第6話

 ハッと、意識が覚醒したが、ここはどこだろうか? 目も見えず耳も聞こえないが、何となく明るくそしてとても心地よい。

 そこで気が付いた、まだ生まれてないんじゃね? と。

 胎児の状態で意識を得るとか、あのカミサン、とんだポンコツだ。この手のやつなら、生まれてすぐとか、生まれて数年経過してから意識取り戻すんじゃね? とは、思ったが、胎児のままに意識が入っちまったんじゃ仕方ない。

 世の中あきらめが肝心だ。すでに決定した事柄を嘆いても仕方ない。


 そして、何日か何週間か何か月かを、温かく微睡んだ中で過ごすことになった。

 前の人生、働き詰めだったんで良い休暇になったと思っておこう。この世界がどんな世界であれ、生まれてすぐから生存競争が始まるだろうしな。それに、今の環境はとてもいい。ぬるま湯に浸った生活というやつだな。文字通りに。



 しかし、ある日、その運命の日がやってきた。

 この子宮と思われる温かい異世界生活も、ついに終焉を迎えることになったのだ。


 その時の痛みは筆舌に尽くしがたく、思わず『くぁwせdrftgyふじこlp』とか言いながら意識を失ったように思う。実際何を口にしたかは覚えていない。それくらいやばい状況だったとは付け加えておこう。


「泣き声がないぞ」

「あなた、どうすれば・・・・・・」

「こういう時は逆さ吊りにして・・・・・・」

「ひぃ、痛そう・・・・・・」

「あ、そ~れ」


 次に目覚めたときは、逆さ釣りにされ、俺のかわいらしいお尻をペッタンペッタン叩かれているときであった。

その反動で、股間のあたりにプルプルとした感触がある。うん、今世も男の子のようで安心。これで女の子に転生・・・・・・とかになっていたなら、あのポンコツを呪い殺そうと世界中の文献をあさる羽目になっていたことだろう。とりあえずは一安心である。


「あ、そ~れそ~れ」


 と、考察してる間も、ペッタンペッタンお尻が叩かれ、その力強さは増していくばかり、とうとう耐えかねて『ふざけんじゃねぇぞごるぅわぁ!』

 と、言ったつもりだったが、発声器官がまだ発達してないのか『ホンギャー!』という声に変換されたようだ。声をあげたからなのか、ペッタンペッタン叩かれるのが止み、そこでようやく安堵できたのである。


「泣いたわ! 泣いたわよあなた!」

「これなら一安心だ」

「また死んじゃったりしたらどうしようかと、わたし・・・・・・」


 そういや、産声あげないと、死産と間違われてこうやって意識覚醒されるんだったけな・・・・・・と、頭の片隅で思い出したが、生みの苦しみの中、頭が絞られ、身体を締め付けられ、関節を粉砕されるような痛み、意識を失うくらい仕方ないだろうとも思う。頭を絞られる痛み。うん、孫悟空の気持ちがなんとなくわかった気がする。そりゃあんな痛みを食らうくらいなら、気に食わない相手にも従うってものだわ。まぁ、あれは重度のツンデレを含むんだろうけどもな。


 そうして俺は、何やかんやと有ったものの、無事にこの世界に誕生したのであった。


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