それでもこの冷えた手が

紬季 渉

第1話 二人の旅

「こんな所に村があるなんて思えないけど。」


見渡す限り乾いた砂嵐が吹く荒野。

だが、確かにここに村があると、前の拠点の仲間が教えてくれた。

やつの情報は正確で、この地図だってわかりやすくて間違えるなんてありえない。


「ここに間違いないはずなのですが。」


「そうね。この地図の場所は確かにここのはず。村が丸ごと無くなるなんてことあるのかしら?」


突然、砂嵐が吹き荒れたかとおもうと、目の前に男が一人立っていた。


「アイル様とマルク様でいらっしゃいますね。お迎えにあがりました。こちらへ。」


そう言うと、男は砂嵐の方へ歩きだした。

私はアイル様を砂嵐から守りながらその後について歩く。


砂嵐の向こうには、先程まではまるで見えなかった村が広がっていた。

しかもかなり広い。


「どういうことだ。先程まで何も見えなかったはずなのに。」


「敵に気づかれては困りますからね。

導師様の術で結界を張り、守っていただいているのです。」


「なるほど、それで。

しかし、随分強力な術だ。」


「お二人がいらっしゃることも導師様が教えてくださったのです。

最高位の導師様ですから、お姿を見ることはあまりできませんが、いつも、どこからでも見守っていてくださるのです。


ではまずは長老の所へご案内いたします。」




「長老、アイル様とマルク様です。」


「遠い所をよくぞ参られた。」


「早速ですが、協力をお願いしたい。

我が姫、アイル様を帝位に就けるために。」


「残念じゃが…、何も協力できることはない。

この村も導師様の術で守っていただいているのじゃ。隠れて生きる我々に何ができるというのか。

我らはただ静かに慎ましく生きて死んでいくだけ。」


「それでいいのですか?

強靭な武人の集まりであったこの村が、村人たちが、本当に今の生活に満足しているのですか?

共に立ち上がり帝国を取り返し、かつてのような皆が笑って暮らせる国に戻そうではありませんか!

そのためにはこの村の方々の協力は絶対に必要なんです!!」


「そうは言われてものう。

わしらにも守るべき家族があるのでな。」




「お話し中のところ申し訳ないが、邪魔をさせていただきます。

私はリキス。母に会うために旅をしております。

もしよろしければ、先程の件、私に任せてはいただけませんか?

私は長旅ゆえ、腕のたつ用心棒を二人連れていますので。」


「いや、しかし、

私たちはこの村の協力を得たいのです。」


「私の用心棒の村もたいしたものですよ?

決戦の折りには協力を要請してもいいと思っています。」



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