第2話 あなたを守りたい


「この村は他の村よりは活気があるようですね。」


「ここは帝都に近くて、皇帝に果実酒を献上するための村だから、他の村よりは優遇されているのです。」


「なるほど。

しかし、それを売っている店がないようですが?」


「全て献上品なのです。

もし少しでも飲んでいることが知られれば、命はないでしょう。」


「ひどいですね。」



私たちはリキスを同行者に、帝都の近くの村にたどり着いた。まずは帝都がどんな状況なのか調べておきたかったのだ。



「アイル様、あそこが今日の宿です。

1階がレストランになっていますので、少し早いですが夕食にしましょう。」


荷物を部屋に置き、我々はレストランに集合した。

今までの村よりも旅人や商人が多く、とても賑やかだった。


「おいしい!」


「おいしいですね。」


「やはり帝都が近いと食材も豊富で、味も違いますね。」


用心棒の二人もモリモリ食べている。

こんな和やかな時間が全ての国民に訪れればいいのにと、アイルとマルクはせつに願った。




「どけ!どけい!!」


「ここは皇子おうじが座られるのだ。

すぐに場所を空けよ!」


皇子おうじ、こちらへどうぞ。」


「うむ。」




「あれは?」


「父の元臣下の息子で、今は皇子おうじです。」


アイルが膝の上で拳を固く握り、怒りに身を震わせている。


(あいつは父を殺したかたきの息子。許さない。)




皇子おうじは店内を見回すと、アイルをじっと見つめた。


まさか、姫だとばれたのでは?

マルクの表情が険しくなる。


皇子おうじが臣下に何か耳打ちをすると、臣下はこちらにやって来てアイルの腕を掴んだ。


「何をする!」

マルクは臣下の前に立ちはだかり臣下の手を振りほどこうとした。


「何をしている?

この店を今すぐ営業停止にしてもよいのだぞ。それでは困るだろう?旅人よ。」


臣下の一人はニヤニヤと笑いながらマルクを見た。


「卑怯な。」


アイルが皇子おうじの元へ連れていかれる。マルクは店や客人に迷惑がかからないように、店の外でアイルを取り戻すことにした。リキスにも静かに伝える。


「なかなかの美人ではないか。」


皇子おうじはアイルにキスを迫るが、アイルは嫌がって応じない。無理矢理キスをしようとする皇子に平手打ちをくらわせた。


臣下がアイルを取り押さえひざまずかせる。

皇子おうじはニヤニヤと笑いながらアイルを見下ろしていた。


「こいつを連れてこう。

我が妻とするために。」


皇子おうじは大声で笑いながらアイルを連れて店を出ていった。


マルクは怒りをあらわにし、唇を強く噛み締めていた。リキスはそんなマルクの腕を軽く叩き


「行こう。」


とだけ言った。




店を出て皇子おうじ一行の馬車を追う。森の中に入ると、月も雲に隠れて辺りは真っ暗になった。


用心棒二人が皇子おうじの乗る馬車の御者を倒すと、馬と馬車を切り離した。

すぐさま馬車の中からアイルを取り返す。

しかし、臣下たちもだまってはいない。次々と用心棒たちに襲いかかりアイルの身が危ない。マルクとリキスもアイルを守るべく戦う。だが、このままではアイルを守りきれない。マルクはアイルを引き寄せ、安全な所へと走り出した。

その時、何発もの銃弾がマルクの体を貫いた。

マルクはそのままアイルを抱きかかえ走り続ける。

銃弾は休むことなくマルクの体に穴をけ続けてゆく。


「マルクもういいの。逃げて。

あなたの体がもたないわ。

あなたとここまでこられたこと、嬉しかった。それだけで私は幸せだった。

だから、もう逃げて!」


「そんなことはできません。

私はあなたを守るためだけにここに存在しているのです。その意味を失えば、私は、私の存在意義も失うのです。私はアイル様のためだけに存在しているのですから。」





「あれを出せ。」


皇子おうじは臣下に、今回手に入れてきた新しい武器を出すように命じた。

それは、全てを無に還すほどの威力のレーザー砲だった。


「試し撃ちにいい機会だ。

どれほどの威力か楽しみだな。」


レーザー砲が二人に照準を合わせた。

リキスと用心棒たちは臣下にはばまれ、そこへたどり着けない。


「撃て!」


レーザー砲が目も眩むような光をアイルとマルクに向けて発射した。





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