第12話
うほっ、これは良いモフモフ加減。と、その瞬間には思ったが、そいつはえもいわれぬケモノ臭がして別の意味でうほっと声が出てしまった。
俺は無言でそいつを引きはがすと、無言で普段風呂を用意している水場へと向かった。
「んにゃ? 積極的にゃ~。強引なにょは嫌いじゃにゃいにょにゃ」
とか言ってるが、こんなケモノ臭いナマモノ。モフモフとは認められん。うほっ、動くとケモノ臭が一段とする。俺は足早く風呂のそばに来ると、普段使用している熱源用の岩をつかみ、素早くこねて熱を発生させると、すでに水を張っている湯船に投入。ここ最近は、外に出られるときには毎回風呂に入っているため、熱加減はお手の物だ。
「ん? これはにゃんにゃ? 温かい水かにゃ?」
湯船のそばにしゃがみ込み、パシャパシャと手で水をすくっている二足歩行の猫の背後に回り、股下から抱え上げ、湯船に叩き込んだ。
「ふぎゃ~っ! 溺れるにゃ溺れるにゃっ!」
溺れるような深さじゃない。俺ですら足がつくんだ。大丈夫だ、問題ない。
暴れる猫を風呂に入れるにあたり、俺も脱がないとずぶぬれになるのは必定。それは避けたいので俺も素早く服を脱ぐ。
「うにゃ~! リアルショタにょ裸にゃ! 眼福にゃ! にゃふふふふ」
さっきまで暴れていた猫は、なんか妙におとなしくなり、俺の可愛らしいプルプルしたものを凝視している。これでも前世ではそれなりの経験者、そんな視線にビクともしないぜ。ってか、凝視するなよ。そんなに見られたら揺すっちゃうぞ? ほ~ら、プルプルプルプル。
「にゃは~っ! 揺れてるにゃ! 可愛いにゃ! むしゃぶりつきたいにゃ~っ!!」
まぁ、冗談はさておき、やるべきことをやらないとな。
俺は自家製の石鹸、っても、草木灰を、加熱した植物油に混ぜ込んで練り上げた後に寝かし、花から抽出した香油を混ぜ込んだ半液体タイプの石鹸、を適量とり分け、猫の身体を洗っていく。
「んにゃ? この匂いは!?」
そう、俺の身体は最近この匂いに満たされているのだ。服は相変わらず、少し悪臭を放つぼろきれなので体臭的には基本的にはあんまり変わらないが。
うん、あれだ、家族の目を避けるにはぼろきれを身にまとうのも必要なことなのだ。早く自立してあの家から逃げ出したいからな。乳幼児の時には特には気にならなかったが、父上様と母上様の夜の営みが苦痛なのである。性欲は無いが知識がある分・・・・・・まぁ、アレなんだよアレ。下手に知識などないほうがよかったな。これだと。
俺の香り高い自家製石鹸で洗われてると分かったのか、猫はおとなしくなり洗われるがままだ。うん、風呂に入れてもおとなしい猫とか、理想だな。
うんうん、洗ってるんだから、耳や尻尾を触るのは仕方ないよな。ついでに性別も確認。間違いなく♀のようだ。去勢した♂じゃないことを祈りたい。うん、これは必然なのだ。決して欲望からくるものではなく、純粋な行いなのだ!
「にゃふぅ、にゃふふぅ・・・・・・」
ふっふっふ。前世でモフモフも愛でるために鍛えた我がスペシャルテクニック、存分に酔いしれるがいい!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます