思い出の中へ・・・
勝利だギューちゃん
第1話
まだ小さい頃、おそらく5歳にもならなかった頃、
家族で、ピクニックに行った。
「♪丘を越え、ゆこうよ~」
唄いながら、お出かけした。
まだ5歳にもならない子供が唄う歌と言えば、これかアニメソング。
しかし、子供と言うのは好奇心旺盛。
毎日が、冒険であり勉強。
じっとしていろというのが無理。
それで、色々な事を学んでいく。と、思う。
その日も、僕は立ち入り禁止と書かれた森を見つけた。
当然、漢字は読めなかったので、親に意味を聞いた。
「ここへは、入ってはいけないの」
最初は素直に言う事をきいていたが、子供の好奇心はそれを許さない。
僕は構わず入って行った。
後で、怒られても構わなかった。
森の中へ入って行くと、そこには広い泉があった。
周りは、奇麗なお花畑け、まるでおとぎの国のようだった。
子供心に、「立ち入り禁止」にする意味が、わからなかった。
しばらくは楽しく遊んでいたが、やがて僕は泣きだした。
事の重大さに、気がついた。
途方にくれて、わんわんと泣く事しか出来なかった。
「どうしたの?僕、迷子?」
優しそうなお姉さんが、声をかけてきてくれた。
僕は、頷く事しか出来なかった。
「そう、迷子なの・・・じゃあ、お姉さんが遊んであげるね」
お姉さんの優しい言葉にも、僕はうまく答えられなかった。
お姉さんは、僕が泣きやむまで、優しく頭を撫でてくれた。
「落ち着いた?」
僕は頷いた。
「じゃあ、一緒に遊ぼうか」
「僕、お名前は?」
「しゅんいち・・・わたべしゅんいち・・・」
「しゅんくん、遊ぼうか」
そして、お姉さんとふたりで遊んだ。
何をしたかまでは覚えていない。
でも、とても楽しかった。
遊び疲れた僕は、やがて眠ってしまった。
ただ、また来てね。
それだけは、残っていた。
気がついたら僕は、両親のところにいた。
ただ僕を抱きしめて、怒る事はなかった・・・
それから、20数年が経ち、僕は結婚をして、息子が出来た。
そして、あの場所へピクニックへ行った。
息子は、元気とよく唄っている。
「♪丘を越え、行こうよ」
とても、楽しそうだ。
しかし、少し目を離したすきに、息子はいなくなった。
妻とふたりで、探しまわったが見つからない。
そして、立ち入り禁止と書かれた森を見つけた。
「まさか」
中に入ろうとしたが、警察に止められた。
だが、命にはかえられない。
僕は、振り払い森の中へと入った。
すると、懐かしい光景が広がった。
ため息が出た。
安堵のため息が・・・
息子は、元気に遊んでいた。
若い女の人と楽しく遊んでいた。
女の人は、僕に気がつくとこっちへ来て、
「お子様から、眼を離さないで下さいね」と、注意された。
頭を下げ見上げると、こう付けくわえられた。
「また会えたね。大きくなったね、わたべしゅんいちくん」
思い出の中へ・・・ 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu
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