第73話 閑話 魔法理論的な<令和おめでとう更新>
「貴方って、なんていうか…、簡単に命を奪うような事を言うけど、自分の命も大切にしていない気がするんだけど……」
リビングのソファーで寛ぐ私に、イリヤがコーヒーを二つ持ってきてテーブルに置いた。自分は向かい側に腰かける。
「仲間には、お前は命の重さが解っていないと言われたねえ。命って何かをする為のものでしょ?皇太子殿下の命令が最も優先されるから、二の次になるのは仕方ないと思うんだけど。」
「仕方ないのかなあ…」
彼女は腑に落ちないように言って、湯気を立てるコーヒーを一口飲んだ。
自分の命を大事にしろか、他人の生命をむやみに奪おうとするなか、だいたいこの後の流れはこんな感じか。そう思って、先にいつもの質問を問いかけてみる。
「なら、命の重さ、何故大切なのかを教えて欲しいものだね。君はどう思ってる?」
こうやって水を向けると、意外と皆答えられないものだ。よく言われるのは、一つしかないから、貴方を愛してる人がいる……そんな理由かな。愛している人、それは具体的に誰だよと言いたくなるけれどね。少なくとも我が家の場合は、両親や家族ではない事は確かだ。次兄に至っては、私が邪魔なんじゃないかな?
「確かに、理由を求める気持ちもわかるわ。理由もなく言うのは理不尽ね」
相変わらず彼女は他の誰とも違う。だから興味をそそられるんだが。
「命とは身体を維持するものでしょ、人間は魂と肉体で出来ている。そして肉体は現象世界に個人が干渉する為のもの。なぜかと言えば、この世界は魂の修行の場のように言われていて、魂とは即ち個人の魂、一つの体に一つ宿って支配するものなわけ。個人の魂には必ず核となる神の魂、ブラフマンとかマイクロコスモスとか言われるものがあってね、その個人に宿る神の魂を昇華させる事が人生の目的と言われているよね。確かに肉体は仮のもので、命は一時しのぎの動力源に思えるかもしれないけど、一度ずつの人生をしっかりと生きることが魂の昇華…、最終的には救済の光として周りをも救える存在になり、神の領域に行く事が出来るとされている。そしてそれが神の計画と思われていてね……」
「あの、イリヤ嬢…?話が壮大なんだけど……」
さすが研究者だ……。命の大切さを説明するのに、魂と肉体から語り始めた…。余分な質問するんじゃなかった。
「待って待って、まだこれからなのよ。神は言葉により全てを創造することができる。本当なら魔法は人間に宿っている神の魂から発せられる魔力…すなわちエーテルにより行使される。でも神の魂の周りには人間の魂があるでしょ、だからエーテルは直接出てこない。人間の魂が干渉できる魔力がマナ。大気に宿るマナには核となるエーテルがあると言われていて、エーテルこそがプリママテリアを四大元素に変更することができる。」
彼女の論説がだんだんヒートアップしてくる。しまった、あの研究命のセビリノ・オーサ・アーレンスと気が合う女性だった。魔法理論だけでいつまでも語ってそうだ…
「つまり!!魔法を使う為には、マナをエーテルに変換して、それからエーテルを行使してプリママテリアを
「待ったー!これ、高度な魔法理論の講義になってる!!」
「え?命の大切さの前置きよ、まだこれからなんだけど……」
「ごめん!私が悪かったから、もうこの話は終わりにさせてほしい……!!」
前置き!?魔法理論が前置きなのか!?この後どんな展開をさせる気なんだ?もう勘弁してくれ!!
「あっ、そうだったわ」
「解ってくれた!?」
長い上に難しすぎるって……!
「では質問とあなたの意見をどうぞ。私ばかり一気に話しすぎたわ、それから続けましょう。」
「そうじゃなくてー!!!」
彼女の笑顔が寒心に堪えない……
アリ地獄に入り込んだ気分だ。この調子の論調がまだまだ続いていく。
とにかく、生きるという事は修行であり、魂と肉体の結びつきが命であり、魂の段階を上げる事が生きる目的だから、命は大事…とかそんな感じだったかな。
結局、魔法理論ばかり聞かされた。単に語りたかっただけではないだろうか。百歩譲って、ベッドの中でならいくらでも聞くんだけどっ!
彼女の魔法が強い理由の一つは、自分の中での魔法理論を完成させているからかなのか…?
全く恐ろしいな…
★★★★★★★★
令和元年更新。
魔法理論的な。誰得な更新。頑張って考えたけど矛盾があったらすまない。
悪魔や天使は力の源が違うんで詠唱してないんですよ、くらいに思ってくれれば。
書いたけどどうしようかな~っていうのを、思い切って放り込んでみました。
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