第4話
「そう、キミを呼んだ理由は一つだけ! ボクの管理する一つの世界に向かって欲しいのさ!」
クリルと回って俺を指さしながらのたまいやがったので、その手を素早く叩き払う。スパーンと、思いのほか小気味良い音がこの白い空間に響き渡った。
「イタっ! いきなり何を!?」
他人を指さすなと教わらなかったのか? ってか、神も殴れるんだな。あれか? 無意識な反射なら心を読まれることもないって所か? よし、試してみるか。
「うわっ! 物騒だな! それに他人を指さしちゃいけないなんて、そんな土着のローカルルールなんて知らないよ!」
あぁ、そうか、あれはあの世界の風習か。でも、ローカルルールって思ってるってことは、知ってるには知ってるんだな。
「そうだよ。でも、ボクには関係ないんだよ。だってボクは創造神。ボクが作った世界だからボクがルールなのさ!」
いちいち、くるくると回りながらポーズを決めるのうぜぇ。
まぁ、それは良いとして、なんで俺を呼んだんだ? 俺は間違いなく地獄行きだろうに。
「うわっ! サラッと流してるし。なんか、ムカつく~。でも、ボクは親切で慈悲深いからこんなことで怒ったりはしないよ。それに、地獄とか天国とかあの種族が勝手に決めたことでしょ? 本来のシステムは、輪廻の輪に戻して循環させることだしね。じゃなきゃそんな世界が有ってもすぐに一杯だよ? そんな作っても作っても追いつかないリソースつくりとか面倒なこと、最初からシステムに組み込むわけないじゃん」
まぁ、確かにな。片っ端から送ってたらそのうちパンクするのが目に見えてるしな。
「そんなわけで、キミに異世界へ旅立ってもらう!」
また指をさしてくるので叩こうとすると、今度はすぐに引っ込めやがった。
チッ! しかしまた、なんで俺なんだ?
「いや、スカウ・・・・・・キミをここに導いた存在が、キミはお薦めだと太鼓判を押してたからね。理由はわからないけど、適応力のあるヒトしか選ばないからそう言う事なんだと思うよ」
つまりはコイツはそのことに関してはノータッチか。実はポンコツなんじゃ?
「ボクはポンコツじゃないよ!」
ポンコツな奴ほどそう言うんだ。酔っぱらいの酔ってない発言と同じだな。
「ボクはポンコツじゃないってば! ボクがポンコツじゃない証拠にナニカ異世界へ行くための特典をあげるよ。いわゆるチートってやつだね!」
それは誰にでもやってるんだろう? 話の流れから推測するに。
「ボク相手にここまでポンポン掛け合いをしてくれる人は珍しいからね! キミが特別だよ!」
キミが特別・・・・・・そう言って何人だましたことやら・・・・・・。
「もう! 違うってば! そんなのはいいから、何か要望とかは無い? 一騎当千の戦闘力とか、世界で類のない魔法の使い手とか、今なら何でも特典をつけちゃうよ!」
ん? 魔法? 魔法なんてものがある世界なのか?
「そう。あの世界には魔法があるのさ! キミの居た世界にはなかった要素! どうだい? ワクワクするだろう?」
ん? どんな能力も遣い手次第だしな。興味はあるがどうしてもってのは無いな。
「・・・・・・どうして君に適性があるのか、ボクにはワカラナイヨ・・・・・・」
少々のことでは動じないのが長所みたいなものだからな。案外それが理由かもな。
「あ、それかもしれない! 普通の人は、自分が死んだ要因を聞きたがるものだけど、キミは一度も聞いてこないよね?」
死んだからには死んだんだろう。その理由を聞いても意味がない。理由を聞いたら生き返るわけじゃないだろうからな。
「確かにそうだけど、確かにそうだけど! な~んか、違うんだよなぁ。なんなんだろうなぁ!」
創造神は温厚で慈悲深いんじゃなかったっけか?
「もう、いいよ! んで、何か欲しい特典とかない? 世界最高の魔法使いも世界最強の腕力も世界一の剣豪も思いのままだよ!」
ん? あ~、俺はそういうのに興味ない。だって楽しくないからな。
「んへ? んじゃ、何も欲しいのは無いの」
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