第33話

 俺は今、巨大な卵を目の前にしている。大きさは俺の身長と同じくらい。背負紐に包まれてるが、その卵の表面がなんかプニョっとしていて、鳥の卵とは大違いだ! 

 某狩りゲーでは龍種の卵は鶏卵みたいな卵殻で、しっかりとしたイメージだったんだが・・・・・・なんか萎えたわ~。もういいわ~。そもそも、爬虫類の卵って美味いのか? ってな素朴な疑問が。

 まぁ良い、カレーもどきを煮込んでたからアレを食うか。いい加減腹も減ったしな。しかし、よくこんなプニョっとした卵を運ぶ気になったもんだ。割れるとか裂けるとか気にしなかったんだろうか? それとも、そんなのを気にもできないくらい切羽詰まってたとかか?

 まぁいい、用はなさずに終わったが、こんな辺境まで着てくれたんだ。何も食わさずに返すほど、俺も鬼じゃない。まだまだ未完成なカレーもどきで悪いが、食ってもらうとするか。わずかに香るカレーっぽい香りに、タカシとやらがソワソワしてるし。まぁ、気持ちは判らんでもないよ。この香りが気になる時点で、アレなのは確定だがな。



 厨房に向かうと、鍋の前で2匹と一人が言い争いをしていた。


「味見とか無理にゃ! お前ら、味見と言いにゃがらガッツリ食うつもりにゃろ!? あちしはそれで大変にゃ目にあったにゃ!」

「バレやしないよ! チョットくらい。それにこ~んないい匂いがするのに我慢するとか、あったまオッカシイんじゃないの?」

「そ~にゃそ~にゃ」

「頭オカシイにょはお前らにゃ! あちしがどんにゃ目にあったか知らにゃいからそんにゃ事が言えるにゃ! あちしとおにゃじく匂いだけで我慢するにゃ!」

「匂いじゃ腹は膨れないじゃん! 少しくらいならバレないって! あんなデカブツ、いくら親分でもまだまだかかるよ。煮込んでる間に蒸発したことにすれば良いじゃん!」

「そ~にゃそ~にゃ」

「アフォかおみゃえら! そんにゃすぐバレるようにゃ嘘が通用すると思ってるにょかにゃ! バレたらお仕置きにゃよ! あにょ身にょ毛もよだつようにゃお仕置きを受けるくらいにゃらお前らを排除してやるにゃ! お前らがあちしに勝てると思っているにょかにゃ!?」

「そっちこそ俺様達に勝てると思ってるの? こっちは二人だぜ!?」

「そ~にゃそ~にゃ」

「にゃはははは! 反対に聞きたいにゃ! あちしはマスターにょ師匠にゃよ? そんにゃあちしに勝てると思ってるにょかにゃ?」


 フシャーッ! とかフニャー! とかやりあってるが、まぁ、アレだ。クレスが意外と頑張ってるなぁ。あいつも俺と出会う前は普通に薄味料理を食ってたはずなんだがな。狩った直後の、適当に焼いただけの血なまぐさい肉とかをな。舌が肥えるってのは、良い事ばかりじゃないよなぁ。

 後、テオロス、あいつ適当な同意しかしてないのは、いざとなったら言い逃れをするつもりか? 自分は賛同してただけでつまみ食いをしようとしてなかった、アゲロに流されただけなんだ・・・・・・とかなんとかで。あいつ、結構計算高いんだよな。いざとなると相棒を見捨てる程度には。あいつ、実は猫じゃなく狐なんじゃねぇの? 狐からしてみたら風評被害だろうが、そこはそれ、イメージというやつでな。


 おい、そこの手の上げ下げコンビ。つまらんやり取りしてないでさっさと帰れ。それとも、一発ぶちかまされたいか? クレス、よくやったな。言いつけを守るとは、お前を見直したぞ。


「と~ぜんにゃ。もっと褒めてくれても良いにゃよ。ついでににゃでると良いにゃ。そ~にゃそれが良いにゃ」


 上げ下げコンビは、俺には勝てないと認識してるので、目をそらすだけだ。クレスにはご褒美にナデナデをしてやる。しかも全身をだ! ふはははは、存分に悶えるが良い! 俺にとってもご褒美だがな!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る