第3話 昼休み
昼休みは屋上で食べる。というのはある一種のステータスであるとは思うのだけど実際にはよっぽどのことがないと屋上なんて入れないわけだ。自由に使えて責任を果たしてくれる大人がいなければ。
「変なことすんな若人諸君、おじさんはそこいらで食ってるからな。なんかあったらすぐ言えよ」
「いつもすみません、理科先生」
「いつも弁当助かってるからこのくらいはな。あと理科じゃない利嘉(としよし)だ」
理化学担当の益田 利嘉先生、通称 理科先生に毎日の弁当の代わりに屋上へ入れてもらってる。男の一人所帯というのは色々難しいらしい。
「唯和の作る弁当旨いもんな。俺にも作ってくれよ、一龍にも作ってんだろ?」
「弁当たかって恥ずかしくないの?」
「うるさい。料理も出来ないくせに」
「なんで知ってんの!」
「公然の秘密って奴さ」
「どういうことよ!?」
両親が仕事で朝からいないことの多い僕は弁当をいつも自分の分と一龍の分を作っていた。それが今更一人増えたところでと思って先生の分も引き受けたのだが…。
「気にすることはないぞ、唯和。明はあれで自分の弁当くらいは作れる奴だ。いざとなったら自分で作るだろう」
「うん」
一龍はよく人を見ている、恐らくすべての人を平等に同じ目線で見ている。それが彼の美徳であり、人柄なんだ。けど、そうだから周りの人は彼に見られるのを嫌うんだ。自分を常に他人と同じ目線で見てくる人とは付き合いたくなくなる。自分だけが特別であると信じたいから。僕は逆だ他人と自分を同じ目線では見られない、全部特別であると信じている。自分以外は。
だけど一龍だけは別なんだ、彼だけが平凡であると信じられる。
「どうした?ぼっとして」
「なんでもないよ」
だから彼といると安心する。自分が特別であると感じられる、本当に特別ってこういうことなのかもしれない。
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