4

暖かな午後の陽差しと柔らかな風、そして満腹のせいで彼の眼が次第に閉じていった。


やがて寝息まで聞こえてくる。


わたしは笑顔で彼の寝顔を見つめた。


…可愛いな、やっぱり。


男の子とまともに付き合ったのは、コレがはじめて。


彼のことは、まだお母さんにしか言っていない。


父さんは…いろいろな意味で危険だから、しばらくは黙っていよう。


服やお弁当の中身のことは、今日までうんと悩んだ。


けれど楽しかった。


彼の喜んでくれる顔を思い浮かべるだけで、わたしも嬉しくなる。


自覚し始めている。


…彼を好きになっていることを。


けれどわたしの抱えている秘密を知れば、彼はきっと去ってしまう。


そのことを考えれば…あまり深入りしない方が良い。


傷付く事を覚悟で告白を受け入れたけど、まさかこんなに気持ちが溢れるなんて…。


「…完璧に予想外」


ふと呟き、ため息一つ。


だけど今だけは、彼の穏やかな寝顔を見ていられる。


そう…今だけは。


「んっ…んんっ!?」


ふと彼が目を開けた。


そしてわたしの顔を見て、ぎょっとした。


「ひなさん!? アレ? オレ、寝ちゃってた?」


慌てて飛び起きて、辺りをキョロキョロ。


「どれぐらい寝てた? 結構時間経ってるよね?」


「そんなことないわよ。1時間ぐらいかしら?」


ケータイを開くと、1時間を少し過ぎていた。


「うわっ…。サイアク」


彼は頭を抱えた。


「初デートで居眠りなんて…」


「お昼寝でしょ? 昨夜寝てないなら、しょーがないわよ」


頭を撫でてあげると、少し顔を上げた。


「ゴメン、ほっといて…」


「良いのよ。わたしはわたしで正義くんの寝顔、見れたし」


「うっ…」


「可愛かったわよ? 写メ撮っちゃった」


「ええっ!?」


「ホラ」


わたしはケータイを見せた。


「うわっ! ホントに!?」


「気に入ったから、待ち受けにしちゃおーっと」


「ひっヒドイよ、ひなさん~」


慌てる彼が可愛過ぎて、思わず笑ってしまう。


「じゃあわたしのことも、写メ撮って良いわよ」


「えっ! ホント?」


「うん、お互い様ってことでね」


「じっじゃあ」


彼はケータイを取り出し、わたしに向けた。


だからわたしは、最高級の笑顔を向けた。


その笑顔に、心からの気持ちを込めて―。


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