第27話
「グレートリザードくらいお前たちでも対処できるだろうに」
こいつらはこう見えても俺の門下生。タクル流魔闘術の免許皆伝持ち。昔送り出したムスルと同じくらいには強い。
今はムスルのが強いだろうけどな。あれから結構月日が経ったし。
「いんや、もっとも~っとでかいんだぜ。親分」
「そうにゃ! もっとできゃ~にゃ! オヤビン」
さっきから、大きいトカゲ以上の情報が出てこない。身体は鍛えられたが脳の発達がいまいちなのは、俺の教育の仕方が悪かったかな? と、少し頭を抱えた。
「あ~、わかった、わかった。俺が悪かった。直接見て確認するよ」
大鍋をひょいと、ごく弱火くらいになった発熱プレートの上に移動させる。
「そうだ、親分! 鍋の様子は見といてやるぜ!」
「そうにゃ、鍋の様子は任せるにゃ!」
あほか! お前らに任せたら鍋の中身が減るどころか無くなるわ!
「鍋はどうでも良い。ほら、お前らも行くぞ。クレス~! ちょいと出てくる~。鍋の様子は見といてな~!」
俺がそう言うと、奥の方から『わかったにゃ~』とかいう返事が聞こえてくる。多分つまみ食いはしないはずだ。前にやった時、しばらく食事制限をしてやったからな。同じ過ちはしないと思いたい。
前にやったのは、つまみ食いをした上で、水で薄めるという暴挙に出たからな。アレは許せねぇ。しばらく、超薄味の食事しか出さなかったのは、相当堪えたように思えたしな。
鍋の方は問題ないだろう。俺は一人と一匹を、追い立てるように厨房を後にする。まったく、厨房を汚い格好で汚すとは。トニ〇さんの厨房でやったら石鹸で頭をかち割られるぞ?
家の外に出て遠くを見ると、確かに大きなトカゲがこっちに向かって歩いてきてる。距離的には十数㎞は向こうかね。縮尺がおかしくなったかのように足元の木をなぎ倒している。あそこに見える木が、すぐそばに生えてる木と同じくらいの高さだとしたら、体高は3~40メートルくらいだろうか? 普通のグレートリザードの体高が5から10メートルくらいだとすれば、確かにでかいな。
「おぉ~、確かにでかいな」
「だから言ったじゃないか」
「そ~にゃ、言ったにゃ」
うん、確かにコイツらじゃ相手は無理だわな。
しっかしま~、食いでがありそうな巨大な肉だ。あれだけで数か月分の肉にはなりそうだ。なんだかんだでここの集落も人が増えてるからなぁ。肉はこっちで確保して、鱗とかそういうのはたまに来る行商人に売り払い、そのお金で足りない調味料や香辛料を買い揃える・・・・・・ドュフフフ、夢と期待感が膨らむな。ここは超絶な田舎だから、そういう面では困るんだよな。
「よし。んじゃま、ちょちょっと狩ってくるわ」
「任せたよ親分」
「まかせたにゃ~」
ズダン! と大きな音を立て、その場で地面が軽く陥没するくらいに大きく踏み込み、2、3歩で一気にトップスピードに乗る。うん、この身体もよく鍛えられてきたもんだ。時速換算で数百キロくらい出てるんじゃないかね?
ダン、ダン、ダンと、強く踏み込むたびに地面がえぐれ砕けて行く。さすがにこのちっこい身体で岩とか大木にぶち当たると痛いしな。避けられるなら避けないと。
暫くそんな調子で駆けていくと、大きなトカゲの全容が見えてきた。
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