第22話 二次オタ戦士と妖艶美女
毎日投稿できませんでした。
ごめんなさい。
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この世界には、基本的に髪を染める技術というのはない。
だから俺達はこの数週間、何事もなくこのアトランディカにある片田舎の村で潜伏出来ている。
「おばちゃん、この薬草でいい?」
「あらワーちゃんもう持ってきてくれたの?」
俺は今、ワートと名乗って短い茶髪のかつらと伊達眼鏡をかけて変装している。
そして日銭を稼ぐために、村人に代わって薬草やら何やら集めてくる仕事をしていた。
この村は限界集落と言ってよく、200も居ない人口に加えて10代から30代の若者が70人以下で、子供は両手の数で足りるということだった。
ここから2日歩いた先で、少し大きめの港町があるようなので、若い人間の大半はそちらに行っているらしい。
さらにそのままその町に永住してしまうものだから、自然と老人が多くなる。
また魔物の跋扈するファース山脈から比較的離れていることもあり、強力な魔物も出ないということが関係しているらしい。
そんな立地ならもっと栄えてもおかしくないんじゃない?
と思ったが、誰もこんな山に囲まれているところを交易路とする訳ないよね……だから閉鎖的なこの村は、マジであと20年もしたらなくなるんじゃない?
俺は偶然森の中で足を挫いてケガしていた人を助けて、偶然その人が村の有力者だったからいつの間にか馴染んでいたけど……向こうも訳を聞いてこないから尚更潜伏にはちょうどいいぜ!!
「ワート君、調子はどうだい?」
「ああ、とてもいいよ代理」
この代理と呼ばれている男は、俺が助けた村人で、高齢な
年齢は40代で、外見は大体夜になれば忘れてしまう程度……いや、だってあんまり特徴無いんだもん……
因みに彼の子供も町に出て行ってしまっているらしい。
「実は……折り入って頼みがあるんだがいいだろうか?」
世間話を数分していたら、そうやって切り出された。
「実はガイードの町で定期的に買い物をしているんだが、今回行ける男が少なくてね……君にぜひ付き合ってほしいんだよ」
ガイードというのは、この村とシーマンという港町の間位にある町だ。
ここで、色々と買い付けするらしい。
「ああ、いいよ」
今の俺は、
準備もないので、明日の朝から向かうことになった。
日帰りで行ける距離にあるのは楽だしな。
「という訳で、明日1日でかけるから」
「分かったわ」
「グラちゃんは任せて」
「ぐらっ?!」
グラトルはついてきたそうな目をしているが、実はインヴィスがちょっと怖いので連れてはいけない。
こんなちっこい見た目だが、がっつりお姉ちゃん属性だったんだよ……
「この姿は仮の姿よ?」
と言われたので、本当の姿とやらを見せてもらったが、驚いたことにアルテを金髪にしてスタイルを良くした感じだった。
余りにも似すぎていた……
しかし、何故その姿にならなかったのかというと……
「お姉ちゃんを守るため……」
と言っていて、詳しくは聞けなかった。
今では、この一行を裏から牛耳るレベルで、俺もビスチェも彼女に逆らえないのだ。
俺がグラトルとの再会時には泣き喚いていたとビスチェに教え、ビスチェが迂闊なことに、そのことを揶揄ったときは二人とも地獄を見たものだ……
具体的には穴に埋められてその中にいろいろな蟲を……ビスチェは発狂していたよ……
そんなこんなで上位関係が決まりつつあるこの一行で、俺は彼女には逆らえないんだ……
…………
はい、という訳でガイードの町に着きました。
道中特に何もなかったよ……
人口は5000人くらいらしく、ある程度の人混みがある。
「それじゃあ買い物しようか!」
一緒に着たおっさんと共に、必要な物資を買い、街にある食堂に来た。
ここは夜は酒場になるみたいだ。
そこで驚くものを見てしまった。
「お、親子丼?!」
メニューに何と親子丼があったのだ。
どうやらとある貴族の少女が考案した料理らしく、しょうゆっぽい物と酒とみりんっぽい甘い酒とかを集めて作ったらしい。
なんかその少女って転生とかしてなかった?
キャロルがこの国出身かもしれないという疑惑が生まれたが、とりあえず食べてみることにした。
「では、いただこう……」
海外で見た和食を、評論家気取りで食べるような心境で食べた。
「ここにはまた絶対来る!」
俺はそう誓ったね。
拠点ではアルテが作ってくれるけど、行くたびに精神的にものすごく疲れるから、あんまり帰りたくなくなってきたんだよね……
因みにビスチェも毎日シャワーを浴びるために部屋に入ってくる。
他人が聖域に踏み込んでくるのは我慢ならないが、逆らえないので仕方ない。
以前一度断ったら、物理的に体をたたまれそうになったからな……もの凄い笑顔で「お願い♡」って言われて辛かった。
ただし、どうやってもインヴィスは部屋に入れなかったが……
どうやら邪気をその身に宿しているのが原因らしく、彼女を浄化しようと許可をもらって触れてはみたが、浄化できなかった。
間接的に邪気に晒され続けて魔王となった彼女の体は、邪気と非常によく馴染んでしまっているようで、俺の力では無理だったんだ。
だから、強制的に
俺的には蟲を触る女の子には、是非とも毎晩風呂に入ってほしかったが、それを口に出すと、多分口の中に蟲を詰められそうなので言えなかった。
勿論彼女は毎日水浴びはしてるよ?
だから石鹸をあげると、
「渉ちゃん大好き!!」
と抱き着いてきた。
どうせならもう少し成長した姿でお願いします……
…………
はい、という訳で日帰りで何事もなく普通に戻ってまいりました。
テンプレならばここで何らかのイベントが発生するはずなのだが、この大陸では盗賊などあまり出ないらしい……
そういう悪い奴らは、天から神の鳥が舞い降りて、攫って行ってしまうからのようだ。
そんな躾に使うようなおとぎ話は、こっちにもあるんだな……
村に帰ってから数日後、俺は皆に切り出した。
「ビスチェ、インヴィス、グラトル、俺はガイードの町に行こうと思っている」
休日にちょっと遠出したいな的な気分と、あの絶品の親子丼をどうしても体が求めてしまっているのだ……
「分かったわ、いつ出かけるの?」
「今から」
「今?!」
ビスチェが驚く。
何で驚いているんだ?
1日あれば余裕で着く距離だぞ?
「ちょっと待ってよ!
全然準備していないわよ!!」
「準備なんている?」
「要るわよ!
万が一野営になったりとか不測の事態に備えなきゃ!!」
「いや、拠点魔法があるし」
「ヴィスは入れないでしょ?!」
「え?
何で?」
「何でって?!」
ぶっちゃけ親子丼食いに行くだけで、何でそんな大げさな準備をしなきゃいけないんだよ?
「それに明日には戻ってくるし?」
「それでも準備は必要なのよ!
ただでさえ女にはいろいろと出かける前の準備があるんだし」
「え?!
ついてくるの?!」
「?!」
「?!」
「?!」
皆驚愕の表情で俺を見ているが、俺の方が驚いているよ!
何その連れションみたいなテンション?
子供じゃないんだから飯くらい一人で食いに行けるし!
「……渉ちゃん、もしかして一人で行く気だったの?」
「?? 当たり前だろう?」
飯食いに行くだけだし。
俺にもようやく分かってきた……この認識の違いは、コミュ力があるかないかの違いだ……コミュ力のあるこの二人は団体行動を苦にしない……
それに対し、コミュ障の俺は基本的に単体行動だ。
コミュ力のある奴らは、病的なまでに誰かと一緒に居るからな……そんなのあり得ねぇよ!!
飯って言うのはな……一人で静かに食うものだ。
大体異世界物の主人公は、ボッチとかコミュ障とか言っているが、大概コミュ力が高くていつの間にか多数の女の子たちと行動出来る似非コミュ障だ。
俺みたいな本格的なコミュ障は、基本的に群れることを嫌うのだ。
「だから一人で飯食いに行ってくるつもりだよ!!」
「…………」
「…………」
「…………」
その何とも言えない表情で俺を見るのは止めてくれないかな?
「ワタル、皆でついて行きます。
異論は認めません」
普段使わない敬語で話すビスチェ。
「大丈夫、渉ちゃんに迷惑をかけないから」
何故か母性が溢れてこちらを包み込むような優しい笑顔を浮かべるインヴィス……
「ぐるぅ!」
俺はいつでも一緒だぞと言わんばかりに頭に張り付いてペチペチ叩いてくるグラトル。
「え?
いや、マジで意味わからん」
あれか?
ボッチな俺を憐れんでいるのかこいつら?!
俺はマジで一人で行きたいんだよ!!
と、そんな抵抗むなしく俺達は一緒に隣町に行くことになった。
「大体着替えとか持つ必要あるの?
君ら毎日同じ服j、ぐべっ?!」
「違いますぅ!!
毎日着替えています!!」
「渉ちゃん、そういうのは女の子に嫌われるよ?」
このリボンがね……とか言われても分かんねぇよ!!
二人は完璧なタイミングで俺の両頬にビンタを張り、頭がグワングワンってなっている。
その尋常じゃないダメージに、俺は意識が遠のいていった……
目が覚めた頃には二人は準備出来ていたみたいだ。
という訳で回復魔法を自分に施し、俺達は町まで出かけて行った。
そして、気絶していた時間の分だけ遅くなり、街に着いた頃には辺りは薄暗くなっていた。
16時過ぎらしい。
「じゃあ親子丼食いに行くか!」
「……宿をとってからね」
という訳で飛び出そうとしていたところを、首根っこを掴まれて引きずられて行く。
ちょっとお高そうな宿だ。
この街はどうやら宿場町のようで、商店以外にも宿屋が多い。
「お金が……」
「出してあげるから」
と言われてビスチェに連行される。
「レストランが併設されているから、そこでご飯を食べましょう?」
「駄目だ。
今日は親子丼という気分なんだ……」
抵抗むなしく、俺はこのレストランで食事を取らざるお得なかった……
はい、という訳で宿を抜けてまいりました!
部屋は当然男女別々で、グラトルはヴィスにつかまったままなので、俺は部屋に1人……宿では腹6分目くらいにして、今現在9時……ちょうど小腹がすいてきたところだ。
なのであの絶品の親子丼を食べに、俺は行動を起こした。
俺は何故ここまであの親子丼を求めるのか?
長期連休で帰省して、その間は地元の飯屋に通い続けたという人もいるのではないか?
都会と田舎では、特に海鮮物の類は、まったくの別物と言ってもいいくらい旨さが違うと俺は思う。
なんか食べた気がしないのだ……
そこで食べたのがこの間の親子丼……
普通にうまい親子丼だ。
確かにアルテならばリクエストすれば作ってくれるだろう。
だが、幾らアルテが和食を作ってくれるとは言え、やはりここは日本ではない……
何か足りないのだ……
そこにあの親子丼だ。
出汁が良く出た汁に、味がしみ込みつつも絶妙な柔らかさを維持する一口の鶏肉……コメにも甘みと粘りがあり、そこに汁がしみ込んでいる。
口の中に書き込むと、まさに日本の味だ……
食べられるとは思わなかったものを、食べてしまった……ならば体が求めるのは仕方ないだろう?
俺は意気揚々と夜の酒場に行き、親子丼を注文した。
「悪いな、夜はやってねない」
俺は涙を流しながら酒を飲んでいた……
「マスター、もう一杯……うぷっ……」
「あんちゃん、もう止めときな……」
店主が俺を止めてくる。
周りにいる客も心配そうだ。
「いいんだ……どうせ俺なんて……」
「わーったよ!!
半分だけだぞ!!!
ったく……」
カランカラン
この世界でこんな夜更けに来店したのは、驚くほど妖艶な美女だった……気がするけど余りそちらを見なかった。
カツッカツッカツッ……
周りの酔客たちが、全員彼女に釘付けだ。
中にはゴクッっとつばを飲み込んだ奴もいる。
カツッカツッカツッ……
カウンターに座っている俺の横まで来ると、その女は座る。
他にも席が空いているのに、何故に俺の横に?!
コミュ障はパーソナルスペースに敏感なんだぞ!!!
「マスター、甘い
「はい、ただいま」
おい
俺の注文を無視して女性にカクテルを出す店主……客商売として失格だぜ!
そのあからさまな贔屓に、眉を顰める。
そしてそれを飲む女性……は別にどうでも良いか!
「店主!
俺の注文は?!」
「わーってるよ!
少し待ってな!!」
店主がちょっと不機嫌に、奥に入っていった。
「あら?
もしかして私の前に注文してらっしゃった?」
隣の女が俺に声をかける。
「いいえ、お気になさらないでください」
俺は一応にこやかにそう答える。
「っ?!」
その時初めて女を見た。
何とアルテにとても似ているのだ。
違うのは、アルテをもっと成熟させたような女性らしいプロポーションをしていることか……
だが、ここ最近ヴィスといい、やたらとアルテに似た女を見るな……ドッペルゲンガー?
「ごめんなさいね。
割り込んでしまったみたいね……」
「先ほども言いましたが、気にしないでください。
私のは作るのに少し時間がかかるので……」
というかあまり話しかけてこないで!
周りの
「あら?
貴方はどのようなお酒を嗜んでらっしゃるのかしら?」
何故か興味深そうに女が聞いてくる。
「大したものじゃないさ……それにほとんどとんでいるしな?」
「飛ぶ?!
そ、それは珍しいお酒ね?」
そうこうしている時にマスターがそれを持ってきた。
「へいお待ち!」
目の前にはハーフサイズの親子丼……そう、なんだかんだ言ってこの店主は作ってくれたのだ。
「……ハァ……美味しい……」
「モグモグッ……はむっ!
んぐんぐっ……あぁ!
うめぇな!!」
これで4杯目……いや、ハーフサイズだから3.5杯か……そろそろ腹一杯だし帰るか?
「お客さん、帰ってくれないか?
(店の雰囲気に合わないし……やたら親子丼を食べてるし、泣き落とししてきて鬱陶しいし……)」
「そういわれたら帰りたくなくなるな?」
「いやもう帰れよ!!」
という訳で会計をお願いすると、横のやたらと色気を放つ女が、話しかけてきた。
「ねぇ?
私、貴方に興味があるわ。
この後ご一緒しない?」
『っ??!!』
俺も含めて、この場に居る男たちが全員息をのむ。
この女から目が離せなくなっているのだ。
というより色気がヤバい……
「もしよろしければ、私のとっている宿に来ない?」
「……」
何故か下半身に力が……他の奴も同じみたいで、店主は前かがみになっている……あ、色々察したら、俺自身の力が少し抜けてきた!
余り悟りたくなかったぜ……
「
こんな美女が……俺に……?
俺は来ている上着のボタンをはずす。
『こんなところでか?!』
何故か驚愕して俺を見る野郎ども……
そして女は笑みを深めた。
ガバッ!
「悪いな、俺には心に決めた二次嫁たちが待っているんだ!!」
上着の下は肌着として来ていた秘蔵Tシャツの一つ。
某エロゲーの柄物Tシャツだ。
「……え?
絵? ……えっ???」
「マスター、ごちそうさま!」
俺は酒場を後にする。
酒場でブサメンに美女が話しかけてきたら、どう考えても
呆然として絡まれない内に、俺はその場を離脱した。
「しかし、あの人もの凄いいい匂いだったな……」
新しい
「おかえり!!」
「渉ちゃん、どこに行っていたの?!」
「お”おおおおおおおおうっ??!!」
何故か青筋を浮かべたビスチェとヴィスが俺の部屋で待っていた……
そこからの事は思い出したくない……
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