第23話
ムスルが出立するに当たり、装備はこの辺境で整えられる最上のものにした。
上半身はジャケット、下半身は足首まである革のパンツ。柔らかいシカのような動物のなめし革を下地に使い、巨大なイノシシのような獣の発情期に硬化する毛皮の部分を、背中と肩と膝、そして手甲部分に仕込み、その上から柔らかいユキヒョウもどきの革で覆う。見た目はパリッとした感じのユキヒョウ柄のジャケットと、落ち着いた色合いのシカ模様のパンツだ。靴は底を比較的柔らかく、それでいて摩耗しにくい、前世では見たことがない金属で作り、内側にユキヒョウもどきの革、甲の部分に硬化したイノシシもどきの革を貼り付け、スネまでをウマのような魔物の革で覆う。パンツと合わせれば、ゴミが靴に入らないよう重なり合わせて仕立ててある。
俺の土魔法もかなり上達したようで、地面をスキャンし、任意の金属を手元に引き寄せられるようになった。金も銀も白金も、思いのまま寄せられるぜ。前世じゃ、見たことも聞いたこともない金属が混ざってるけど、これは何なんだろうなぁ?
装備を整えた後は軍資金の用意だ。純度の高い金をアンクルウェイトやリストウェイトに仕込み、冒険者ギルドに付くまでは外さないように厳命する。ギルドに付いたらそこの受付で換金してもらうように言い含める。なにせ田舎者だから、貴金属に関しての知識がまったくないからな。金を見せたときもうちの弟妹は『なんかキラキラしてて綺麗だね~』とかのんきなことを言っていた。クレスとアレスは、俺が自由に貴金属を地面から持ち出してることに驚愕した上に物欲しそうな目をしていたが。
なのでアレスにもそれなりの量を渡しておく。裏切られたら困るからな。クレス? こんな田舎の山奥では使い道がないからな。それでも、欲しがる分だけ与えてはいるが。金をコイン状に固めたものに埋もれて『うにゃ~うにゃ~』言ってるが、よくわからん趣味だよな。辺境の山奥では食料が最優先、貴金属など漬物石にするくらいしか用途はない。
あぁ、そうそう、金の塊の漬物石はよく漬かるぞ。あれは良いものだ。腐食もほぼしないから衛生的だし。
魔物の革製の3重底仕様のリュックサックも準備し、軽いけど量の少ない下着類は一番下、重い食料を2番目、重量は色々な雑品を一番上に詰めるようにも教え込んだ。雨の降る中、濡れた下着を着ていたんじゃモチベーションも下がるからな。乾燥した下着類は重要。寒い山の上では、下着が一番重要だからなぁ。
これらの装備品はニルスのお手製だ。完全とはいかないが、ほぼ防水機能もあるよくわからん獣の革が、その素材だ。
縫製の知識は俺が与え、技術を磨いてきた。治療もできて、俺ほどじゃないがそこそこ料理もでき、裁縫関係も完璧。うん、いつ嫁に出しても大丈夫だ。こんな山の中に来る婿は居ないだろうしな。うん? 同族ならあり得るのか? でも、不潔な奴に妹を嫁にはやらん。
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