秘密がバレる時

「はぁああ~」





長く重いため息を、今日何回ついただろう?





…あの夜からまた数日が経った。





もうすぐ翠麻の言った1ヵ月になる。





だけど…翠麻からも正義くんからも、何の連絡がない。





これは…もしかして、マズイのではないかと考えた。





それにちょっと美夜に探りを入れてみた。





どうやら美夜は今、内部が少し荒れているみたいだ。





美夜の高等部は、4人のまとめ役がいる。





その4人はとても強く、他の生徒達は4人の誰かしらの傘下に入っていると言っても過言じゃない。





4人は強さはもちろんのこと、人をまとめる力があるから、自然と人は集まるんだろう。





今年は1年生が2人もまとめ役がいるらしい。





2人とも小等部の頃より才覚を出していて、かなりの古株で有名。





一人は男の子で、一人は女の子。





ちなみに女子生徒達のほとんどが、その女の子の下にいるらしい。





そして2年生と3年生に一人ずつ。この2人は男子生徒だ。





4人は風水で守り神に例えられてる、四獣神の名前で呼ばれている。





青竜・白虎・朱雀・玄武―と。





そして4人を束ねるのが、未だ姿を見せない―黄龍。





すでに美夜では都市伝説になっているらしい。





美夜が作られたのは今をさかのぼる事、17年前。





その時から、美夜の学校には黄龍という存在があるらしい。





美夜の生徒は全員、黄龍に付き従うことが条件になっている。





だけど誰もその存在を目にしたことはなく、今では都市伝説のように語り継がれるらしい。


「タイヘンだとこと…」





それと正義くんが関係しているとは思えないけど…。





わたしはケータイを取り出したけど、誰からも連絡は入っていない。





…本当は気乗りしなかったケド、翠麻に連絡をしてみることにした。





連絡が途切れて何日も経つ上、約束の期日はもうすぐだ。





「―月花さん?」





「翠麻くん! もうすぐ1ヵ月経つのに、そっちはどうなの? 何で連絡してくれないの?」





「すみません。ちょっとゴタついているもので…」





「正義くんは大丈夫なの?」





「それは保障します。彼には傷一つ付いていません」





絶対的な自信のある言葉に、ほっと胸を撫で下ろす。


「もしかして、延長戦に入る?」





「…かもしれません」





その言葉に、目の前が一瞬真っ暗になった。





「…ねぇ、どんなことでもめているのか、内容だけでも教えてくれないかしら?」





「でっですが…」





「だってこれ以上は耐えられない! …正義くんとのルールを破る事だって分かってる。でもっ!」





「そうそう。ルールは破る為にあるんだぜ?」





―背後からの声に、わたしは驚いて振り返った。





美夜の制服を着た男達が7・8人いた。





ウカツだった!





電話で気を取られてた!





「…どちら様ですか?」


「どちら様、だってよ」





男達の間で、笑いが広まる。





「―月花さん? どうしました?」





答えるに答えられない…!





動けないでいるわたしに、先頭にいた男が近寄ってきて、わたしのケータイを奪った。





「翠麻か?」





「っ! 白雨しろうか!」





「ヤツに伝えとけ。大事な彼女は預かった。返して欲しけりゃ手下連れて、学校の倉庫に来いってな」





「待てっ! その人に何かしたら…!」





「しねーよ。けど早く来なきゃ、どーなるだろうな」





ピッ。





…電話は切られた。





近くで話をしていたから、内容は全て聞こえていた。





「…わたしを美夜に連れて行く気?」





「そっ。大丈夫だって。俺は紳士だからな。大人しくしてりゃ、何にもしないって」





「…その外見で紳士って言われても、ね」





肩まで伸びた髪を、赤紫色に染めている。





体付きも良い。この間会った美夜の3年生と、良い勝負だろう。





それにこの殺気!





ただものではない。





「ところでアナタは何なの? どうしてわたしを連れて行こうとするの?」





「そりゃあ…」





楽しそうに笑って話そうとしたけれど、白雨はふと口を噤んだ。





「学校の倉庫内で話してやるよ。そこが俺の本拠地だからな」





…そしてわたしは美夜の男達に囲まれながら、連れてかれた。





美夜の学校に―。


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