第2曲目 第21小節目:Teardrops On My Guitar
* * *
自分が中学一年生の時です。
自分には2人、尊敬する『天才』がいました。
1人は、amaneさん。
もう1人は、
amaneさんは、小沼先輩ももちろんご存知の、天音部長のシンガーソングライター時代のお名前ですね。
当時からインターネットの世界の住人だった自分は、ネットパトロールをしているときにamaneさんの『わたしのうた』にYouTube上で出逢いました。ミュージックビデオというよりは、ジャケット写真に音が流れるだけの動画でしたが。
今でもあの時の衝撃は覚えています! 『こんなに素晴らしい曲を作る方がいらっしゃるのか、それもたった一歳しか違わないのに!』と……。
CDを買って、何回もリピート再生しながら、amaneさんの歌詞やらプロフィールやらを検索していた時、とあるブログに行き当たったのです。
そのブログの名前は『あたしの
『歌詞』と書いて『うた』と読ませるあたりも、中学一年生の自分の琴線に触れまくりでした。今思うとちょっと中二病って感じもしますけどね!
『あたしの
そのブログの管理人さんというか執筆者さんが、
毎日3作ほど上がってくる瑠衣さんのポエムに、自分は
amaneさんのように哲学を語るような歌詞も大好きなのですが、瑠衣さんの言葉は日々の何気ないちょっとした感情にフォーカスして表現されて、共感性がものすごかったのです!
読んでいるだけで音楽が流れてくるようで、自分は文字しか読んでいませんが、やっぱりこれは歌詞なのだなあーと毎日感動していました。
それから半年後くらいですかね。
小沼先輩もご存知だと思いますが、amaneさんが活動休止を発表しました。
世間的には突然だった活動休止ですが、自分は実はその予兆を感じていたのです。
というのも、何度も申し上げてしまって恐縮なのですが、自分はネットパトロールが趣味ですので……。
活動休止までは、amaneさんも公式マークこそついていなかったものの、Twitterのアカウントを持っていて、ちょこちょこツイートを発信していたのです。
ですが、活動休止発表前のちょっと前に、パタリとその更新が
なんでだろう、と思った自分は、Twitterで検索をかけてみました。
すると、少し前にamaneさんをひどく言うツイートがいくつかつぶやかれていたのです。
今でも忘れません。『こんなやつが天才なわけない』『YUIのパクり』『こんな曲、この世界に生まれなければ良かったのに』……。
ああ、今言っていても腹立たしいです!
もしこれをつぶやいたご本人がいらっしゃったらすぐさま処刑です! 許せません!
……と、こんなこと、先輩に言っても仕方ないですね。先輩がそのツイートの主をご存知ってわけでもないのに。
とにかく、本当のことは分からないのですが、自分は、このひどいツイートがamaneさんの活動休止の理由なんじゃないかと踏んでいるのです。
あ、もちろん、どちらにせよこんなことを思い出させるような
amaneさんの活動休止と、その
それまでは基本的に毎日3つくらい、日常への憧れとか前向きなことを
その一文は、
『つららみたいにするどい言葉で、本当のアイスみたいに脳が凍りついた。書くのが怖いよ。』
というものでした。
小沼先輩には分からないと思うのですが、この言葉は、瑠衣さんの歌詞としては、ありえなかったのです。
一瞬、自分は、瑠衣さんの書いた言葉ではないのではないかとすら思いました。
毎日読んでいると分かるのですが、瑠衣さんは、『詞は文章ではない』ということをすごく意識されていたのです。例えば、文末に『。』を付けることは一回もありませんでした。
そんな普段の歌詞から考えると、この日の作品は、もはや『文章』だったのです。
翌日からも歌詞のアップは再開されましたが、それ以来の瑠衣さんの作品は、どこか少し控えめと言うか、何かから隠れるような、誰かに見つかることを怖がったような歌詞になってしまいました。
相変わらず素敵なのですが、キラメキみたいなものが、少し、
自分は、再び
瑠衣さんに『つららみたいにするどい言葉』を突き刺した人がいるはずで、その人を許せない、と思いました。
人の作ったものを無遠慮な言葉でバカにする人がいるせいで、大好きな天才さんたちが実力を充分に発揮できないのです!
そんな言葉に負ける方が悪いって言う人もいるかもしれませんが、自分は、自分の大好きな作品が生まれづらくなるそのことが許せません。
自分は、才能のある人が、その才能を発揮できる世の中になるべきだと思うのです!
* * *
「なるほど……」
平良ちゃんの話に、おれは
とりあえず、ここに沙子がいなくて良かった……。
「なので、自分は、吾妻部長が許せないのですよ。最終日の合奏に出られないと言われたら殴り込みに行くところでした! ……いや、自分はビビりなので実際にはそんなこと出来ないのですが……」
えへへ、と情けなさそうに平良ちゃんが笑う。
「あとあと、自分は小沼先輩のこと、とってもとっても
「いや、あれはおれだけがどうっていうか……」
おれが言いよどんでいると、
「あ、もちろん
無邪気に笑いかけてくる平良ちゃんの笑顔がまぶしくて、おれはもはや浄化されそうになるのであった。
沙子ちゃん、どうしようかあ……。
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