激カワ人気教師のアプローチが積極的で変態すぎるのだが

二川 迅

第1話

「……おはよー」


欠伸をしながら教室の扉を開ける俺、飯島 せい

私立冨ケ原学園に通う高校生2年である。なんて、こんな紹介しかできない。申し訳ない。


「おはよう。玲暉」

「ん」


席に座ると、大柄の男性、五峯ごみね玲暉れいき、幼稚園からの腐れ縁であり、仲もたいへん良い。

ちょうどその時、チャイムが鳴った。急いで 玲暉達は席に戻った。

何気にギリギリだったようだ。


「はーい、座って」


入ってきた俺らの担任、蒲原かんばら亜弥あや先生。

茶色いハーフアップのセミロングの女性であり、今年28歳の割にはありえない可愛さを持っている。

俺も含め、蒲原先生の可愛さには虜になっている。そのため、2年のクラス決めで一番最初に見る欄は担任の欄だった。

そこに「蒲原 亜弥」と記されていた時は男子全員で歓喜の輪を作っていた。


「(今日も可愛いよなぁ)」


蒲原先生と結ばれたいなんて、このクラスの男子が全員思うことである。


「今日は、職員会議のため、直ぐに帰宅してください」


プリントを見ながら淡々と連絡事項を読む。ふざけたりは一切しない蒲原先生だからこそ、可愛く見えてしまう。真面目っ子である。








担任といえど、授業は別の先生なので、俺はその間ぼーっとして聞いていた。

新年度になってまだ数日のこの時期、授業を受ける気にはならないが、日本史だけは、真面目に受けられる。だって蒲原先生だもの。



そうして、いつも通りの一日が終わる。この後、いつもならまっすぐ帰るか、玲暉とカラオケに行くかとどちらかなのだが、今日はどちらでもなかった。


「飯島さん。この後、お話があります。教室に残っていてください」

「え?でも、今日は職員会議じゃ……」

「自習していてください。重要なお話ですので」

「は、はぁ……職員室ではダメなんですか?」

「ダメです」


蒲原先生が話しかけてきたと思ったらなんだか重要な話があるみたいだった。

俺は別にスクールカーストのトップにいる訳でもないし、ハブられている訳でもない。本当に普通の生徒であり、問題も起こしてはいない。


身に覚えのないことなので少し面倒でもある。


「(まだ怒られるって決まったわけじゃないしな)」


そうして、俺は沈んでいく陽を見ながら、課題を終わらせていた。こう考えると、家に帰って、やる気出ない中やるより、教室でやった方が全然集中が出来たので、いつも一時間かかる課題も15分で終了した。


「んっ……んーーーっ」


大きく背伸びをして、外を見る。鮮やかなオレンジ色が教室にも降り注ぐ。現時刻は午後5時。

職員会議はまだ終わらんのかっ。

大きくため息をついて、机に伏す俺はそのまま来るまで眠りにつこうとした時に、ちょうど扉が開けられた。


「……自習してますか、飯島さん」

「か、蒲原先生!さっきまで……はい!」

「そうですか」


俺は立ち上がって、蒲原先生の元まで小走りで駆け寄る。


「あの、俺にお話って?」

「た、単刀直入に言います」


蒲原先生は俺よりも数センチ背が低い。俺も高い訳では無いので、あまり差はない。そんな状態でも顔が伺えないくらい俯いていた。

そして顔を上げて何かを言うのかと思ったら、次は辺りを見渡していた。


「?……あの……」

「え、えと……そのですね」


その瞬間、蒲原先生の顔色と目の色が変わった。光のない、濃い青色の瞳。



そして、来ていたカーディガンを脱ぎ、ワイシャツのボタンを一つ一つ取っていく。


「せ、先生!?」

「なんですか?」

「な、なんで脱いでるんですか!?」

「……はぁ…はぁ…青……くん」


息が荒く、「青くん」と俺の下の名を呼んでいた。俺は体がビクリと動く。このまま蒲原先生を襲ってしまいたい。

しかし、それは自制と世間の目によって止められる。


「か、蒲原先生!まずいでしょ!」

「好きです…青くん、誰よりも」

「は、はぁ?」

「だから処女、貰ってください」


はい、素敵な情報ありがとうございました。

心の中で頭を下げる。


「いやいやいやいやいやいやいやいや、そうじゃなくて!え!?先生、俺の事好きなの!?」

「ええ、好きです大好きです愛してます」


おおう、結構愛が重いよ蒲原先生。

俺は心臓がバクバクとなっていた。硬直してしまっている俺の見ながら、先生は次々とボタンを取っていく。


「だめ!先生!成年と未成年は……」

「犯罪ですね」

「分かってるなら……」

「それがなんですか?」

「……は?」

「私は、青くんと交わることが出来るなら、捕まったっていいです」


やばい。この人、相当やばい。直感がそう語った。いままで憧れだった先生が一気にどん底に落とされた。


「か、蒲原先生……」

「亜弥って呼んでください」

「い、いやいや、待ってくださいよ」

「なんです?焦らしプレイが好きなんですか?」

「なんでもそっちに持ってくな!」


変態だった。俺の憧れだった先生は、変態さんだった。


「青くん……」


蒲原先生の体が俺に密着される。少し大きめの2つの胸がふにゅりと当たる。

それにより、俺の体はカッチコッチに固まってしまい、俺の俺も反応していた。


「(くっ、落ち着け!)」

「青くん……おっきくなってる」

「わぁぁぁ!だめ!触るなァァ!」

「どうして?いつかは全て触るんだよ?」

「今はだめ!本当に!蒲原先生」

「亜弥って呼んでよ」


小悪魔か。


「あ、亜弥先生」

「先生いらない」

「亜弥さん!」

「さんいらない」

「亜弥ちゃん!」

「ちゃんやめて」

「亜弥!」

「はい」

「い、今は、教師と生徒の関係です!」


俺は蒲原先生の肩を掴んで、引き離す。その時の先生の顔は少し悲しそうにしていて、とても可愛くて、襲いたかった。


「だから……やめましょう」

「……すか」

「え?」


上手く聞き取れなくて、俺はもう一度聞き返す。

すると少し涙目になり、顔グイッと近づける。


「青くんが悪いんじゃないですか!」

「……」

「青くんがたまに笑う笑顔が可愛くて、サッカーしてる時はかっこよくて、ホームルームの時はだるそうに私の話を聞いてて、日本史だけ真面目に聞いてくれて、五峯さんといる時だけ本当に楽しそうで、女子と話す時はコミュ障発揮して、裏庭にいる三毛猫にでれでれしてて、ケモナーで!」

「ま、待て待て待て!」

「なんですかっ!?まだありますよ!」

「いい!もういいよ先生!」

「亜弥って呼んで!」

「めんどくせぇ!」


この人、こんなにめんどくさい先生だったか?しかし、今の状況を見ていると、生徒が先生を襲っているみたいだ。他の人が見ていたら、俺に「先生狩り」のレッテルを貼られてしまう。


そう思った瞬間、廊下から足音が聞こえた。


「っ!」

「まずい、誰か来る!隠れよう先生!」

「あ、亜弥って……」

「亜弥!隠れるぞ!」

「きゅぅん」

「自分できゅぅんなんて言うな!」


俺は、先生の手を引いて、教卓の机に隠れる。どうやら、来たのは巡回している先生のようだ。


「(せ、青くん、青くんの匂いが……)」

「(汗臭いのは我慢してください!)」

「(ううん、いい匂い……興奮する……)」


完全に密着している状態なので、お互いの匂いがわかる距離である。先生の甘い匂いが俺の鼻腔をくすぐって、俺も少し興奮を覚えた。


「(ね、青くん、キスしていい?)」

「(だめ)」

「(なんで?興奮してないの?)」

「(してるよ。こんな可愛い先生と近くにいたら)」

「(へ?)」


どうやら、先生はもう去ったようだ。俺は安堵の溜息を零して机から出る。


「ほら、もう行きましたよ」

「あ、あぁ、……青くん好きぃ……」


完全に蕩けていた。先生の顔はもう乙女と言うより痴女であった。


「せ、先生?」

「もう……めちゃくちゃに犯して……」

「あんた教師だろ!」

「青くん童貞でしょ?私も処女だから、お互い初めてだね……?」

「なんで知ってる!てか、それよりもしねえからな!」

「……というのは、冗談で……」


明らかに冗談ではなかったが、先生は服を正して、置いていたカーディガンも来た。


「でも、青くんとエッチなことをしたいのは、ほんとですよ?」


可愛らしい仕草で俺を見つめながら、そんなことを言うので、俺はもう全身にビビビっと何かが走った。


「それに、私は、生徒としてじゃなくて、異性として、青くんが好きです」

「…っ!」

「青くんは……私の事、好き?」

「……俺はまだ生徒です」

「分かってる」


俺も、出来ることなら、好きって言いたい。彼女と付き合って、色んなことをしたい。


「……でも、今は、…先生と生徒っていう関係が好きです」

「……そう…」

「でも!卒業したら、俺は先生に必ず俺から好きって言います」

「っ!」

「だから、待っていてください!」


そう叫んで、俺は自分のスクールバッグを持ち、すたすたと歩いていった。「さよなら」とだけ言って、俺は教室を出ようとする。

その時、先生がまた声をかけた。


「青くん、私、あと2年も待てません。今すぐ付き合いたいです」

「……はい」

「だから、これからも、積極的にアピールして、青くんが今すぐ告白するって思わせるようにします」

「……」

「だから……覚悟してて下さいね?」

「頑張ってください」


これから、どんな生活が待ち受けているのか、それは俺には分からなかった。

でも、ずっと好きだった先生から告白されて、キスするチャンスもあったって考えると、嬉しくてたまらなかった。

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