第13話

「にゃふ~。んにゃ~、良い香りにゃ。これを知ってしまったからにはもう元には戻れにゃいにゃ。身も心も染められてしまったにょにゃ。もう駄目にゃ。あちしはもうマスターにゃしじゃ生きて行けにゃい身体にされたにょにゃ~。よし、決めたにゃ」


 ん? マスター? 何のことだ?


「あなたにょことにゃぁ。あちしにょ名前はクレス。猫魔にょクレスにゃ。今後ともよろしくにゃぁ」


 ちょちょちょっと待て。いきなりなんだそれは。それに猫魔だと? 二足歩行の猫じゃねぇの?


「ケットシーにゃんて呼ぶ人もいるにゃ。でも、種族的には猫魔にゃにょにゃ。どっちでも好きに呼ぶと良いにょにゃ。マスターは小人族であってるにゃ?」


 俺の種族のことは知らん。家族以外の知性ある生き物にあったのは初めてだしな。


「間違いにゃく小人族だと思うにょにゃ。穴を掘ったりした場所に住んでるにょにゃ?」


 それなら間違い無いんだろうな。実際、俺の家は穴倉だしな。


「そうかにゃ。それにゃらこれからよろしくにゃにょにゃ」


 まてまてまてまて、俺の一存じゃ決められん。食料のこともあるしな。俺はまだお子様なんだよ。決定権は父上様である俺の父親にある。


「食い扶持を稼げばいいにょにゃ? あちしはこれでも強いにょにゃ。鳥肉から獣肉までなんでもござれにゃにょにゃ!」


 何? 肉だと? 思わずじゅるりとよだれが垂れそうになってしまったのは、致し方ない所ではなかろうか? 昆虫は昆虫で旨いけど、俺も成長期、そろそろガッツリとした肉も食いたいと思っていたものだ。


「証拠を見せるにゃ・・・・・・。む、むむ、そこにゃ!」


 そう言い放つと、目の前の大木の幹を蹴り上げ、三角飛びの要領で空高く飛びあがると


「ソニックブームにゃ!」


 二足歩行の猫が、妙に決まったポーズで魔法のようなものを放ち、空中でくるりと宙返りをしてシュタッと目の前に着地してきた。不覚にも少しカッコいいと思ってしまった。

 クレスの後を追うかのように、何かしらのそこそこ大きな物体が近くの草むらに落ちてきた。


「あちしにかかれば空飛ぶ鳥も一撃にゃ! あちしは出来る子にゃにょにゃ。これはマスターに差し上げるにょにゃ。これであちしを迎え入れてくれるにゃ?」


 小首をかしげ、媚びるような目線を向けてきているが、そんなものはどうでも良い! 今は肉だ! にっくだぁっっっ!! 俺にくれたってことはこれは俺の肉だよな! そうだよな! 間違いないよなぁはぁっはっ~!

 ヒャッハーとか言いながら羽をむしる俺の姿に少し引いてるような気配も感じるが、そんなものはどうでも良い。そう、今世初の肉を前にして、そんな些末な事を感じている暇などは、欠片も無いのだよ!

 

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