デート終わり
その後、広場で話をして、デートはオシマイ。
駅近くに家があるので、彼にはそこまで送ってもらった。
そして家に帰ると―。
「おかえり~、ひな。お父さん、来てるわよ」
とても40近くには見えない若い女性こと、わたしのお母さんが出迎えてくれた。
「げっ。…何でよりにもよって、今日なのよ」
思わず顔が険しくなる。
せっかく良い気分で帰って来たのに…。
「今日は日曜日だからね。ひなのこと、ずっと待ってたわよ」
ヘタすれば20代に見えるお母さんは、ニコニコ笑顔。
「う~」
うなるけど、逃げられないのは分かっている。
しかめっつらのままリビングに行くと、…本当に父さんが来ていた。
「父さん、何の用よ?」
「おお! ひな、帰ったか!」
50近くの父さんは、輝いた笑顔で抱きついてきた。
「んもー父さん、さみしかったんだぞ?」
「お母さんと二人っきりで、どこがさみしいのよ!」
「そこに子供のお前がいなきゃ、さみしいじゃないか。家族と言えないだろ?」
「夫婦でガマンしなさいよ!」
結婚して20年目でもラブラブのクセに!
…まあ子供としては、嬉しいケド。わたしを可愛がってくれるし。
「…とりあえず、座りましょうよ。わたし、疲れてるの」
「おお、そうだな」
父さんは仕事が忙しく、ほとんど事務所で寝泊りしている。
家に帰ってくるのは一ヶ月に数日だけ。
…まあ呼び出されて、食事とか買い物したりしているケド。
「今日は泊まるの?」
「もちろんだ。大きな仕事を片付けたしな。それに…」
ふと父さんの表情にかげりが差す。
「ちょっと経営のことで、こっちに長期滞在するつもりなんだ。その間、生活はここで過ごすことにしたんだ」
「経営…? まさか実家の方で何か問題が?」
わたしも顔をしかめてしまう。
父さんは実家の事業を継いでいて、わたしも将来は次ぐ予定だ。
だから父さんの仕事に関しては、敏感になっている。
「まあ…その一つだな。少し長引きそうだ。何、心配はいらない。トラブルというワケではないからな」
「そう…」
そうは言うけど、父さんの顔色は優れない。
大きなことを成していると、その反動も大きいというワケか。
「ところで、ひな。そろそろ父さんの学校に転校しないか?」
「…そのことは前から言っているけど、やめとく。あくまでも外から勉強したいのよ。あんまり中に居過ぎると、ちょっと考え方が悪くなりそうだから」
「ふむ…。こっちとしては、ひなが安全な目の届く所にいてくれると嬉しいんだが…。まあそう言うなら、仕方無いか」
学校へ上がる時、実家の経営している学校へ通うかどうかで、かなりもめた。
けれどさっきも言った通り、実家の内部に居過ぎると考え方が偏る。
だからイヤがった。
「まっ、仕事の話はおいといて。家族の話をしようじゃないか」
「そうね」
父さんはここに安らぎを求めている。
家族としては、受け入れてあげるべきだろう。
それに口には出さないけど、久し振りに家族全員がそろって嬉しい。
…両親の親族は、二人の結婚に元々反対だった。
わたしが生まれて、やっと落ち着いたところだ。
商売敵というべき相手の者との結婚。
二人とも勇気があった…と言うよりは、そこまで深く愛し合ったのだろう。
そのことを、わたしは誇りに思いながらも、憧れ続けていた。
―強い愛に。
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