第36話

 食事の後はお風呂の時間。

 転生者達は、うちの近所の連中とは少し違って、そこまでは臭くない。水浴びとかは欠かさないんだろうね。

 うちのお風呂は、初期の五右衛門風呂に毛が生えたような風呂ではなく、今はかけ流しの温泉もどきに進化している! もどきってなんぞや? と問われれば、天然温泉ではないからだ! と、説明できる。

 地下から湧くお湯を温泉と称するなら温泉なんだろうけど、これ、人工的なのよね。

 残念ながら、このテーブルマウンテンのような土地が連なる辺境の地では、温泉は湧いていなかった。水資源は比較的豊富なんだけどな。

 この土地そのものが、地上よりも遥かに上空に突き出した出っ張りで、柔らかい地盤は風化で削られ、硬い地盤が残ってるようなモノなんで、それなりに安定してて火山とかが無いからなんだろうけども。

 もどき温泉は、地魔法で周囲の岩盤から地下水脈を動かし、岩盤を捏ねることでマグマを擬似的に発生させることで温水化をし、それをうちのお風呂場に繋いでいる。ここまでしたら温泉で良いんじゃ? とか思われるだろうけど、薬効成分とか正直判らん。普通に飲用可能な地下水を、強制的に温めてるだけだし。ちなみに金属臭が僅かにするんで飲用はオススメしない。


 転生者達は『うおぉぉぉぉ! 温泉だ温泉!』とか『温泉はやっぱ良いですね!』とか言ってるが、スマン、それ『もどき』なんや・・・・・・。冷泉を沸かし直して天然温泉と言ってるようなものなんや・・・・・・。間違いじゃないけど、胸を張れるようなものじゃないわな。


 ムスルは、家を出た時に比べてかなりガッシリとはしてるが、小人族の不思議である『筋肉がつかない』体質をしてるため、プニッとした幼児体型のままだ。この体型であんな力を発揮できるのは小人族の人体の不思議でもある。

 ちなみに俺は、顔だけは童顔な男の子だが、首から下はゴリゴリのムキムキマッチョである。能力の限界突破は、身体にもその影響が出るようだ。小人族の基準からは大きく逸脱してるのがその要因かね? 

 プニッとした身体つきのムスルの嫉妬な目線が痛い! 判らなくもないよ? そのプニッとした身体がからかいの対象になるってのは。男二人に聞いたところ、最初は女の子だと思ってたそうだし。

 湯船の向こうに見えるムスルは、股間のプルプルを隠すと超絶な美少女にしか見えんしなぁ。普人族の2人もそんなムスルの姿に、のぼせ上がってるみたいだし、我が弟ながら罪作りな野郎だぜ。

 立ち上がれば、股間のブツがプルプルしてるから一目瞭然なんだけどな。

 それにしても『温泉は良い』『温泉に毎日入れるとは羨ましい』とかと連呼するのは止めてほしいものだ。

 湯上がり美女と変貌した、変た・・・・・・シャーリーさんにも『いい湯でした。ここで温泉に入れるとは思わなかったです。ありがとうございました』とか言われたら、どう返して良いものやら。スマぬスマぬ・・・・・・。


 俺にとっては気まずいお風呂タイムも終わり、後は就寝するだけだ。夜空の見える客間にムスルのパーティメンバーを突っ込み、久しぶりに弟妹たちと一緒に寝る。ニルスも、久しぶりのムスルに興奮気味だ。

 なんやかんやと話も弾み、その日は夜遅くまで話し込むのであった。

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