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―数十分後。


「はっ!」


彼は現実に帰ってきた。


「おかえり」


わたしは苦笑した。


「ごっゴメン! ぼ~っとしてて…!」


「気にしないで。わたしもぼ~とあなたを見てたから」


「えっ…えぇ?」


真っ赤になる彼の手を、今度は引っ張った。


「もうすぐショーがはじまるの。アシカとかイルカとか芸達者なのよ。見に行きましょ?」


「うっうん」


ショーを見た後、売店でおみやげを買った。


二人とも、お揃いのイルカのケータイストラップ。


水色ガラスのイルカに、青と水色のビーズがキレイで可愛いんだけど…。


「良いの? 可愛過ぎない? お友達に何か言われるんじゃ…」


「良いよ、言われても」


そう言って、彼は穏やかな表情でケータイにストラップを付ける。


「言われたら、ちゃんと言い返す。『彼女とお揃いなんだ』って」


少し頬を染めながら言ってくれた彼を見て、胸があったかくなるのを感じた。


コレは…ヤバイ。


本気になりそう…。


お昼になって、わたし達は移動した。


水族館のあるビルのすぐ裏手が遊園地。


広い広場があり、こっちも大人気のスポットだ。


わたし達はお昼を食べる為に、広場に移動した。


「リクエスト通り、和食にしたの。口に合うと良いんだけど」


「ひなさんの手作りなら、何でも美味いよ!」


彼は食べる前から強気で言う。


…正直、プレッシャーを感じてしまう。


料理は一通りできるけど、凝ったものはあまり作らない。


簡単なものばかり作り慣れてしまってて、昨夜は結構苦戦した。


「実はお母さんに手伝ってもらいながら作ったの。だから味は…大丈夫だと思うけど」


バッグから重箱を取り出した。


重箱は、お母さんが出してきた。


高校一年なら、食べ盛りだからって…。


…でも流石に、三段はないと思う。


「わあ、スゴイ! 重箱だ」


やっぱり驚かれたし! …てーか引かれないだけ、まだマシかな?


「ひなさん、随分食べるんだね」


「えっ…」


…やっぱり本当のことを言おう。


「コレもお母さんの入り知恵って言うか…。まっまあ食べてみて!」


もうゴチャゴチャ言うよりも、食べさせた方が良い。


そう思って、わたしは重箱を開けた。


一段目はデザート、二段目はおかず、三段目はおむすびになっている。

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