第29話 精霊恋術?

ダンが龍の背骨で、魔族と初戦闘&スーツのテストをしていた頃、アニカはビャッコの扱きに耐えていた。


朝起きてから、夜食事をするまで肉体と精神、眠ってからは精霊セイメイとビャッコが育てた準精霊による古龍魔法と精霊術の英才教育が施され、順調に、しかも大事に厳しく育てられていた。


「セイメイ殿、よくぞあれほどの逸材を見抜かれましたな。妾では計れ何だが、スザクと其方の見抜く眼力、恐れ入り申した」


『あの子はダンについて行こうと必死でした。昔見た、スザクとビャッコのお二人に似ているように思えたので』


「その様な、赤面するような事を言って妾をからかうでない。もう百年を何回過ぎたことか。普通の人間ならば男は約束を忘れ、女は待っているもの。妾達は、延々と生きながら忘れず、さりとて待っていることも出来ぬ。まあ女としてはつらい立場じゃろ?普通ならば」


『修業されていた若い頃は、何時もスザクのあれがいけない、此処が凄いとお互いを引き上げる関係だったではありませんか。私はそんなお二人を羨ましくも微笑ましく見ておりました』


「其方に良く相談したものよなあ。若さとは悩む物とよう言うたなあ。何千年も経てば生きていてくれればそれでええ。文句も欲も言わぬ故な。それ故にあのアニカと言う娘とダンとか言う小僧をどうにかしたいもんじゃがなあ」


『それですがアニカは此処に残って生きてゆけますが、ダンは此処では無い世界に行かなければ成りません。この先最後の戦いまで行って勝てたとして、此処にかえってきたときにアニカが生きている保証が無いのです』


「そんなに遠い未来に行くのかえ。それは・・・何とも不憫よのう。まあまだ若い。修業が済んだくらいに考えれば良いじゃろう」


ビャッコとスザクの若き日を、精霊セイメイと恋バナに花を咲かせ懐かしく思い、アニカを思いやっていた。


アニカ本人はまだ自覚しておらず、ダンに近づき一緒に戦い、自分がダンの、みんなの力になるんだと必死である。


ダンたちが魔族と戦っている頃、ビャッコとアニカの修業が一段落付いた。


「アニカや。今日の動きは的確で良かったぞ。明日からは複数人を相手にする故、厳しくなるが良いか?」


「はいビャッコ様」


「アニカや。今はスザクと精霊セイメイがお主の師匠にあたる。妾は代わりに指導しておるに過ぎん。じゃが同門の先輩でもある。故に少し堅苦しくはあるが、其方を年の離れた妹分だと思って居る。其方は妾をまあ、その、姉様ねえさまと呼ぶように」


「よろしいのですか?私が精霊様とスザク叔父様を差し置いてビャッコ様を姉様(ねえさま)などとは。でも嬉しく思います。ビャッコ様を姉様(ねえさま)と呼べるなんて。では、おほん。ビャッコ姉様、明日も宜しくお願いいたします」


「うむ。良いもんじゃのう。若い娘に姉様(ねえさま)と呼ばれるのは」


『ちょっと呼ばせた感は否めませんが』


「何か言ったかセイメイ」


『いいえ、なにも』


「アニカよ。今日は夕餉を食べてゆっくり休むのじゃ。夜更かしはいかんぞえ」


「はい、判りました。では、食事の用意をして参ります」


「んん。頼んだぞ」


『ビャッコ、アニカはどうでしょうか?仙人修業を越えられますか?』


「越えるとはどういうことじゃ?」


『はい。スザクは気づいたかも知れません。超越者とでも言いましょうか。神に近い存在まで高めることです』


「スザクはそこまで挑戦しておったか。しかし到達した者が居らんことには・・・或いは、スザクは見たのか?」


『多分・・・あの光りの奥へ到達仕掛けたのだと思います』


ビャッコとセイメイはスザクが到達しかけた精霊と仙人の究極の頂に届きかけたのだと、推察しうなずき合った。


「恐らくスザクなら出来ていたかも知れん。今到達していないのは、ダンのため。この世界のために己を封印しておると言うことか」


『スザクのことですから、世界が静まればやがては自分もそこに到達しようと考えているかも知れませんが。ダンは別として、この子を連れてきたのは、この子に託したのでは?』


「ふーむ。それも有るか。自分は何れ到達するが時間が掛かる故、先にアニカを到達させると。そして自分もその頂に立ち世界を安定させ他の世界を楽しむつもり・・か」


『スザクならそう考えても可笑しくはありませんね』



お互いにスザクを思い、少しあきれながらも、頼もしくもあった。


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