「はい、精霊様。色々とありがとうございました。手紙では無く王様ご自身でジェノーヴィアに来ていただけると聞いて肩の荷が下りましたが」

「ガトーさん荷物下ろすの早いよ。これから一緒に南に行って戦わないと、な！」

「宜しくお願いします」

「では皆さん、スザクに代わってお願いに来ましたが、大陸の全ての命を護っていただきたいです。宜しくお願いいたします」

　セイメイの言葉に一同が恐縮した。

「マサ、ガトー。あっ、村長のマッコイ。それぞれ任務を果たすように」

「王様が、あって。マサ、王様があって、あれって・・忘れてたって事か？」

「うおっほん！マッコイ。忘れてはおらんよ、忘れては」

「ははー。し、失礼しました」

「ちょっとだけ失念しておっただけよ」

「おいマサ。失念てなんじゃ？」

「さあ。忘れてたって事じゃ無いのか」

　マッコイはがっくりと肩をおとした。自分の影の薄さに。

「マッコイ」

「はい、王様」

　改めて王様に名前をよばれ、顔を向けた村長。

「冗談じゃ。マサとお前が何時も楽しそうにやり取りしているのでな。ちょっと私もやってみたくなったんじゃよ」

「うう、王様に弄られるなんて。嬉しいやら悲しいやら」

「良いじゃねーか。なかなかいねーぞ。一国の王様に弄られる村長なんて」

「もうそれでいいです・・とほほ」

「マッコイも王に相手にされて幸せですね。その勢いで任務も宜しくお願いしますね」

　セイメイにも言われ自分の弄られキャラを自覚してしまった。

「私はこのままエルフの郷へ行きます。ミサには報せておきますね」

「精霊様。宜しくお願いします」

　南の国にこれから王が出向き連合と会議。魔族に対しての対抗策を話し合うため。

　王の決断は素早かった。