第14話
今世初のお肉は、大変美味しゅうございました。
鶏肉を石包丁で切り分け、串にさし、普段から持ち歩いてる岩塩(塩分補給用)を削りかけ、塩焼き鳥を作り上げた。熱源はもちろん熱した石板。遠赤外線効果で中までふっくらジューシーに仕上がったと自負できる。野鳥なため肉が少し硬いが、石で軽く叩いて筋切りをすれば問題ない。
焼き加減もバッチリで、普段から肉を食べなれてる様子のクレスも、この絶妙な塩加減と火加減にはびっくりしたようで『うみゃ~うみゃ~』とか言って貪り食っていた。
肉食効果でまったりとしてると、後ろからクレスが抱き着いてきた。
「食欲を満たしたからには次にくるもにょは分かるにゃ?」
前世ならわかったが、今世の俺はまだ子供。うん、子供だからわかんないや。
「食休みかな?」
俺は穢れなきまなこでそう見つめ返すと
「にゃ、にゃんでもにゃいにゃ!」
とか慌てていた。うん、純真そうな子供の視線って堪えるよね。そう『純真そうな』な。これ大事。俺は正直、純真さは欠片もないだろうしなぁ。
さて、食休みも終えたし、余った鶏肉を持ち帰るため、適当な蔦を肉に通し、そのまま手提げで我が家へ帰る。
なぜかクレスもついて来ようとするので問いただすと
「にゃ? マスターについていくにょは当然にゃ! あちしを養ってくれるんじゃにゃいにょかにゃ?」
「お前は自活できるだろうに」
「自分で作るご飯よりも、誰かに世話されたご飯にょ方が美味しいにょにゃ!」
とかダメ人間っぽいことを言っていた。いや駄目猫、駄猫か。
「お前は刃物とか使えんの?」
俺は腰につけた石包丁、っても、硬質な岩を削りだしたセラミック包丁ともいえる切れ味の代物なのだが。その石包丁を見せながら聞いてみた。
「お前じゃにゃく、にゃまえで呼んで欲しいにゃ! あちしにょにゃまえはクレスにゃにょ。さっきの質問にゃけど、あちしはこにょ身体が武器にゃにょにゃ!」
とか言いながらクネクネと身体を見せつけながら視線誘導術を使ってくるが、ケモノの魅力はそのモフモフさ。性的魅力なんか感じるわけがない。しかも俺はまだまだ、いたいけなお子様だしな。そもそも、見た目が猫の存在に性的興奮を覚える奴がいたら、それはそれでヤバいだろう?
とかなんとか、掛け合い漫談のようなことをしつつ家に帰宅。クレスのことをどう説明しようと思ったが、餌をあげたらなんかなつかれたので飼って良い? と聞くと、父上様は『そうか』とそれだけ言って気にしてない模様。母上様も『うちもケットシーが来たのね!』と、どことなく喜んでる模様。弟妹達もケモノ臭のない花のような甘い香りのモフモフに群がってる。
あるうぇ~? と一人首をかしげてると母上様が説明してくれた。
なんでも、そこそこ生活の安定した家にはケットシーが住み着くものらしい。夏場の癒し、冬場は暖をとるために。『ケットシーが居たらあの子も命を返さなくて済んだのかもねぇ』とか言われたら、嫌とは言えないわなぁ。冬場の寒さは身に染みて理解してるしな。
そんなこんなで、何となくクレスが家に棲み付いたのであった。
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