第28話

 うん、大きい。

 顔がグレートリザードとは違い、なんだかトゲトゲしてるし、体表もゴツゴツしてて岩のようだ。


「へっ! 食いでのありそうな肉だぜ!」


 向こうはこっちを認識してない模様。うん、縮尺が違いすぎるからな。俺も足元にいる小さな虫とか気にもとめないし。踏むと臭い汁を出す虫とかは流石に避けるけど。

 こっちを気にしないならば、先手必勝、初見必殺あるのみ。

 俺は魔力を集めると、両手をパンと合わせ魔法の発動をする。手合わせ錬成、ならぬ手合わせ発動だな。実際は手を合わせなくても発動できるが、様式美というやつだ。・・・・・・いいじゃねぇか、好きなんだよ! あの作品。

 地面からやたらと硬く加工しづらい金属塊を吸い上げ、身体にまとわせる。正直な話、俺には鎧とかは必要ない。鍛え抜かれた肉体そのものが鎧みたいなものだし、地面さえあるなら好きなようにできるからな。

 身体にまとわせた金属を魔力で無理やり錬成し、右肘に大きなナタともオノとも言える分厚い金属の刃を形成する。大きく踏み込み、一瞬でトップスピードに乗ると、巨大なトカゲの右足に狙いを定め、当てる瞬間に震脚もどきで大きく地面を踏み込む。踏み込むことで上向きにかかった力を重心移動で斜め下へ変換し、威力を幾倍にも跳ね上げる。


 ズガンッ! 


 という音と共に巨大な右足首を半ばまで穿つ。


「チッ! かってぇ~、なっ!」


 前方に向いた力を重心移動で変換し、足首できた傷口に肩からぶつかり威力を吹き抜けさせる。


ボグンッ!


 この連撃には耐えられなかったのか、ようやく骨を砕けたようだ。グラッとトカゲの身体が右に傾くが、まだコレじゃ足らねぇ。体当りした反動を使い、そのまま左足首に攻撃を加える。肘に形成していた刃物を両手に集め、巨大で野太い破城槌のような形にする。


「ハァッ!!」


 大きく息を吐きだし、気合と共に震脚で威力をかさ増しする。全身全霊の破城槌付きの双掌打に、『ボグン』とくぐもった音とともに左足首の骨が皮膚を突き破り露出する。


『グオオオオォォォォォォッッ!』


 腹の底から轟くような声をオオトカゲはあげたが、4つ足のケモノが両前足を攻撃されたら間違いなく覗き込む。正に今が好機。

  

  ズダン! と、その場に陥没痕を残し、右腕に金属塊を移動させ、巨大なハンマーヘッドを形成し、そのまま覗き込もうとしたトカゲの顎をかち上げる。

 

 ガインッ! 


 まるで金属で金属を殴りつけた様な硬質な音が周囲に響き渡り、かち上げられた方向に首が伸び上がる。

 両足で地面を思い切り踏み込み、その場からロケットのように跳躍をする。

 こいつには刃物は効きづらい。だが、衝撃はよく徹る。


「ソイヤァッ!」


 右手の金属塊を両手に集め、先程よりかは幅広な破城槌を形成し、トカゲの伸び切った首に叩きつけた。


 ゴクンッ! 


 関節と関節が外れるような音と共に、破城槌もどきを叩きつけたトカゲの首の部分から上の力が抜ける。

 叩きつけた反動を利用し、すばやく地面に降り立つと、もう一度、ロケット噴射のような勢いで飛び立つ。今度は右膝に形成した破城槌もどきで、コメカミに相当する部分を蹴り上げ、間髪入れずに両手に形成したハンマーで脳天を叩きつける。


「フンヌッ!」


 パンッ!


 と、言う音と共に、目や鼻、耳から少し青みがかった液体が吹き出るのが見て取れた。後は危なげなく着地するだけだ。

 2方向からの頭部への圧倒的な衝撃。この攻撃法は、相手を問わず効果的だな。

 コレで仕留められなかったナマモノは、今のところは存在しない。


 うん。首をへし折られ、脳が破裂すれば、大抵のやつが死ぬだろう。

 ふぅ、ただのトカゲとは言え、こんだけでかいと倒すのにも苦労するよな。

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