111:見えざる取引
――回転ハンバーガーショップ『
オドゥオールとの待ち合わせ場所は、著名なバーガーチェーン店。
数種の
ボクは
作り物の口は動きやしない。
とは云え、
ボクも適当にそれらしいハンバーガーを作る。食べるつもりは
プ~ン――
どれ程、衛生面に気を付けていようと
超小型のハエ型
ボクとおにぃの
実に小さな音声で、そのドローンが語りかけてくる。
「凄いな、君はッ!?宇宙開拓用
「――」
「これは失礼。挨拶がまだだったな。俺がオドゥオール。顔を見せないのは、まぁ、何と
「――」
「……ああ、そうだったな。君は
「――」
「――コードを送った。それ宛に通知してみな」
「――」
「うんうん、そうそう。問題なく届いているよ、君の“
ハエが音声を伴っているのは、同席しているボクへの
無論、おにぃは振動でそれを読み取れるから問題ないが。
「それじゃあ、取引を始めようか」
「――」
「まず、始めに。君らはそのボックス席から決して立ち上がってはいけない」
「――」
「俺を見付けようだとか、確認しようだとか、そんな気を起こしては
「――」
「よろしい!」
「――」
「では、回転レーンを見てくれ
そうそう、知っているかい?そのコンベア、ほぼ全て石川県で製造されているんだ。正確には
「――」
「そうかそうか、こりゃすまん。興味ないらしいな――さて、それじゃあ、説明するか。
アキバ=ミョージンでの遣り取りで通達済みだが、取引は現金だ。
「――」
「OK!それじゃあ、もう1度、回転レーンを見てくれ。手前が時計回り、奥側が反時計回りになっている。分かるだろう?」
「――」
「まず、奥側反時計回りのレーン。バーガー具材の乗っていない赤い皿を探せ。見付けたら、その皿に音声化プログラム分の代金の紙幣を乗せるんだ」
「――」
「俺が現金を確認したら、次は手前時計回りのレーン、緑の皿を見付けろ。それに音声化プログラムの入ったスマートチップを乗せておく」
「――」
「そうだ。後は分かるな?同じ要領で
「――」
「よろしい!それでは取引開始だ」
おにぃは
一時、取引は電子通貨ばかりが目立った。
特に闇取引や非合法な取引等、その履歴を照会されたくない場合には現金取引は持って来い。ボクも都合上、現金での遣り取りが
間もなく、何も乗っていない赤皿が流れてくるのを見付ける。
おにぃは無造作に、その皿に紙幣を置く。かなりの大金だ。
「確認するからちょっと待っていてくれ」
「――」
「……」
「――」
「…………」
「――」
「………………」
「――」
「……………………よしっ!確認出来たぞ。待たせたな。それじゃあ、今から流すからブツを受け取れ」
手前の回転レーンに緑色の皿が流れてくる。それにはバーガー具材の代わりに小さな
おにぃは手早く、その皿を取り上げ、テーブルに置く。
「グッド!受け取れた
「――」
「ああ、確認してみてくれ」
「――」
「どうだ?見事なもんだろう。
学習機能付きでテンプレート形成、予測変換の
そこらの音声分析では、合成された音声とは見抜けない程だ」
「――」
「まあ、使ってみてのお楽しみ、だな。さて、次は
「――」
「かっはっはっ!それじゃあ、さっきと同じだ。赤い皿を流すぞ」
程なく、再び
おにぃは札束をどさどさと乗せる。さっきとは比較にならない程の札束。ちょっとした
かなり高額な買い物、だ。
「併し、多いなコレは。確認するのに少しばかり時間が掛かる。そのまま待っていてくれ」
「――」
「……」
「――」
「…………」
「――」
「………………」
「――」
「……………………」
「――」
「…………………………」
「――」
――まだ、か?
あれだけの札束、数えるにしても時間が掛かるのは当然。
だが、沈黙されたら不安になる。あれだけ多弁だったんだ。せめて、数えるにしても会話を続けてくれればいいものを。
そう思い始めた時――
――ぷにょん。
スマホへの通知。
Kurikara>反応がない
「……えっ!?」
Kurikara>ドローンの回線が切れている
「今、目の前で飛んでるコレは!?」
Kurikara>自動操縦、だろう
まさか――
――何て事……
Kurikara>......
「ヤラれた!!」
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