第9話 引き籠って好きなことをしていたい……それと魔王たち
はい、というわけでグラトルさんをピチュン!
ってした後、すぐに拠点魔法を発動して部屋に引きこもりました。
だって……みんな俺の事
その後、何人かがこちらに向かってきているのを見て、即行で引き籠ることを決意したね!
「ただいま~」
ここだけは俺の聖域だ……引き籠るときはね、誰にも邪魔されず、自由で、なんというか癒されてなきゃあダメなんだ……
「あ、渉さんお帰りなさいっ」
俺は膝から崩れ落ちた。
昼間っから
いやいやっ、なんで割烹着なんだよ!!
お前西洋人風な容姿だろう!!
西洋人は普通なら裸エプロンとかじゃないの?!
確かに同じジャンルだけど、それは黒髪の女の子だから似合うんだよ?!
アルテも似合っているけど、日本人女性の方がエロイんだよ?!
後ろから抱き着いて、
「今日もかわいいね……」
「あっ、もう、危ないから後でね……」
って、そんなシチュが好きなんだよ?!
(注 割烹着は家事をこなす女性の衣服を、汚れから守るためのモノです。
決してエロ目的の衣装ではありません。
特に料理しているときは危ないので、いくら奥さんや恋人相手でも邪魔してはいけません
そして、西洋人の方も裸エプロンで居ることはないでしょう。
普通に料理してます)
「あ、お洗濯物は籠に入れておいてくださいね。
この間の洗濯物はたたんでタンスに入れておきましたので」
と、そんな俺をスルーして、おかん力を発揮するアルテ。
そう、いつの間にか消えている服は、アルテが回収して洗濯、天日干し、収納まで全部やってくれていたのだ。
アルテマジおかん……
そして、俺の心を容赦なく抉ってくる……
「そういえば時間を遡って、教会の巫女に渉さんが勇者だって伝えておきましたっ!」
えへんっ、と胸を張る18億歳児……
「あれはお前の所為かっ!!!」
さすがにあんな辱めを受けたら、いくら俺でもブチ切れるっ!!
「え……あの……駄目でしたか?」
「さすがに
「ご、ごめんなさいっ」
目茶苦茶シュンとしている。
一瞬絆されそうになるが、ここは怒りの姿勢を見せ続けるべきだ。
「あ、あの……怒って……いますか……ご迷惑……でしたか?」
うるうると上目使いでこちらを窺うアルテ。
すごい罪悪感が……で、でも許さないんだからね!
「何であんなことしたんだ?」
一度冷静になる俺。
こういうことは怒るよりまずは、何故そう考えて行動を起こしたのかというのを聞き取り、そのうえで改善点を伝えるのが効果的だ。
ただ上から押さえつけるように怒りをぶつけるのは、双方にわだかまりを残し、今後のアドバイスなども受け入れてもらい辛くなる。
新入社員を何人か面倒見たときに体験したことだ。
俺は怒りを抑えて、努めて優しくアルテに聞く。
そして彼女は1冊のノートを取り出した。
「ッ?!?!?!?!」
え? えっ? えええええっ?!?!?!
「こ、これに載ってました」
いやあああああああああああああああっ?!
なんで
「この主人公……勇者ワタルが、ファンタジー世界に転移して、人類を救って、勇者って褒め称えられて……お、多くの女性と仲良くしたいってっ……
ご自分で、
渉さんの
「あっ……あああっ……あああああああっ……」
俺は目の前が真っ白になっていき……倒れた。
「わ、渉さんっ?!
大丈夫ですか?!
勇者はダメでしたか!?
えっと……ならこっちの英雄お「ホントマジでやめてお願いしますアルテ様!!」
きゃっ、渉さん離してください?!」
非常に嫌な言葉が俺を無理やり覚醒させ、アルテの足に縋り付いてみっともなくお願いする。
「俺っ、全然怒ってないですからっ!
マジで怒ってないですからっ!
だからこれ以上俺を追い詰めないでぇ!!!」
「ひゃんっ!
だめっ、渉さんっ、脚さわっちゃっ!!」
これ以上の羞恥は耐えられないという俺とは別に、どこか冷静な俺が、ピコンと閃く。
こんな目に合わせられるなら、アルテも多少恥ずかしい目にあっても当然ではないかと!
幸か不幸か、目の前には和服を着たアルテが居た。
正確にはその足に縋り付いている。
太ももスリスリしたい……俺の中の
そして、両頬で割烹着の上からアルテの太ももを堪能していると、
「エッチなのはいけませんっ!
めっ」
全身をバラバラにしそうなほどの衝撃が身体を襲う。
「ぎゃああああああっ」
「もう……もうすぐご飯ですから手洗いうがいをしてきてくださいね?」
そして、アルテは台所に戻っていく。
でもちょっと待って?
マジで身体動かないんですけど?
というか
アルテは軽く「めっ」ってしたつもりのようだが、俺からすれば「
しかし、また「滅ッ!!!」ってされてもたまらないので、何とか身体を引きずって洗面所に辿り着いた……
――――――――――――――――――――――――――――
ここは広大な草原が広がる大陸・サードルだ。
その空を掛ける魔物が居た。
彼はワイバーンと呼ばれる竜種の一体である。
(ここは人間が居ない!)
このサードルに住む人類は、既に数百年前に滅んでいる。
そして、過去何度かこの大陸に移り住もうと、人類は開拓団を組織し、遠征に出たが、一人たりとも戻ってくることが無かった。
一体彼らに何があったのか?
それは……
「ギャオオオオオオオッ」
翼有鋭爪竜プテラプトル
戦闘力74000
(ふんっ!)
彼はワイバーン種の頂点に立つオスである。
(身の程を知れっ)
彼は
「ギャアアアアアアア!」
そして、二体の竜種が交差する瞬間、
ヒュンッ
一陣の風が流れた。
ポロっ
そして、二体の首のない竜は地上に落下していった。
「ぐるるるっ」
その場で生きているのはたった一体。
そう、彼こそがこのサードルを支配する魔王。
三つ目の
「アオ――――ンッ!!」
サードル。
広大な草原が広がり、ただの一本の木すら生えておらず、山すらない……
故に作物が非常に育ちにくく、隠れる場所すらないため、この広大な大陸では、異種の獣を見た瞬間、見敵必殺が常識である。
常に強獣たちによる死闘が繰り広げられる大陸を、今日も
グラトルが居た大陸を見つめながら……
傲慢の魔王スぺラド
戦闘力384500
――――――――――――――――――――――――――――
肥沃な大地で飢饉の無い大陸・ファーブルで、今日も己を着飾る
「グフフフフっ」
黄金に輝く王冠に、刺繍の入ったマントを着て、大陸中央にある神樹ユグドラの枝の上で、今日も己のために働く民を見る。
民の中には、人類も魔物も入り混じって、作物の収穫等の営みが行われている。
がっ……
彼らが口に出来るのはその一部のみ……
そう、全ての収穫物は、強欲の魔王、邪霊長グリドラが手にし、民たちには最低限生きていけるだけの物を配布している。
「グフフフフっ」
グリドラは笑う。
これこそ強者の特権!
弱者のモノは
「グリドラ!
今日こそお前を討つ!!」
「グフ?」
神樹の根元には、人類含め、数多の魔物の姿もある。
そう、グリドラのこの行動に耐えきれず、彼らはとうとう決起したのである。
「貴様のようなサルにいいようにされて、もう我慢できねぇ!
いつも食っちゃ寝でそんなぶくぶく太った身体じゃあ、ロクに動くこともできねぇだろう?!」
ビキッ
彼は……己に刃向かう者の存在を許せない。
己こそが頂点!
この愚か者たちに、身の程を知らせようと、その5mを超える巨体が、神樹から飛び降りる。
「お前ら行くぞ!!」
『おおおおおおおおっ』
『ゴオオオオオッ!!』
彼らは気炎を吐き、落ちてくるグリドラを迎え撃つべく構える。
だが……
「え?……」
大陸が割れそうになるほどの衝撃と共に、全長2000mの亀裂の中……いや、既に彼らはこの世から居なくなってしまったのだろう……
ガシャンガシャン……
そこには、漆黒の鎧に身を包んだグリドラの姿が……
「デュフフフひっ!」
邪霊長グリドラ、100の
「デュヒヒヒヒっ!!
キィーヒヒヒヒヒッ!!」
強欲の魔王グリドラ
戦闘力519000
―――――――――――――――――――――――――
「あああああっ、離せぇ!!?」
その盗賊たちはだたただ不幸だった……街道沿いの森に身を潜め、獲物が来るのを待っていた時に、あろうことか魔王が現れたのだから……
グラトルと並ぶほどの巨体を持つ邪神鳥アケトロが……
アケトロは、その場にいた13人の盗賊たちをその手に掴み、己の住処に持ち帰る。
「……」
彼らは天空に存在する幻の大陸・セーベルに連れてこられた。
だが、不幸にも……いや、幸運にも二人は極低温の空気にさらされて、既に凍死している。
「クワアアアアアッ!!」
「ひぃ!」
生き残った盗賊たちは、セーベルの中央にある大穴に投げ入れられる。
この穴は、セーベル全土に広がる地下迷宮の入り口の一つだ。
「クワッ……」
そして、アケトロは住処に戻り、そこにある直径5mの大水晶に映る映像を楽しんでいる。
そこはまさに地獄、何種類もの魔物に、何百人もの人類が、殺し殺され、その屍を貪られるという凄惨なところだ。
「ひいいいいっ!!?」
「もう悪いことはしないから許してくれぇ!!」
「助けてぇ!!」
そんな場所に、
彼らの運命はもう……
「ぎゃああああああっ!!」
「痛いっ、痛いよぉ?!」
「あひゃひゃひゃひゃっ」
「くわああああっ」
アケトロは今日も、世界中の大陸から玩具を見繕って穴に投げ入れる。
そして、それをただただ眺めるのだ……
怠惰の魔王アケトロ
戦闘力421000
―――――――――――――――――――――――――
ここは魔物の一切いない大陸・フォトン……その大陸に建つ城の中庭で、一人の女性がティータイムを楽しんでいた。
その可憐な女性は、ピンクシルバーの長髪を、大きな一つのシニョンにし、白いブラウスにロングスカートとベージュのストッキングを履いている。
その姿はまさに姫……高貴な者が持つ雰囲気を身にまとった……これでもれっきとした魔王である。
最強の魔王の一人である。
そんな彼女の元に、
「イラちゃああああん!!」
一人の少女が飛び込んできた。
「ヴィス、貴女も淑女ならば、もう少しお淑やかになさい」
「うえええええっん!
グラちゃんが……グラちゃんがあああああぁぁっ!!?」
人間でいうと、10歳くらいの子供の背丈に、金のゆるふわのウェーブのかかった髪。
水色のワンピースに、白いニーソに足首までかわいらしい青いブーツを履いている。
そして一番の特徴は、その背から生えるについの虹色の羽であろう。
虹色に輝く蝶の羽が、日の光に当たってキラキラと輝く……
この一見無害そうな少女は、昆虫を統べる女王、嫉妬の魔王、邪虹蝶インヴィスだ。
こんなに泣いているヴィスを見るのは久しぶりだ。
これはすぐには泣き止まないと、彼女は諦め、もう一人の女性に目を向ける。
「ラス?
一体何があったのですか?」
その場にいたもう一人は、まさに貴婦人と言った様相の女性であった。
アルテの年齢を30(億)手前にし、グラマラスな体つきにして色気を足したような……言ってみれば、アルテの成長した姿そのものと言った女性だ。
だが、彼女が身に着ける衣服は、ドレス、長手袋、黒いストッキング、果てはハイヒールに日傘なども全て植物でできている。
彼女こそが、色とりどりの花が咲き乱れるセカンスを統べる色欲の魔王、邪妖精ラストラである。
「グラトル君の反応がなくなったの。
それでヴィスちゃんが取り乱しちゃったのよ」
「そうですか……グラトルとヴィスはそんなに仲が良かったのですね……」
イラベルは、インヴィスを悲しそうな顔で見つめ、胸に抱いて頭を撫でる。
「いいえ?
ほとんど面識はなかったと思うわぁ?」
イラベルはズッコケた。
「面識が無かったのですか……」
「あんまり会ったことはないけど、弟なのぉ~あああああああああああっ」
インヴィスはさらに泣いてしまった。
困った顔で彼女を見るイラベルとラストラ……
そう、魔王とは元々アルテが、アルテノンを発展させるために産んだ……いわば原初の精霊というわけなのである。
「グラトルは一体何故滅んだのですか?」
イラベルはラストラの能力を知っている。
彼女ならばその一部始終を知っていると確信したからこそ、問いかけた。
「この男の子が倒したみたいね」
そう言って、彼女は水晶を取り出す。
この水晶は、アケトロが持っていたものと同様のモノで、名を
この世界の龍脈と呼ばれる生命エネルギーを利用して、過去現在の映像を見ることが出来る宝玉である。
「彼がですか?」
イラベルは、その水晶に映った渉を眺める。
確かに強いが、グラトルには及ばないと思う……
「ええ、それでこの後……」
渉がア○○ゴブリンと契約し、グラトルを迎え撃つ場面になった。
「っ!!!!???」
イラベルの顔が強張る。
そして……
『アッ、
そう叫ぶと、彼の指先からグラトルのレーザー以上に大きい光が放たれ、グラトルに迫る。
『グラッ?!』
『グラアアアアアッ……アッ……ァ……』
……………
「というわけなの……っ?!」
「ひくっ……うぇっ?!」
映像を見終わったとたん、イラベルから凄まじい怒気が吹き荒れる。
ラストラと、泣き続けていたインヴィスが思わず身構えるほどの激しさだ。
「はっ?!
……申し訳ありません」
すぐに正気を取り戻し、イラベルは怒気を抑える。
「ぐすっ……イラちゃんもグラちゃんの仇を取りたいの?」
「いえ、そういうわけでは……でも、この男はこのままにはしておけません。
剣の錆にしてしまわねば……」
「イラちゃん……魔法なら一発じゃない?」
「……魔法は今は使えないのです」
「イラベルちゃんはどうして魔法を使わないのかしら?
魔法を使ったら、魔王の中でも最強なのに?
それに何故こんなに彼に敵意を持つの?」
フルフル
イラベルは顔を横に振る。
「……命にかかわることですので……ただ、私の剣技だけでも十分にこの男は打倒できます。
早速向かうことにします。
そして、事情は言えませんが、この男はすぐにでも葬るべきです」
イラベルは立ち上がる。
そして、渉を睨むその眼には、明らかな敵意が浮かんでいた。
「私も行こうかしら?」
「ワタシも!
グラちゃんの仇を取るんだからね!!」
こうして、3人の新たな
色欲の魔王ラストラ
戦闘力237000
嫉妬の魔王インヴィス
戦闘力210000
憤怒の魔王イラベル
戦闘力320000
(魔法使用時、596700)
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