3

「はい、おしぼり」


「ありがと!」


わたしと彼は手を拭いた。


「それじゃ、いっただきまーす!」


「はい、どうぞ」


彼はじっとお弁当を見て、まずはおむすびの一つを手に取った。


簡単な塩結び、中身は彼が好きだと言うおかかとシャケ。


一口食べて、彼の顔がゆるむ。


「美味しい…!」


「ふふっ、ありがとう」


まっ、お腹空いている時って、何でも美味しく感じるし。


わたしもおむすびを手に取って、一口。


中身はおかかだ。


「うん、美味しいね」


その後は二人してニコニコと笑顔で食べ続けた。


会話は少なかったけど、そんなに気にならなかった。


ただ穏やかな空気がとても心地良くて…気付けば重箱の中身は空になっていた。


「あ~美味かった。ひなさん、料理上手だね」


「それはどうも。お母さんにも伝えておくわ」


わたしは重箱を片付け、一息ついた。


ふと彼が眠そうに目をこすっているのを見た。


「もしかして…寝不足?」


「うっうん…。久し振りにひなさんに会えると思ったら、寝付けなくて…」


…可愛い人。


「じゃあ少し休んだら? わたしもちょっと休みたいし」


「いいの?」


「もちろん。午前中はわたしが振り回しちゃったようなものだし」


彼の手を引いて、あちこちと回った。


もしかしたら気疲れさせてしまったのかもしれない。


「そっそんなことないよ! オレ、すっごく楽しかったし! 水族館なんて久し振りだったし」


あたふたと手と首を振る彼が、やっぱり可愛く見える。


「ねっ、じゃあこうしましょ?」


「えっ?」


わたしは足を組みなおして、膝をぽんぽんと叩いた。


「膝枕させて。それで気にしないことにするから」


「ええっ!?」


わたしの突然の申し出に、彼は眼を丸くした。


「ひっ膝枕って…」


「気にすることないわよ。周りの人でも結構やっている人いるから」


彼はわたしの指さした方向を見た。


小さな子供を膝枕するお母さん、わたし達のようなカップルの膝枕。


わりとありがちな光景になっている。


「なので、さっ、どうぞ」


おいで、と両腕を伸ばす。


「うっ…。よっよろしくお願いします…」


消え入りそうな声で言って、彼はゆっくりわたしの方に倒れてきた。


彼の頭を抱えて、ゆっくりと膝に乗せる。


「どう? 膝心地は?」


「きっ気持ち良いです」


顔が真っ赤になっている。


頭を撫でてあげると、さらに真っ赤。

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