interlude3:365日

<作者コメント>

 この回で300回目だということに気づき、急ぎ差し替えさせていただきました!

 ここまで300話も読んでいただき、本当にありがとうございます。


====

 おれは、amaneが好きだ。


 その気持ちが最初の原動力だった。


『わたしのうた』を何度も聴いて、『ボート』を何度も聴いて、自分にもこんなことが出来たら、なんて、これ以上の名曲が作れたら、なんて、そんな不遜ふそんな願いを胸に、もがき始めたのは、3年くらい前のこと。


 あれから、本当に色々なことがあったと思う。


 中学時代。


 amaneに憧れて、楽器を猛練習して、人生で初めての作曲をして、幼馴染に聞かせて、曲を思いっきり否定されて。


 高校一年生。


 それでも作曲がやめられず、やっぱり作曲しているなんてことは誰にも言えないまま、灰色の日々を過ごして。


 6月と7月。


 市川いちかわに出会い、吾妻あずまに出会い、沙子さこと仲直りをして。


 英里奈えりなさんに絡まれて、安藤あんどうと初めて話して、はざまとのいざこざに巻き込まれて。


 そして、初めてのロックオンで、シンガーソングライターamaneは復活を遂げた。



 夏休み。


 夏合宿で、平良たいらちゃんに出会い、星影ほしかげさんに出会い、吾妻のいじめ騒動の誤解を解くのになんとなく協力して、『ボート』を演奏して。


 沙子と一夏町ひとなつちょうの花火大会に行き、人生を賭けて背中を押されて。


 吾妻にデコピンをされて、音階を取り戻して、『キョウソウ』を作った。



 学園祭。


 徳川とくがわさんのことで市川と分不相応な喧嘩をして、沙子や吾妻に助けられて、もう一度歩き出して。


 器楽部のライブに、平良ちゃんの宣言に、英里奈さんの勇気に心を動かされて。


『あなたのうた』を演奏して。


 そして、おれが世界一好きなシンガーソングライター・amaneのデビューの可能性を葬り去って、一番大切で身勝手な想いを伝えた。



 10月。


 英里奈さんが失恋して、おれたちは『おまもり』を作って。


 有賀ありがさんに存在意義を打ち砕かれ、『キョウソウ』の意味を知り、再び立ち上がって。


 『スタートライン』で喚き散らし、吾妻の思いを受け取って、『平日』は、より一層特別な曲になって。


『あしたのうた』を演奏して、amaneは明確にバンドになった。



 そして、あれから3年と少しが経った今日、高校のスタジオで。



「さこはすも天音も、もうちょい楽器の音量上げてもいいかも。」

「分かった。……これで良いかな」

「私も準備できた。それじゃ、小沼くん、カウントお願い!」



 おれが思うのは、一言いちごん一句いっくたがわない、だけどそのじつ、3年分の想いがしっかり乗っかった、ほとんどまったく別の意味を持つ言葉だった。



ワンツースリー……」




 おれは、amaneが好きだ。

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