第25話 スーツの威力
「変シーン!!」
ダンのかけ声で変化が現れた。
スーツを着たダンの身体がみるみる大きくなり、アベルナーガを追い越し、雲に届きそうな巨人になっていた。
『何じゃ?これはどういうことじゃ?』
「ライカ、どうなってるの?どうしたら良い?」
大きくなったダンをアベルも見上げながら驚いていた。
同じく直ぐ横に居たサクヤも見上げて驚きを隠せなかった。
「何なの?・・・ダン君が・・・ダーンくーん!どうなってるのー?」
「ライカ・・・これ・・・苦しいんだけど・・」
『さっきも言おうとしたんだけど・・魔力増幅装置が組み込んであるから、魔力を押さえて見て』
「判った。やってみる」
『それで身体を縮めるイメージを頭の中でしてみて』
「こうかな?」
『魔力は少しだよ。流しすぎると此の世から消えてしまうかも知れないからね』
「頑張る」
ダンの身体の光りが少し薄れていき、段々と小さく収まっていった。
『もう少し、もう少し頑張って』
「う、うん。びみょ~!難しい!!」
「ちょっと!何やってんのよ?大きくなったり、小さくなったり・・」
「魔力の量が少しの違いで変わりすぎる。凄く難しい~」
『これは大きい分には良いけど、小さく人間並みを維持するのはダンの魔力量だとかなり、シビアというか増幅量の調整が必要だね』
「確かに。アベルの叔父さんとの修業には使えるけどね」
『でも、大きな身体のままだと、魔力消費が凄いよ』
「どのくらい持つか試してみる?」
『いや。無理しない方がいいよ。もう少し調整してみるよ』
「早く小さくなってよ。首が痛くなってきたわよ」
「お姉さんちょっとまってて。今、小さくなるから」
『我を脅かすほど大きくなるそんな道具を作れるとは。ライカは凄い知識を有して居るのう』
「アベル様が感心しておられる。ライカって言う子。凄い子なの?」
サクヤの問いかけにアベルナーガは横目で頷いた。
『記憶を徐々に取り戻してきて居る。その内全てを思いだすじゃろうて』
感慨深く遠い目をしているアベルナーガの目の前で、エレベーターのごとく、あがったり下がったり(大きくなったり小さくなったり)。
やっとの思いで元の身長に固定。早速分身を使い、ライカは修正に取りかかった。
『ん?何か邪の者が一つ、いや、三つか。結界の外をうろうろしておるのう。力はダンが少し上じゃろうな。しかし今はスーツとやらを試したばかり・・・じゃが、実戦の経験を積む好機。ちと試してみようかのう』
アベルは結界の一部を開放した。サクヤにだけ姿を隠すように伝え、アベルも岩穴の中へ隠れた。
ダンはスーツを扱う時に減った魔力を補充するため瞑想していた。
山の麓から少しあがった所に飛び出した岩が有り、その上で辺りを見渡している魔族の姿があった。
「どれだけ見て回っても人間の子供の姿は見当たりませんねえ。もうとっくに降りていったんじゃ無いですか?」
「したには配下の軍隊が押さえて居る故逃がすはずが無かろう。奴はこの山脈の、龍の背骨のどこかに居るはず」
「ですよねー。しかし何処にいるんでしょうかねえ。おや?ここ、なんか変ですよ」
「どこだ?」
「ここ、此処ですよ。何か今までと違うような・・・ここから結界が綻んでいるんじゃ無いでしょうか?」
「誰か来るぞ!」
魔族の軍隊よりダンを探索するよう命令を受けて、まず三人が送り込まれた。隊長のガフラー。攻撃班長のコンコール。魔法攻撃班マカリア。
三人がそれぞれ動物に変化し潜んでいる。そこへ荷物を抱えてマントを被りフードで顔を隠した戦士風の者が木に何かの呪文を唱えると”ググググ、ゴゴゴゴ”と音を立てて木が動いた。戦士風の者は振り返り、辺りを見渡し誰も居ないことを確認し、一つ頷き森の中へ消えていった。
変化をといて三人が木の上から降りてきた。
「おい。今のを追いかけるぞ。マカリアは知らせを出せ。敏られんようにな」
「はっ」
早速呪文を唱えると近くに居た鼠が目の前に現れ魔族の姿になった。
「山の麓に降りていき魔族軍ブライド様に報告せよ」
命令を伝えた後、マカリアは手紙のような物を鼠の魔族の胸に当てた。そしてそれはスーッと染みこむように消えた。
鼠の変化した魔族はコクリと頷いた後、また鼠の姿になり木々の中に消えていった。赤い眼をしながら。
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