第2話「原導一家」

『隕石が謎の空中分解を起こしてから三日が経ちました。

 日本航空宇宙局ではこの原因について以下の会見を…』


俺、ふしま。太ったしましまの猫だから「ふしま」だ。

ただ、今はちょっとピンチに陥っていて…


「ふしまー、秘密基地に行こうよう、ふしまー。」


ベッドの下で俺は尻尾をパタパタさせて猛烈に嫌なことをアピールする。


だが俺の飼い主である原導げんどうヒロムは、

そんなことはお構いなしに俺の尻尾を引っ掴む。


「あそぼーぜぇー?ふしまよぉー。」


どこで覚えた。そんな不良な言葉づかい。


そんなことを考えつつも俺はズルズルとベッドから引きずり出され、

下半身をずるずる引きずられながらヒロムに持ち上げられると

無理やり遊び相手として連れ回されそうになる。


「こら、ヒロム。宿題やったの?」


その瞬間にドアが開き、ヒロムのママさんが出てきた。


救世主登場。俺は素早くヒロムの腕を振りほどくと、

ママさんの横を素通りして階段を駆け下りていく。


「あ、ふしまの裏切りものー。」

「だめでしょ、ちゃんと宿題しなさい!」


上の階からいつも通りのママさんのお怒りの言葉が聞こえる。


俺やヒロムにとっては関係ないけど、

ヒロムのママさんにとって宿題とやらは随分大事なものらしい。


「お、ふしまだ。おいでおいで。」


みれば、リビングのソファでヒロムのパパさんが膝を叩いて呼んでいる。

机の上に新聞が広げてあるところを見るとそれを読んでいる途中らしい。


俺はパパさんを気遣って新聞の上に乗ってやると、

ちょうど文字が隠れるように横に寝そべりゴロゴロと喉を鳴らしてやる。


「ふしまー、それじゃあ見えないよお。」


泣き言を言うパパさん。

じゃあ呼ぶなよ。


思えば、隕石が落ちてきたあの日。

俺はとりあえずこの一家の様子を見に行こうと家に帰った。


結果、ヒロムはバスタブで鍋をかぶった状態で布団に簀巻きになり、

ママさんは台所の落とし戸に同じく鍋をかぶって包丁で武装し、

パパさんに至ってはなぜか洗濯機に上半身を突っ込み逆さまになっていた。


何があったかはわからない。

とにかく一家は俺を見ると、駆け寄り俺に抱きついた。


「よかった、ふしま生きてたんだ。」

「ふしまー、ママはふしまを探したんだよぉ。」

「フゴフゴフゴフゴ!」


最後のパパさんはなぜか洗濯機を頭にかぶったままだったが、

一家は俺を抱いて嬉しそうに笑った。


その時、俺は思った。


なぜ俺の右手からビームが出たのか、

なぜ隕石が壊せたのか、それはわからない。


ともかくこの一家を見て、俺は

…うわ、こいつらやべえ奴らだな。


と、いざのというときの一家の行動を見て

率直な感想を持ったのは確かだった。

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