交通事故
9月下旬。大学へ行く。1番後ろの窓際を分捕り、窓を開け、秋風を感じていた。気持ちいい。雲を見る。空高い所にあった。本当に秋雲って空高いんだなとしみじみ思った。農場での出来事が輝き過ぎていて、物足りなく感じる。その時、チャイムが鳴った。
1ヵ月のぶりでの飲み会が夜に行われた。サークルの飲み会だ。みんなワイワイやっている。でも、ついていけなかった。どうしてかって? ただ何となく空虚感が漂っていたからだ。仕方ないから、何人かの友達と遊んでいた。周りに合わせてヘラヘラ笑っていると、仲間から酒を勧められた。飲む。飲みまくる。目の前がぐにゃりぐにゃりとしてくる。強烈な眠気が襲ってくる。意識を失った。
朝、始発で家に帰る。カギを回してドアを開けると、イグサの匂いがぷ~んと立ち上る。帰って来たんだ。そのまま万年床の布団にぶっ倒れる。目を閉じる。意識が遠くなっていった……。
次の日、授業をさぼった。何か気が抜けちまった感じ。昼過ぎになって、近くの公園に散歩に行く。途中コンビニで、昼飯のパンを買った。そして、公園のベンチでぽけーっとしていた。目の前のブランコでは、子供達がキャーキャー言いながら遊んでいる。空は相変わらずの青空だ。ちゃんと秋雲まである。世の中は、こんなに気持ちいのに、何にもやる気のしないのってどうよ。ベンチに横たわってみた。気持ちいい。太陽の光も、秋風も。ずっとこうしていたいな。そう思った時だった。携帯の着信音が鳴る。相手を見る。リンだった。急いで出る。
「久しぶり! 元気だった~?」
「わ、渡が……」
そういうと、泣き声が響いた。
「先輩がどうしたの?」
「渡が交通事故にあっちゃった!」
そう言うと、また泣き声が電話から響き渡る。
「どうしたらいいか分かんないよ……」
リンが泣きながらつっかえつっかえ言う。
「今どこ?」
「病院……」
とっさに質問する。
「今から行くから病院の名前は?」
「……巡り沢病院……。早く来て私どうしたらいいのか分かんないよ」
「今すぐ行くから待ってて!」
そういうと、スマートフォンを握りしめて、家まで走った。
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