雪のお気に入り_二つめ・木漏れ日


月に言わせれば雪は一匹狼だと言う。

気ままで、気まぐれ。

ふらりと心赴くままに何処かに出かけては、思い出したように魔女様の所に戻って来る。

群れるのが苦手てで、なのに寂しがり屋。

花はそう、少し笑った。



だから彼は、めったに魔女様の家に寄り付かない。

月も花もそれぞれ好きなことをしていて、いつも家にいるわけではないのだけれど。

花は、霧の森から出ないくせに家に帰ってこない。


だから彼は、花の香りがするベッドで寝る代わりに木漏れ日の中で昼寝をする。

これも彼のお気に入りの一つ。

魔女様の歌と同じで、まだ宝箱に入れられていない。

違うのは、宝箱に入れるのを諦めていないこと。


今日もお気に入りを見つけては、ごろりとねころがって欠伸を一つ。

月は狼と評したけれど、魔女様はどちらかといえば猫みたいだと思っている。

虎とか、そんな感じの大型の猫。

簡単には懐かない感じとか、野生的な本能とかが特に。



木漏れ日の暖かさに誘われてウトウトと微睡んでは、時折寝返りを一つ。

時間はとろとろと過ぎていき、彼もまた微睡みから夢も見ない深い眠りへ。



時折風が、彼の短い黒髪をさらりと揺らす。




その様子をこっそり魔女様が見て、クスッと笑っているのは秘密だ。

そうやって昼をしているから、昔雪のように白かった肌も今はこんがり小麦色。

でもそれが、何よりも彼らしかった。



覗き見している魔女様の反対側から、ふらふらと白色の髪を揺らして小さな少女がやってきた。



魔女様には気づいてないようで、寝ている雪の隣に寝転ぶともぞもぞと懐に入り込んだ。

ピクリと雪が片目を開けて彼女をみる。

彼はそのまま放っておくことにしたようで、何も言わずにまた目を閉じた。





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