星のそら似

きし あきら

星のそら似

 星ガスの出が悪くなったので、コンロの火をとめて勝手口から裏へ出た。きょうは冬にしては暖かい日だったけれど夕方になれば辺りも暗い。これじゃ不都合、電灯を持ってくればよかったか、と思ったのは、いや一二歩のうちだった。

 壁際にえつけたガスタンクのなかには、常に十個ほどの活性星が舞っている。ぽっぽとほのかに点るのは、星によって循環するガスが透明なタンク越しに見えているのだ。

 もちろん手元を照らすほどの光量がないのはよしとして、いま若干の距離からしても青白く妙に光っているのはなぜだろう。足をとめて目をこらすと、それはタンクに絡みつく得体の知れないもやもやだった。

 ぐるりととぐろを巻いて、なぜかしらんガスタンクをねじりつぶそうとしている。そうなればたまったものじゃない。思わず、こら何してるっと怒鳴ると、そいつはシュッと尾を引き一直線、空高く昇っていった。

 瞬く間についで、その方向から落ちてきた使い古しの銀紙のようなものを拾い、明かりのしたで読むことには、どうやら「たずねびと」ならぬ「たずね星」のチラシなのだった。

 あのタンクで舞っているのはガス会社から供給された、いわゆるニセモノなので、一人前の星がうっかり紛れ込むことはないだろうと思いつつ、話くらい聞いてやるんだったかなあと気がとがめないでもない。

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