第22話
免許皆伝だ!
「めんきょかいでん?」
ムスルは、なんのこっちゃ? みたいな顔をしてるが、まぁ、意味を知らなきゃワケワカラン言葉に聞こえることだろう。
タクル流魔闘術を修めたと、俺が認定してやる。
タクル流魔闘術とは、俺が前世の記憶から抜き出した格ゲーの技の詰合せである。有り余る身体能力と魔法で無理やり再現した技の数々。再現度はかなり高いはず。『しょうろうけん』『たちまちせんぷうきやく』『はろうけん』などなど、知ってる人からしたらニヤリとするような技の数々だ。あのポンコツなカミサン、結構あの世界から人を送り込んでるようだからな。2番めのやつはネタだな。とりあえずこの手の技名を出す時は、低く唸るようにそして早口で発するようにと教えてある。空耳なんちゃらってやつだな。あの世界の人間なら『おや?』と思うことだろう。強いやつに会いに行く? んな面倒なことができるかっつ~の。ムスルが活躍すれば、そのうちにあの世界からのチート持ちが俺の下に来るだろう。与えられたチートが強いのか、それとも地道に鍛えたやつのほうが強いのか・・・・・・フッフッフ、とくと確かめてやるぜ!
技の再現度もそれなりに仕込んである。『しょうろうけん』は拳に風の魔法をまとわせ、その上に火の魔法をコーティング。火傷と風による裂傷と拳による打撲の三段攻撃。『たちまちせんぷうきやく』は。足首、ふくらはぎ、内もも、腰か脇腹、最後に首かこめかみを、回し蹴りを繰り返しながら打ち据える蹴り技だ。首までの打撃は、斜め下に力を加えることで吹き飛ばさず、最後の蹴りで斜め上方向に加力することで吹き飛ばす。『はろうけん』は、圧縮した火というよりも炎の魔法を風の魔法でさらに圧縮コーティング、その上から派手に見えるように火の魔法で覆ってある。着弾すると、表面の火が火傷を起こし、その下の風が表皮や装備をえぐり、そのえぐった箇所に圧縮した炎がはじけ飛ぶ仕様だ。ちなみに、火の魔法の才能がない俺は、溶岩弾を飛ばす技となっているが。
こんな魔法と格闘術を混ぜ込んだネタ武術がタクル流魔闘術である。自爆した場合も考えてある。あのユキヒョウに似た魔物は、何故か魔法の効果を一切通さない謎素材なので、その毛皮で道着を作ってある。魔闘術の内情が魔法と気づかれ、効果を反射されてもムスルに被害が及ぶことはない。
「おう。平たく言や~、もう一人前ってことだ。都会に出るなり冒険者になるなり問題ない」
「でも、僕はまだにぃさんにも勝てないのに?」
「俺の目標は神の頂に到達することだ。お前はそこまで鍛えたいのか? 冒険者になるのであれば今のお前でも過分なくらいだぞ?」
「でも僕はまだまだ弱いよ?」
小首をかしげながら言う姿は、兄、いや男として見てもとても可愛い。
「お前な、父上様と比べたらお前のほうがず~っと強いんだぞ。それにさらなる高みを知るためには、色んなやつの戦い方を見てきたほうが良い」
俺は前世の無駄な知識があるからそこは補えるが、ムスルにはその経験がないからなぁ。
お供にアレスをつけてやるから。
と言うと
「わかった! 頑張ってくるよ!」
と、快諾された。本気でBL的な関係になってないよな? と、少し心配。弟の人生は弟のものだから口は挟まないが。
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