雪のお気に入り_三つめ・”雪”


雪、月、花はそれぞれ性格はまるで違う。

図ったようにてんでバラバラ。

同じなのは、魔女様が大好きなことくらい。


だから、雪は自分の名前がお気に入りだ。

だって魔女様が名付けてくれたから。


………本当は名付けたのは魔女様でなくあの時たま訪れる男の人なのだけど、魔女様はそれを内緒にしている。

雪も月もなぜかしら彼ととても仲が悪いので。

普段は喧嘩ばかりの二人も、彼がきたときは仲良く追い出しにかかる。

ちなみに成功したことはまだ一度もない。


魔女様が雪と呼ぶその響きが好き。

お前の名前だからと魔女様が魔法で作ってくれた雪の結晶を、彼はガラスの箱に入れて大事に大事に宝箱の中にしまってある。


冬になって雪が積もれば、普段は帰ってこないくせにそっと暖炉のそばで魔女様に寄り添う。


そして、小さな声で歌をせがむ。


魔女様は全然その願いを叶えてくれなくて、雪はちょっぴり不機嫌気味。

それでも魔女様のそばを離れずにのんびりと過ごす。




宝箱に入れられない代わりに、彼なりに大切にしているのだろう。




魔女様も魔女様で、温もりを分け合ってのんびり。






月がふて腐れて引き剥がしに来るまで、ほんの一休み。










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