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暖かな午後の陽差しと柔らかな風、そして満腹のせいで彼の眼が次第に閉じていった。
やがて寝息まで聞こえてくる。
わたしは笑顔で彼の寝顔を見つめた。
…可愛いな、やっぱり。
男の子とまともに付き合ったのは、コレがはじめて。
彼のことは、まだお母さんにしか言っていない。
父さんは…いろいろな意味で危険だから、しばらくは黙っていよう。
服やお弁当の中身のことは、今日までうんと悩んだ。
けれど楽しかった。
彼の喜んでくれる顔を思い浮かべるだけで、わたしも嬉しくなる。
自覚し始めている。
…彼を好きになっていることを。
けれどわたしの抱えている秘密を知れば、彼はきっと去ってしまう。
そのことを考えれば…あまり深入りしない方が良い。
傷付く事を覚悟で告白を受け入れたけど、まさかこんなに気持ちが溢れるなんて…。
「…完璧に予想外」
ふと呟き、ため息一つ。
だけど今だけは、彼の穏やかな寝顔を見ていられる。
そう…今だけは。
「んっ…んんっ!?」
ふと彼が目を開けた。
そしてわたしの顔を見て、ぎょっとした。
「ひなさん!? アレ? オレ、寝ちゃってた?」
慌てて飛び起きて、辺りをキョロキョロ。
「どれぐらい寝てた? 結構時間経ってるよね?」
「そんなことないわよ。1時間ぐらいかしら?」
ケータイを開くと、1時間を少し過ぎていた。
「うわっ…。サイアク」
彼は頭を抱えた。
「初デートで居眠りなんて…」
「お昼寝でしょ? 昨夜寝てないなら、しょーがないわよ」
頭を撫でてあげると、少し顔を上げた。
「ゴメン、ほっといて…」
「良いのよ。わたしはわたしで正義くんの寝顔、見れたし」
「うっ…」
「可愛かったわよ? 写メ撮っちゃった」
「ええっ!?」
「ホラ」
わたしはケータイを見せた。
「うわっ! ホントに!?」
「気に入ったから、待ち受けにしちゃおーっと」
「ひっヒドイよ、ひなさん~」
慌てる彼が可愛過ぎて、思わず笑ってしまう。
「じゃあわたしのことも、写メ撮って良いわよ」
「えっ! ホント?」
「うん、お互い様ってことでね」
「じっじゃあ」
彼はケータイを取り出し、わたしに向けた。
だからわたしは、最高級の笑顔を向けた。
その笑顔に、心からの気持ちを込めて―。
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