第2話 教室と友人

 坂を少し上った丘の上にある県立高校、それが僕たちの通う学校だ。特に部活動で成果があったとか、すごい有名人を輩出したとかそんなことはなく。地区大会で下から数えた方が早いとか卒業者の中に地元の小企業の社長がいるとかそういった程度だ。家から近いって理由で選んだくらいだからね。

「おっす、唯和。一龍」

「おはよう一龍くん。唯和ちゃん」

 通学の途中、手が触れ合うか会わないかといった距離で歩いてきた二人組に挨拶をされた。

 先に声を掛けてきたのは森永 明。クラスの男子の中心的人物であり学校内に知らぬことはないと豪語する情報屋でもある、でも好きな娘の好きな人が自分ではないことはしらない。

 後が江崎 理子。真ん中位の女子グループに所属するちょっと強気な委員長。クラスのまとめ役、困ったときは委員長権限。明の好意には気づいていない、一龍が好き。二人は仲の良い幼馴染どうしである。

「来週さヴァレンタインじゃない?で、唯和ちゃん誰にあげるの?」

「僕は男の子だよ。なんで誰かにあげるって話になるの」

「だって可愛いし」

 だって可愛いし、それは彼女の常套句だ。主に僕に対して使われることが多い気がする。まぁ自覚はあるんだけど僕は男だしなぁ…。正直困る。

「そんなことより一龍、唯和。今年も何個貰えるか競おうぜ!」

「いつも負けるくせに強気だな」

「言うな一龍!だが今年は秘策があるんだ」

 一龍は如何にも漢!って感じがしてス少し羨ましい。毎年十個近くのチョコを貰う位には持てるし…かっこいいし…、

「そんなことって何よ!女の子には大事な事なのに!」

「俺だって誰が誰にあげるかは気になるさ!でも男の勝負ってもんがあるんだよ!」

「知らないわよ!勝負とか!」

 仲良しだなぁ。この二人はいつも事あるごとに喧嘩をすることからクラスの名物と化している。通称痴話喧嘩。

「どうせ今年も俺の勝ちだぜ」

 一龍は見た目は怖いが誰にでも優しく、割りと女子からモテている

「「今、言うか!知らなねぇ(いわ)よ!」」

 こんな息があってるのに喧嘩するもんなんだなぁ…。羨ましいかも。

 

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