崩壊事故のあとに

 その後、小野田は岩木に何があったのかを語ってくれた。

 岸森と付き合ったこと。

 詩という弱みを握られたこと。

 そもそも、岸森が彼女と付き合ったのは、弱みを握って文化祭の準備を都合よくやらせる駒にするのが目的だったということ。

 全てを聞いた岩木は彼女に提案した。

 「岸森に復讐してやろう」

 「そんなことできるの?」

 岩木は力強く頷く。

 岸森が昏睡している間に小野田の詩は取り返した。しかし、彼がコピーを持っていないとは限らない。それに、彼が本気になれば弱みなどなくてもクラスを「制裁」に仕向けることは可能だろう。

「岸森がクラスの『リーダー』としてのポジションにとどまり続ける限り、理不尽な要求は止まらない」

 「でも、岩木くんを巻き込んじゃう・・・」

 小野田は心配そうだ。岸森のやり方をわかってる故だろう。

 そんな彼女に岩木はニヤリと笑って見せる。

 「勘違いするなよ。これは俺の自己満足のためだ」


 『工具移動システム』崩壊後にもう一つ起こったことがある。

 岩木京平の内装チーフ代理の解任だ。事故の責任を取らされた形である。幸い、故意に岸森の頭に落下させたことはバレていないようだ。

 押し付けられて、さんざん働かされた挙句、苦心して作った舞台の完成には立ち会えない。その身勝手な命令に岩木は閉口せざるをえない。

 解任後も岩木は定期的に学校に来た。復讐の準備のためだ。

 そして、その実行日は文化祭本番2日目に定まった。

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