二人のラフレシア

ろくなみの

第1話

ガンガンガンと音を立ててドアを蹴り続ける。つま先の感覚が次第に薄くなってきて、痛みすら感じなくなってきた。

「くそ、あんたたちも協力しろよ」

カラオケ店内の大きなソファで呑気に寝そべる人が2人いる。ネットで知り合った美人姉妹だ。

「無理よ、ここは男の仕事でしょ」

髪の長い姉がぴしゃりとそう言う。

「そのたくましい脚は何のためにあるの? 飾りじゃないでしょう?」

姉妹揃ってドライどころの話じゃない。

「ちくしょう!!」

いい加減嫌になってきた俺は頭でドアを打ち付ける。慣れない刺激に思わず意識が飛びそうになった。

「情けないわね、姉さん」

髪の短い妹が電源の切れたスマホの液晶を戯れのように触りながら、そう嫌みたらしく言う。

「いいじゃない。私たちのために頭を使ってくれてるのだから」

頭を使うの意味が間違っている。

電話も線が切られているのか、うんともすんとも言わない。まさに監禁状態だ。

「なんであんたらは冷静なんだ」

「なんで?」

髪の短い妹が首をかしげる。

「だって、ここにいても食べ物もない。トイレもない。ドアはびくとも言わないし、電話も通じない。なんでこんな状況なのに」

そういうと髪の長い姉はクスクス笑いだした。

「そうそう、その顔よ」

「私たち、そう言う顔が好みなのよ」

2人は立ち上がり、俺の方は艶かしい足取りで近づいてくる。2人の息遣いが次第に近くなり、鼓動が高鳴る。

「ねえ? ドキドキしてるでしょ?」

声のトーンは冷静なまま、髪の短い妹が俺の首筋を舌で優しく一度舐めた。その妖しくも生暖かい感触は、俺の息遣いまでも荒々しく変えてしまった。

「閉じ込められた恐怖」

「協力してくれない同室者」

「この絶望から数時間」

「ねえ? 興奮しない?」

髪の長い姉は俺の返事を聞くまでもなく、俺の耳に口を近づけて、はむっと噛む。その力は次第に強くなり、俺の耳は食いちぎられた。

「姉さん、ずるいわ。耳は半分こよ」

自分の体のパーツが一つ一つ、2人の美人の胃袋に奪われていく。次第に意識は遠ざかるが、わるいきぶんではなかった。

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二人のラフレシア ろくなみの @rokunami

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