第4話 放課後

「で、話って?」

「実は…」

 放課後、いつもなら一龍と帰るところだが今日は用事があって、理子と喫茶店に来ていた。

「チョコレートを贈ろうと思って…」

「一龍に?」

「なんでっ」

「見てて分からないと思ったの?」

 おかしいな。そんな素振り一つも見せたことがないと思ったんだけどな。

「不思議って顔してるわね、あれだけべたべたくっついて分かりませんでしたって言う方が難しいわよ」

「そういわれれば」

そうかも。

「ヴァレンタインに贈りたいって話でしょ。なにを迷うことがあるの、渡せばいいじゃない」

「だって男同士なんだよ…」

「なにか問題があるの?友チョコって言って女同士でも渡すのに今更じゃない。好きって気持ちにそんなの関係ないわよ」

「でも、どうやって」

「話は聞いた。女の子になれば解決だ!」

 隣の席から突然、明君が飛び出してきた。満面の笑みを浮かべすごく楽しそうに。

「確かにかわいいからいいかもね。唯和ほどかわいければいちころよ、明の提案だってのはいやだけど」

「そういうなよ、俺のおかげで助かったんだからさ」

 理子は納得いかない顔ではあったけどしぶしぶ納得していた。

「具体的にはどうやって?女装とか言っても一朝一夕で出来ることじゃないわよ」

「…すまんが隠してること話していいか?」

 明君は悩んだ顔で僕に聞いてきた。なぜ彼が知っているかを尋ねたかったが今はまず目の前で疑問符を浮かべている理子を納得させるのが先だと考え、話していいよと言った。

「…と、いうことがあったんだ」

「ふーんそんなことが…、いってくれればよかったのに」

「言えるわけがないよ、女装趣味の変態呼ばわりされたくないもん」

「そんな可愛い顔と言い方じゃ説得力ないわよ…まぁ、いいわ。じゃああとはチョコ作って渡すだけってこと?」

「そういうことだな。俺たちはあの鈍感な男を動かして受け取る手伝いをすればいいわけだ」

「お願いできるの?」

「断る理由がないもの、それにそういう話をしたかったんでしょう」

「俺もだ、手伝うぜ」

「ありがとう」

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