第16話 ちょっとSO・SO・Uで、俺往生

まだ1章完結まで書ききっていないけどフライング投稿!!

目標あと2万文字!!


次話は明日の6時投稿予定


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「あ゛あああぁぁぁぁ~……」


 29にもなって、この聖都の何万、十何万という住民たちによる勇者コール精神攻撃により、全てがどうでもよくなった俺は、この大聖堂に併設されている教会職員の宿舎の一室でよく分からない声を出して寝転がっている。


 もう本当に動くことすら面倒臭い……隕石でも落ちないかな……


 こんな状態でおよそ2日間部屋に引きこもっている。


 何でもアルテがこの世界に声を届け、精霊契約の為の力を行使する時に、巫女のアルトリアさんがその依り代となったため、彼女の消耗が激しく、俺は彼女の回復を待っている。


 キャロルとは、彼女との面会を果たすと約束を一応しているため、俺はこの客室に引きこもっている訳だ……


 教会関係者のもっと良い部屋にとかいう謎のおすすめを却下し、普通の部屋じゃないと逃げるぞと交渉して、何とかこの部屋を用意してもらった。


 え?

 拠点魔法の部屋?


 だってあそこには聖母神アルテ厄介な奴がいるし……


「あ゛あああぁぁぁぁ~……」


 とりあえず声だけ出しておく。








コンコンッ


 現実逃避をしていると、ドアをノックする音が聞こえてくる。


「渉様、今宜しいでしょうか?」


「駄目で~す」


 キャロルが訪ねてきたみたいだが、なんかもうやる気が出ないから断った。

 自分でも引きそうなほどやる気が無い。


 このまま3度寝しようかな……

(注 ただ今の時刻は午後2時)


「失礼しますね」


 あれ?

 俺、断ったよね?


 なんか普通に入ってきたんだけど……

 キャロルさんが最近、遠慮しなくなってきたよ……聖女ってほら……もっとこう……ね?


 そして、キャロルの他にもう一人が入ってきた。

 この人はキャロルが教会に来る前から彼女の世話をしているマリアさんだ。


 年齢と体重の数値から20引いたら俺の好みなのだが、因みに結婚して子供も3人いるらしい。


 キャロルは、元は隣の国の偉いさんの娘で、実家は侯爵家で家格でいえば王家との縁談があってもおかしくないようだ。


 因みに侯爵という位はWebで調べてほしい。

 大体あの通りだとキャロル本人が言っていたからね。


 こうして貴族令嬢いいとこのお嬢様としてすくすく育って、6歳くらいの時に、地元の教会で洗礼を受けたときになんか凄い才能があって、なんやかんやで家を離れて教会に所属するようになったらしい。

 それで10歳くらいの時、修行中に同じく修行中だったアルトリアさんがなんか急に覚醒して、それにつられてキャロルも聖女として覚醒したらしいよ。


 ところどころ曖昧な情報になっているのは、俺のやる気が無さ過ぎて彼女とマリアさんの会話に身が入っていなかったからだね。


 余談だけど、この世界の通貨とか距離とかの単位は、自動的に翻訳されて日本語として聞こえるようになっている。

 

 だから金貨とかの話をしても仕方ないよね?


 どうせどの小説でも、大体中盤くらいからお金は出てこないし………ごほごほっ





 閑話休題


 という訳で、縁は切っていないようだが、家から離れる時に世話役兼家庭教師役のマリアさんがついて来て、今に至るといった話のようだ。


「神託の巫女、アルトリアが目を覚ましました」


「おめでとう~」


 傍から見たら社会人としてどうなんだ?

 という態度だろうが、なんかもうすべてがどうでもよくなっている俺はこんな返事しか出来なかった……

 どうやら勇者コールで俺の中で何かが壊れてしまったようだ。


「……つきましては、渉様にはアルトリアに会って頂きたいと思い、お伺いしました」


「やだ~、めんどう~」


 なんかキャロルさんのこめかみに青筋たっているけど、ほんとどうでもいい。

 そんなキャロルさんをマリアさんが宥めているが、特に何とも思わなくなってきた。


 反射的に断ってしまったが、なんか今は会うタイミングではない気がする。

 マジで俺のやる気が行方不明。


ビキッ


 可愛らしいキャロルさんからなんかもの凄い圧力が吹き荒れてきた……

 俺は急いで寝返りを打ち、体ごとキャロルさんから目を逸らす。


「ホホホッ……理由をお聞かせ願えませんか?」


「今はまだ……その時ではない……」


 だから落ち着いてほしい!


「フフフッ、いつもいつも渉様は面白いことをおっしゃいますね?」


 意外と近くから聞こえたその身も凍るような冷たい声に対して、俺は本能的に体を丸めて防御態勢に入る。


 しかし、変なところに力が入り……


ブッ……


「ひゃん?!」


 屁をこいてしまった。

 そして俺は思う……人前で屁をこいてしまったらもうどうでもいいよねと……


「……わ、渉様?

 いくらなんでも今のはいささか酷すぎではありませんか?」


ブッブ~


「……」カチャ


「お、お嬢様?!

 落ち着いてください!!

 刃物はいけません!!」


「マリア、離しなさい!

 いくらなんでもこれはあんまりではありませんか!?」


ぷっぷぷぷ~


「また屁をこいた!!?」


「お嬢様!

 淑女がそのような言葉遣いをしてはいけません!?」


「ならマリアは”屁をこく”の上品な言い方をご存じなのかしら?!」


「い、いえ……過分にして存じませんが……

 とにかく今のお嬢様はいろいろと淑女的にアウトです!!」


 ガタガタと何かを引きずる音や、ドカドカとベッドに近づいてくる音がしている。

 恐らくマリアが何とかドアの方に引きずり、キャロルがベッドに近づこうとしている様だ。

 何とか現状二人の力は拮抗している様だ。

 是非ともマリアにはこの戦いに勝ってほしい。


 背後で女性陣が姦しい中、ここまで屁を連発してしまうと、俺自身の限界がどこまでか挑戦したくなってしまう……


ぷっぷっぷっぷっぷっぷっぷっぷっぷっぷっ……


「はうっ??!」


『はうっ??!!』


「……」


 あ、危なかった……もし……もし俺があと10歳年を取っていたら……そして精霊契約により、身体能力が上がっていなければ恐らく、人としての尊厳が粉微塵になっていただろう。


 俺はベッドから降りてゆっくりと移動する。

 キャロルとマリアさんはこっちを見て、『まさか……こいつ……っ?!』

 みたいな驚愕した表情で俺を見てくる。


「危ないところだったが、とりあえずドアの前そこをどいてくれ」


「わ、渉様?

 ま、まさか……」


「いや……何とかギリギリ間に合った……だが一刻の猶予もない。

 そこをどいてくれ」


 二人が気圧されたように一歩下がるが、キャロルが口を開く。


「わ、渉様?

 お着替えは必要ですか?」


 はっきり言って余裕が無い!

 だから全身から早くそこをどけオーラを出しつつもう一歩進む。


「キャロル、最後だ、そこをどけ。

 今は全く余裕が無いんだよ!

 それとも何か?

 お前はそういうことに興味があるのか?


 もし……あと一発でも俺に屁をこかせてみろ?

 中身を出さない自信は……無ぇ!!


 そうなったらあんた……責任……取れるのかい?」


「……いや、自分の尻くらい自分で拭きなさいよ!!」


 俺は括約筋に力を籠め、内股になりながらギャーギャー騒ぐキャロルをかわし、何とかトイレについて人としての尊厳を守ることが出来た。




「ふぅ~……危なかったぜ……」


 一つの戦いを終え、3度寝しようと部屋へ戻ってきた俺だったが……


ガシッ


「お帰りなさい。

 ふふふっ……」


 顔を両手で掴まれ、無理やり笑顔のキャロルと向き合わされる。


「ま、待ってくださいキャロルさん!?」


 先ほどはある意味人生が掛かっていたため、普段なら纏うことの出来ない覇気が俺にはあったが、今の俺にはもはや覇気を纏う理由が無い……


「ふふふっ、だぁめ♡」


………………………


「お、お嬢様が変わられてしまった……」


 キャロルの残虐ファイトを見ながら、マリアさんが震えていた。













「おぉ、聖女様!

 渉様……は……?!」


「はい、こちらに。

 渉様の準備が整いましたので、神託の巫女の元にご案内します」


「あ、はい……お願いします」


 キャロルは、虚ろな目で口の端からだ液を垂らしながらだらんと脱力している渉を引きずって、本殿の奥、聖域と呼ばれる大聖堂の最重要区域に進んでいった。


 その姿を見送った聖域の門番を務める聖騎士は、後にこう語る。


「あれは、末期の病に侵された者……死に瀕している者の表情だった……恐らく衣服の下、胴体に激しいダメージを受けたものと推察される。

 何故なら顔に一切の傷が無く、先日ご尊顔を拝見した時の様子から、急病ではないと判断し、何らかの戦闘行為? によって衰弱したようなもの……


 すいません。

 どう見ても聖女キャロル様が渉様をヤりました。

 はい、頬に血が付いていましたので……


 え?

 渉様を助ける?


 ははっ、ご冗談を……


 あの時のキャロル様に下手に逆らうと、私は一瞬で挽肉ですよ?

 それに渉様自身から血の匂いがしなかったのに加え、衣服に乱れが無かったので、恐らく治療は既に済んでいると判断し、お通ししても問題ないと判断しました!」



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