紅い目の鳥
悪魔と王子が出逢ってからおよそ三月もの時間が流れていた。
王子が鳥を愛でていることは、城にいる家臣たちのあいだで浸透していた。
その反応はあまり良くない。
王子が鳥と親しげに話しているところを見た、と何人もの女中が証言した。
彼女たちには、悪魔の声はただの鳥の
故にその様は異様に、不気味に、恐ろしくさえ映ったのだ。
王子の頭が狂ったのではないかとさえ考えた。
加えてその鳥の瞳は王子と同じ深紅だった。
この国の鳥は全て白く、瞳は
赤いものは誰も見たことがなかった。
王子と同じ深紅の双眼。
災いを彷彿とさせるその色に、人々は知らずの内に不安と嫌悪感を募らせた。
また、その白い鳥は必ずしも王子の傍でじっとしていたわけではない。
ふと見遣った先の、窓の外にある木の枝に止まっていた。
中庭の噴水の縁や、高い梁の上に留まっていることもあった。
城の至るところで遭遇して。
その様はまるで意図的にこちらを伺っているようだった。
家臣たちは白い鳥の姿を見るたびに眉を潜めた。
王は家臣たちの訴えを、初めは笑い飛ばしていた。
王妃は相変わらず無関心で、双子の姫たちは興味津々だった。
しかし次第に王妃や双子の姫たちすらも鳥のことを言及し始めた。
そこで王は立場上、対策を取ることにした。
王個人としては王子から鳥を奪いたくはなかった。
そこで彼は王子に金色をした鳥籠を与えた。
籠に入れておけば自由に飛び回らないので、家臣たちも納得するだろう。
これならば可愛い王子から鳥を奪わずに済む。
王の算段は的を射ており、これ以降は誰も文句を言わなくなった。
それでも女中や兵士たちは鳥の姿を城の至るところで目撃した。
籠の鳥がどうして?
自由を奪われた鳥を哀れんで、王子がたまに外へ出してやるのだろうか?
だが、王子は常に鳥籠を持ち歩き、その際にはちゃんとその中に鳥がいた。
お陰で女中も兵士もこれ以上は王に訴えることはできなかった。
次第に王子の鳥に関して表立って言及する者もいなくなった。
真相と言えば、鳥の姿をした悪魔は頻繁に鳥籠の外へ出ていた。
籠の中にはまやかしの姿を残し、気ままに偵察を続けていたのだ。
王子はその事実を知らない。
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