Interlude:夢の中へ

 はいはーい! どうもー、小沼ゆずです! 小沼拓人の妹です。


 なんでいきなりゆずが出てきたかといいますと、ただ単純にこの話をするのにちょうどいい距離感のキャラだからですね。


 その話とは……『「宅録ぼっち」女子キャラ人気投票』のことです!


 なんと、今朝けさその結果が出たので、候補者のみなさんをこの部屋にお呼びしたんです!


「それでは、みなさん、入ってきてくださーい!」


 ゆずがよびかけると、ゾロゾロとみなさんが部屋に入ってきました。


「ここ、どこぉー……?」


「入り口に、『夢の世界(時系列や世界観から切り離された部屋)』って書いてあったよー……?」


「『精神と時の部屋』的なこと……?」


「あ、ゆずじゃん。おつ」


 戸惑っているみなさんの中、1人全然動じない沙子ちゃんはさすがです。


「えっと、この子はどなた……?」


 おねえさんっぽい丸顔のリア充っぽい人がゆずに訊いてきます。きっとこの人が吾妻さんですね。


「こいつは、ゆず。拓人の妹」


「わあー、声は聞いたことあるけど、会うのは初めてー! よろしくね、ゆずちゃん!」


「よろしくお願いします!」


 この可愛らしい天使みたいな人が天音さんですね。


「え、たくとくんの妹ぉー!? かわいいぃー!」


 ぎゅっと抱きついてきたいい匂いのする人が英里奈さんですね。なるほどなるほど。


 ……たっくん、美少女に囲まれてるんだなあ……。


「それで、どうしたの」


 沙子ちゃんがゆずに質問しています。(多分)


 コホン、と咳払いをして、ゆずは説明をすることにしました。


「えーと、最近、選挙あったじゃないですか?」


「ああ、参議院のだね!」


「あ、違います違います、そっちの真面目な方の選挙の話じゃないです。現実世界の概念をこちらに持ち込まないでください」


「ごめん……」


 天音さんがしょぼんとします。それでも仕方ありません。大事なことなんです。


 ここはどの世界観とも切り離された場所、夢の世界なんですから。


「でも、じゃあ、なんの選挙?」


 吾妻さんが腕を組んで訊いてきます。おお、なんというか、腕を組むと重量感がありますね……。くぅ……。


「みなさんの人気投票です!」


「「「はい」?」」「えぇー、そんなのやったんだぁー! 楽しみぃー!」


 英里奈さんだけマイペースですね……。


「ということで、その結果を発表したいと思います! 票数は108票! 煩悩ぼんのうの数と一緒ですね! たくさんのご応募、本当に本当にありがとうございます!」


「え、ちょっと、何勝手にそんなことしてんの!?」


 吾妻さんが驚いています。まあ、驚くのも無理ないですね……。


 ですが相手をしてる暇はないので無視です。


 茶番はともかく、結果発表です! 刮目かつもくしてください!


「それではまず、第4位……11票、英里奈さん!」


「「「……」」!?」


「え、えりなぁ!? 一番下ってことぉ!?」


 英里奈さんが目を見開きます。


「あ、いえ、もっと下には、2票のゆずとか、どなたかがあとから登録した1票のたっくんもいます。ちなみに、ゆずと敬語キャラがかぶっていて扱いづらい人とか、ピアノ上手い幽霊みたいな人とかは0票です、0票! まあ、でも四天王してんのうの中では一番下ですね」


「ぐっさぁー……ささったよぉー……ゆずちゃん、なんとかしてよぉー」


「ゆずにはどうにも出来ません」


 過ぎたことをどうしろというのでしょうかこの人は……。


「英里奈ちゃん、トップだと思ってた……」「うちも……」「あたしもだわ……」


「ゆずもそう思ってました。感想欄でやたら人気なんですよね、英里奈さん。狭く深く愛されているんですね! ナイスです!」


「うぅーん……、そうかなぁ……」


 しょんぼりしてます。仕方ないですね。


「はいはい次行きまーす。続いては第3位……17票、沙子ちゃん!」


「うち、そんなに票もらえたんだ……。あんなにひどいことしたのに……」


 沙子ちゃんが口に手を当てて驚いてます。アカデミー賞とったみたいな反応ですが、3位です。


「大富豪ではいつも大貧乳のくせにぃー……」


「は?」


「なんでもないですぅー」


 4位の英里奈さんが口をとんがらせてますが、無視です。


「えーっと、幼馴染属性が勝ちにつながったんでしょうか? 例の事件からのリカバーが良かったんでしょうか?」


「どうだろ」


 相変わらずクールですが、口角が0.数ミリ上がっています。


 沙子ちゃん表情マイスターは何もたっくんだけじゃないんです。


「それでは次です。2位は……35票、天音さん! 沙子ちゃんのダブルスコアですね!」


「あ、私、2位なんだ?」


「……なに、不満なの」


 沙子ちゃんがギロッと天音さんをにらみました。


「い、いや、そういうことじゃないです、ごめん。ごめんって、ほっぺを引っ張らないで沙子さん! 痛いよ! なんで? ここ夢の世界なんじゃないの!?」


 沙子ちゃんと天音さんがじゃれあっています。


 それにしても、夢の中で実際にほっぺを引っ張ったことのある人なんているのかな? 多分いないしつねったり痛いと思うけど……。


「ってことは、つまり……?」


 ふと見ると、吾妻さんが目を見開いて、自分を指差してます。


「はい! 1位は、42票、吾妻さんです!」


「え、まじ?」


「大マジです! 『ヒロインの風格なし』『ただのamaneオタク』など、第2曲目開始時はほぼ確実に最下位だった吾妻さんが、なんと逆転トップです!」


「わー、由莉、おめでとうー!!」


 さすが天使さん、親友の一位を素直に喜んであげてます。


 ……それに引き換え、三位と四位は……。


「……時期の問題じゃないの」


「え、なんですか? 3子さこちゃん?」


「たしかに、選挙はゆりが目立ってた時期にやってたみたいだもんねぇー?」


最下位えりなさん、うるさいです」


「そのルビはさすがに無理があるよぉー!!」


 英里奈さんが涙目で抗議をしてきますが、知りません。ポカポカポカポカと叩いてきますが無視です……いや、痛いなぁ!!


「ということで、1位の吾妻さんには賞品として、『旅行券』を贈ります!」


「りょ、旅行券?」


 吾妻さんがほけーっと首をかしげます。


「『時系列や世界観とまったく切り離された世界』で、『たっくんと二人で旅行に』行ってもらいます!」


「「「はあ!?」」」「えぇー、えりなも行きたぁーい」


 あらあら、沙子ちゃんの語尾にも『!?』ついてますね。


 最下位えりなさんは相変わらずマイペースに駄々をこねています。


「あたし……行くの……小沼と旅行に?」


「はい! あ、もう一度言いますけど、『時系列や世界観とまったく切り離された世界』ですからね! 本編に持ち込まないでくださいね!」


「あ、うん、分かったけど……」


 相変わらず戸惑ったままのおねえさんです。


「吾妻ねえさん、嬉しくないんですか?」


「嬉しい、けど……」


「「「嬉しいんだ」!?」」


 嬉しいらしいです。よかったよかった。


 ということで、近々、そんな旅行譚りょこうたんが見られるかと思います! 乞うご期待です!


 改めまして、投票してくださった108人のみなさま、本当に本当にありがとうございましたー!


 ゆずに入れてくれた2人の方、本当に本当に本当にありがとうございましたー! 次にゆずが出られるのがいつか全然わかりませんが、引き続き応援よろしくお願いします!


 それでは、また本編でお会いしましょう! さよなら!


「え、ゆりすけ、一緒にいこうよ」


「あー、えーっと……ごめん……」


「由莉、私は……?」


「うん、ごめん……」


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