第弐章 出会い

第陸話 彼は一若くん

彼、一若くんと会ったの美味しそうな匂いをさせていた家の前。


ちょっとお姉ちゃんぶって、秀くんに発散しないと病気になっちゃうぞ!ってゴリ押しで女の子とイチャイチャしてきなさいって言った日。


ワタシは暇になっちゃって、拠点となってる村をブラブラしてたらすごーく美味しそうな匂い。そう言えば何も食べてないなって思って家を見てたけど、他人の家の匂いで腹を満たすって、ちょっとね?秀くん帰って来たら、何か材料貰おうっと。そんな考えをしていると、ワタシは突然、声を掛けられた。


「腹、減ってんの?あんた」


「え?」


身分が高くはないけど、身なりはそこそこ良さそうな、若い男性がワタシに声をかけた。ぶっきらぼうな物言いだけど、優しそうな感じはする。


それと秀与のビビっとセンサーが発動、ワタシに好意を持つ男性は直ぐに解るのよね。


顔もそこそこのイケメンだし、ワタシに興味がありそうだし、うん、彼に今日は一夜を共にして貰おうかな?


ワタシは相手を魅了するような笑顔を見せた、相手の表情が照れたような顔をするのを見落とさずに。


「うん、お腹空いちゃってるけど、お金もないし、だから匂いだけ。邪魔ならどこか別に行くから」


「や、女一人、ほっとけねーし、俺も一人飯は寂しいとか思ってたからよ。食ってけば?」


ぶっきらぼうな物言いだけど、良い人よね。見知らぬ相手にご飯って。この時代は物々交換ってありなのかしら?


「ふふ、ありがとう。ワタシは秀与。貴方は?」


相手に近付いて、然り気無く腕に腕を絡ませ自慢の胸を押し付ける。頬が赤くなったのと、胸の谷間をチラ見するのは見逃さない。


「お、俺は一若」


「一若くんね、ご飯、一緒に食べてくれる?」


甘える仕草で相手に体を密着させ、耳許で相手にお願いすると、更に顔を赤くした一若くんがぶっきらぼうに頷いた。


彼の家に入り、彼がご飯の支度をしそうになると、ワタシは彼の腕を引いて指先を絡める様に手を繋ぐ。


「ご飯、ワタシも一つ作るよ?ご馳走になるお礼に。ご飯の後も、お礼させてね?」


相手の指先を撫でてから、繋いだ指先を離して台所みたいな場所に立つ。これでもワタシ、料理は得意なの。男性を虜にするなら炊事洗濯は得意じゃないと。


鼻歌を奏でながら料理を作る、いつもは秀くんが作ったりしてワタシに作らせてくれないのよね。男の為に何かするって、本来好きな事だから久々にご機嫌になっちゃった。


料理を作り終えて、相手に振る舞うと驚いた顔をされちゃった。そんなに料理を出来ない顔に見えたかしら?またお猿さんに見えてる?


「秀与、料理上手いんだな。何処か奉公してたのか?」


「うん、ちょっとゴタゴタしちゃって、追い出されたみたいになっちゃったけど」


「そうか、まァ、飯食ってゆっくりしとけよ」


「うん、ありがとう一若くん」


料理を食べ終えて、ワタシは一若くんの隣へと体を寄せる。一若くんが視線をワタシに向けると、唇を寄せ相手の唇と合わせ口付けする。


「ん…っ、ね、一若くん」


「…っ、ん?」


合わせた唇の侭、相手の首に腕を巻き付け胸元を押し付ける。一若くんは抵抗せずに、ワタシの目を見ていた、その目は男の目で背中がゾクゾクしちゃう。だって、久々なんだもの。


「食欲満たしたら、性欲なのよ?お礼、今日は一緒にいてね、一若くん」


今日は一人寝にならなくて良さそう。

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