第3話 世界とボッチは混ぜるな危険

か、勘違いしないでよね?!

下ネタじゃないんだから!!


次話は未定です。



――――――――――――――――――――――――――――









 浴室で感情の赴くままに嘆いた時に、あふれ出た魔力の余波で、別世界へと繋がってしまったようです。

 そして、初めて殿方に裸を見られました……




 あと1回しかない世界救済のチャンス……幾億回も繰り返し、私ではどうしようもないという結論に辿り着き、私が生み出した愛する子供達と共に死ぬことも考えました。


 でも、そんな時に救えなかった私ではなく、今までになかった半藤渉イレギュラーな存在がその場に居ました。


 浴室から出ると、この地球という世界の知識が流れ込み、そのなかには驚くことに、多くの書物で数千、数万の魔王を打ち滅ぼす物語が世間に浸透しており、わたるさんも、その様々な知識を保有しているようでした。


 これで最後……祈るような気持ちで、今までにない手段……異世界人を頼ることにしました。


 彼からは何も力を感じません。

 この地球では魔力というモノが無いようです。


 でも、アルテノンには無い情報収集手段があり、その知識を持つ者ならば、もしかすると私の代わりに世界を救えるかもしれない……目の前には、何の縁か、その知識を保有する方が居ました。


 私は、お願いしました。

 運命というモノがあれば、神である私すら予想出来なかった出会いに、一縷の望みをかけ、渉さんはその手を取ってくださいました。


 彼は、見ず知らずの私の為に、かける必要のない命を懸けて、救いの手を差し伸べてくださいました。


 ならば私は、可能な限り彼に加護を授けます。


 アルテノンに居る子供達では、私の世界の存在故、与えられる加護はどうしても小さくなってしまいます。

 彼らの肉体では、私の力が強大すぎて耐えられないのです。


 ですが、私の者ではない世界の存在である渉さんならば……何だかんだと言っても、苦痛を伴う加護を、無事受け取って頂き、アルテノンを救うと言っていただけました。


 そんな慈悲深いあの方の苦痛を和らげたくて、私も彼と同調して、苦痛を受け持ちました。


 その苦痛を受け、私は泣きたくなりました。


 渉さんは、これほど凄絶な苦痛を感じていたのに、私に対して一片の恨みも抱かずに、私をいたわって世界を救ってみせると微笑んで下さいました。


「渉さん……」


 情けない……受け持った苦痛だけで、私の体力は消耗しつくし、意識が遠くなっていきます。


「渉さん……渉さん……」


 あれほど慈悲深い彼に……どうか幸有らんことを……

















「いってぇぇぇぇぇ!!!!??」


 全身が切り刻まれたような激痛に、胃に灼熱の鉛を押し込まれたような息苦しさ……たった2秒で心折れそうな苦痛を、何とか1分間我慢できた。


 だがこれは、苦痛度合いで言うとほとんど、アルテが肩代わりしてくれたおかげだ。


 最初は1秒で数回気絶と覚醒を繰り返した。

 アルテが居なければ、絶対に加護を受け取ることは出来なかっただろう。

 と言うか、間違いなくショック死している。


 女の子の前でカッコつけたかったという男の意地もあったし、何より想像を絶する苦痛の中、涙を流しながらもただただ俺を見つめて案じ続けてくれた。


 いくら俺が現実の女性に興味が無いといっても、そんな姿を見せられたら弱音を吐くことは出来ない。


 


 その結果、この地獄の時間を乗り越えることが出来た。


 この世界の人々が、大きな加護を身に宿すことが出来ない理由を、身を持って体験することが出来た。

 あれは無理だ!


「まさか本当に異世界に来るとはな……この世界のいろいろな知識をアルテがくれたから、ひとまず自分の能力を試してみよう」


 自己分析は非常に重要だ。


 アルテに貰った能力を一つづつ試していく。


 この辺りは魔物が出ないらしいから、ゆっくりと調べていこう……



 頭の中にこのような文章が浮かぶ


『精霊魔法を行使します……精霊と契約していないため、使えません』

 

 使えないの?!


 使い方が分からないかな?


『精霊と契約してください。

 上手く契約できれば、貴方の戦闘力に、精霊の戦闘力が上乗せされます』


 ご丁寧な説明ありがとう。

 ところでなんか会話が成立しているっぽいけど、君は誰?


世界アルテノンです。

 よろしくお願いします勇者様』


 ……とうとう俺、世界の声を聴ける系勇者になったようです。

 勘弁してください。

 29になって勇者なんて、元中二病患者にとっては、ショック死する可能性があります。


『私は17,9999,9999才です。

 つまり聖母神アルテは1歳で私を産みました。

 ちなみに私も母も処女です』


「何故唐突にデリケートなプロフィールを晒した?!」


 そうか……アルテって、処女なのか……18億歳で処女って、なんか痛々しいな……


 因みに世界お前は処女で当然だろう。

 なんせ星だし……


『生まれてから隕石男達は一度たりとも私に衝突インサートして「隕石落下の事ですね。 分かります」


『……私の初体験を邪魔する母に悪意すら感じます。

 後、話を遮る渉さんにも……』


 あのアルテが隕石落下なんて災害を放置するわけないし、何より世界!

 隕石落下をそんな表現する奴なんて初めて見たよ!!


 良くあの親からこんな世界むすめ?が生まれたな。


『人化すれば、あの人と瓜二つの美少女になりますよ?』


「マジで?!

 見たい!!」


 美少女が隣にいるってだけで、なんかワクワクするぜ!

 ただし手は出さないよ?

 俺って紳士だし?


『本当に良いのですか?

 貴方より頭一つ分小さな美少女ですよ?

 この星に住む生物達は、皆宇宙空間に放り出されることになりますよ?』


「ずっと変わらない君でいて欲しい」


『私達……大分打ち解けましたね……会話したのが初めてだったけど、初めて友達が出来ました』


 思いっクソ距離感の取り方下手だったけどな!?

 しかもさらっと友達認定してるし!?

 初対面でいきなり隕石落下猥談みたいな隕石落下の話をされて、こっちはドン引きだよ!


 というか初めての会話でテンション上がってただけなんだね?

 18億歳のマジモンのボッチってこんな弊害がああああああああっ??!


 唐突に頭上から雷が落ちた。


『17,9999,9999歳です。

 女性の年を勝手に増やすなんて許し難き行為です』


 ダメだ……混沌としすぎて、この場を収められない……一旦気絶仕切り直ししよう……がくっ……













半藤渉ばんどう わたる


 戦闘力150000


武術

・剣士の心得

・拳闘の心得

・体術の心得

・槍術の心得


魔術

・生活魔法

・料理魔法

・拠点魔法

・転移魔法

・収納魔法

・回復魔法

・精霊魔法


アビリティー

・全異常状態耐性

・魔力超増強

・回復力超増強

・体力超増強



『いきなり人類最強ですね渉さん。

 貴方は何時から人間をやめたのですか?』


「失礼な!?

 アルテが盛りに盛ったんだよ!!」


 いきなりアルテノンから人外宣言を受けてさらっとディスられた。


『わ、私の事はテノンって呼んでいいんだからね?!』


 いきなり話の流れをぶった切って、訳分らんことを言ってきた……

 要約すると、あだ名で呼んで欲しいってことだな。


 テノンこいつって本当にコミュ障拗らせてるな……会話の内容が唐突過ぎる……


『こ、これで私たちってマブダチですね?

 えへっ♪』


 面倒臭えええええっ!!


 ふーっ、ふーっ……落ち着け俺……セールスマンだろ?

 変人と話す事なんて何度もあったじゃないか……


「ゴホンッ!

 ところでこの武術と魔術についてある【】って何なの?」


『恐らく一度も使っていないため、ロックが掛かっているのでしょう。

 一度でも使えば【】が外れて、きちんと使えるはずです』


 そう言うことらしい。

 


 そして、これからやるべきこと……魔王討伐軍に助力し、英雄ブライという男を救うこと。

 

 彼が意識不明の時に、妹さんがチンピラの手によって悲惨な最期を遂げることで、人類の滅亡が始まるようだ。


 この世界の日付や一般常識は、日本と同じように翻訳、認識されるようになっているらしい。


 今日は2月14日……平日だ……バレンタイン?

 何それ美味しいの?


 テノンによるとこのまま真っ直ぐあちらに行けばいいらしい。

 

 北に行けとか言われても、現代人なので、太陽の位置で方角を知るなんてことは無理です。


 テノンとのつながりが強くなったのか、アルテをジト目な感じにした美少女が、ドヤ顔でこちらを見ているイメージを強制的に受け取らされる。


 ……やはり貧乳だ。

 アルテは気品とその雰囲気で、むしろ犯し難い神聖な空気を纏っていたが、テノンは貧乳だ。

 ただ貧乳だ……


ピカッ


「ぎゃあああああああっすっ??!!」


『天罰執行……』


「いきなり落雷をくらわせるのは止めろ!!」


『きちんと威力は落としています』


「そう言う問題じゃないよね?」


『渉さん……』


「何だよ……」


 急に真面目な雰囲気になる。


『母は……娘の私を救うために、その身を削っています。

 十数億年という永い……とても永い時間を、心を痛めて、涙を流し続けています……

 母は……もう何億年も、穏やかな時間を過ごせていないのです……

 私以上に、母の心はもう限界です……だから、渉さん……どうか、あの優しいお母さんを助けてください』



「……」


 その言葉は、ただただ母の身を案じていることを感じさせた。


 世界むすめを守りたい母と、母を守りたい世界むすめ……はぁ、他人のために頑張るのなんて、俺のガラじゃないんだけどな……


「やるだけやってみるよ」


『お願いします。

 渉さん……』




 戦場までは数千キロ……凡そ三か月後に戦端が開かれ、1日も経たずに討伐軍は壊滅する。


 それまでに、実戦経験を積みながら、与えられた加護を使いこなし、ブライという男を救うことが第一の目標だ。


「さて、行くか!」


 こうして現代日本ではあり得ないような旅に出ることになった。





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