第19話
季節はめぐり、冬が近づいてきた。
クレスも実家での用事を終え、我が家へ来ることになったらしい。先触れのケットシーがそう言っていた。なんかケモノ臭かったので、当然のように風呂へ漬け込む。基本的能力は圧倒的に俺のほうが上。抵抗は無駄だよ、わっはっは。
『にゃ~にゃ~』と何やら叫んでいたが、食事を与えたら急におとなしくなった。うん、餌付けは大事だよな。
実家はクレスに代わり、ケットシーが二人滞在するらしい。寒い冬に備えてのことだろう。正直な話、ケットシーの居ない冬とか考えられない。それくらいにアイツらは暖かさを提供してくれる。
我が家にやってきたクレスは、クレスよりも小さなケットシーを連れていた。いつの間に子供を生んだんだろう? と、問いかけてみると。
「ちがうにゃ! こにょ子は知り合いにょ子にゃ! あちしはマスター一筋にゃ!! ほら、挨拶するにょにゃ!」
「は、はじめましてにょ。わ、わ、わたいはタルマにょ。こ、こんごともよろしくにょ」
うん。語尾が少し気になるが、なんかホッコリした感じがしてこれはこれでいいな。子猫なケットシーも可愛くて良い。でも、ケモノ臭いのでクレスと一緒に風呂に漬ける。クレスは少々雑でも良いが、タルマは初体験。優しく優しく洗い上げて、溺れないように少し浅くなった部分に優しく湯船につけてあげる。うん。♀だな。はははは、ここか? ここがええのんかぁ? 人生初のお風呂だろうからな。お風呂嫌いにならないように、慎重かつ気持ち良くなるように最善を尽くす。え? 敏感な部分にはそりゃ触れるだろう? これは狙ってやってるんじゃない。洗う上で必要な措置だし、不可抗力というものだよ。うん。ピクンピクンしつつ『にょふ・・・・・・にょふ・・・・・・』と息も絶え絶えだ。
「にゃ、にゃんか、あちしにょ初めてと扱いが違うんにゃけど?」
当たり前だろう? 幼子は慈しむべきだ。お前は立派なオトナ。扱いが違うのは当然だろう?
「にゃ、にゃっとくいかにゃいにゃ! あちしにょ方がマスターと一緒が長いにゃ!」
声が響くから風呂場で叫ぶなよ。俺との関係が長いんだから新人を優先するのは当然だろう? それにそんな嫉妬することもないだろう?
これからはずっと一緒なんだからな。と言うと
「にゃふふふ」
とか言いながら湯船に沈んでいった。
さて、タルマがのぼせないうちに風呂からあげないとな。
タルマを綺麗に拭き上げ、香油はどれが良いか選ばせると、俺と同じミント系の香りを選んだようだ。
憂いやつよ憂いやつよ、と、木櫛で耳の先から尻尾の先までくしけずり、香りを優しく浸透させてあげる。
よし、綺麗になったねと、頭を優しくなでてあげた。
うつむいてモジモジしてるの、可愛い。とてもホッコリした気分だ。
「にゃんかずるいにゃ。にゃんかずるいにゃぁぁぁ! あちしは頑張ったにゃ! マスターにょ家にょ改善を必死で頑張ったにゃあぁぁぁっ!! あちしもご褒美がほっしぃにゃぁぁぁぁぁ!!」
些細なことでうるさいなコイツは。
はいはい、おつかれさん。と、頭をなでてやるとおとなしくなった。うん、ちょろすぎるわコイツ。
ちなみに先触れできたケットシーは、アレックスと言い♂だった。コイツもなんだか知らないが、うちに居候するらしい。こいつも冬場の抱き枕要員だな、冬場は寒いからちょうどいい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます